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第1857話:実話の方がずっと面白い

「ウルピウス殿下と初めて会ったのは、上皇妃様の呪殺未遂事件の時だったんだ」

「それじゃ! カレンシーの呪殺未遂の噂は聞いておる。本当のことなのかの?」


 あれ、ウルピウス殿下のことを話そうと思ったら、いきなりヴィクトリアさんが口出して話が曲がったぞ?

 皆さんは呪殺未遂事件も聞きたいのか。

 ルーネが言う。


「新聞では事実のように書かれてましたが……」

「事実だよ」

「事実だぬよ?」

「しかし皇宮では近衛兵達も何事もなかったような顔をしておった。本当にカレンシーが呪術の標的になるような事件があったのなら、大騒ぎになるはずではないか」

「……おかしいですよね?」

「キツネにつままれたようじゃ」

「皆さんラブロマンスよりミステリーの方が好みかな? どこかにミステリー書ける人いないか、探さないといけないね」

「そういうのはよいから話すのじゃ!」


 アハハと笑い合う。

 あたしは種明かしの前に溜めるのも好き。


「上皇妃様の呪殺未遂事件は本当にあったことだよ。新聞に載ったのは上辺だけなんだ。あたしが皇宮に来られるようになってすぐの時。今から四ヶ月くらい前のことになるかな」


 おお、皆食いついてくる。

 熱心に聞いてくれると気分がいいなあ。


「皇宮にお肉持って遊びに来たら、近衛兵の一人に皇妃様が倒れた、どうやら呪いのようだからすぐ来てくれって言われたんだ。で、急いでうちのヒーラーの子連れてきて呪いを解いたの」


 首をかしげるウルリヒさん。


「どうしてヒーラーで呪いが解けるんだ? 呪術の心得があるのか?」

「おお、さすがウルリヒさんだね。普通治癒魔法『キュア』は基本八状態異常にしか効果がないって言われてるけど、うちのクララの『キュア』は割と何にでも効くってのは経験的に知ってて。たまたま上皇妃様にかけられてた『舞踏の呪い』は、私も食らったことがあるやつだったんだ。その時クララの『キュア』で治ったから、上皇妃様にも効果があるだろうと思ったの。運が良かったね」

「ほう、ユーラシア君ほどの冒険者になると、様々な経験をしているものなのだなあ」

「呪いの実行犯の呪術師も、治癒魔法で反呪されるとはって驚いてたよ。上皇妃様の侍医さんもいかなる理由で治癒魔法が呪いに有効なのかって聞いてたから、精霊の使う白魔法は特別なんだと思う」


 精霊の白魔法使いは『精霊のヴェール』みたいな変わった魔法を覚えるしな。

 多分レベルの問題じゃなくて、クララの使う白魔法には何らかのプラスアルファ効果があるんだろう。


「その後ヴィルに呪いの負力がどこから来てるか辿ってもらって」

「すごく臭いんだぬ。一発でわかるぬ」

「呪ってる現場が新月の塔のてっぺんの部屋だった。飛行魔法で乗り込んで実行犯捕まえて。でも現場の見分からも残されたアイテムからも、黒幕に繋がるものは何もなかったの」

「相当用意周到に準備されていたんだな?」

「みたいだね。ついでに言うと、他人の考えてることがある程度わかるリモネスさんでも、手掛かりを得ることはできなかったんだ。遠隔で呪い殺せることが可能なら、証拠を残さないこともさほど難しくないなとは、あとで思ったけど」

「騒ぎにならなかったのは何故じゃ?」

「どうってことないよ、ってのを装ったから」

「どうして?」


 あたしがその実行犯の呪術師を欲しくなったからとは言いづらいな。


「事件の時点で、黒幕に繋がるものが何も出ないってのはわからなかったよ? でもこれ放っとくと実行犯が処刑されてお終いってことになりそうでしょ? 二の矢三の矢が飛んでくる可能性を考えると、上皇妃様の危険は去らない。呪術師を寝返らせたから呪い返せるぞ。嗅ぎ回ってきやがったら尻尾捕らえるぞっていう迎撃態勢を取ってることを知れば、黒幕は躊躇して何もできない」

「……なるほど、ユニークだ。説明されてみると、上皇妃殿下の安全を保つには最もいい方法だな。ユーラシア君のアイデアか?」

「まあ」


 感心されると背中がかゆい。

 呪術師を手に入れるための方便だったのに。

 ウルリヒさんが言う。


「上皇妃殿下呪殺未遂事件の経過は理解した。もう一つだけ聞きたい」

「何だろ?」

「実際問題として、呪われてるというのは自覚できるものなのか?」

「いや、わかんないな。普通は病気かと思うものなんだそーな。あたしが食らった時は身体がやたらと重くなって。でも頭もカンも働くから、何かの状態異常を疑って『キュア』かけてもらったんだ。あたしを呪った悪魔を捕まえた時に、初めてあれは呪いだったんだって知ったの」


 ここでバアルを披露する気はない。

 ウルリヒさんはバアルのしたことかって気付くだろうが。


「呪いの症状なんて滅多にお目にかかれるものじゃないじゃん? だって術者が多くないんだから。最終的に上皇妃様の症状は呪いだって判断した侍医さんは大したもんだと思う」

「興味深い話じゃったの」

「ラブロマンスはこれからだぞ? 事件の当日、ウルピウス殿下に初めて会ったんだけどさ。あたしの大活躍に魅せられたウ殿下が言うわけだ。予の妃にならんか、と」

「「「「きゃーっ!」」」」


 ジルケさんペトラさんビアンカちゃんルーネが大喜び。


「その場にリモネスさんもいたんだけど、相当面白い顔してたよ。多分ウ殿下が急な考えで口にしたことだから、リモネスさんも意表を突かれたんだと思う」

「じゃろうなあ。ユーラシアは何と答えたのじゃ?」

「もうちょっと経験積んでいい男になったら惚れちゃうかもなって」

「ユーラシアはウルピウスの妃となるのか?」

「ならないんじゃないかな。ウ殿下は次のゼムリヤ辺境侯爵が内定してるじゃん? あたしはドーラをいい国にしたいから、ドーラに来てくれる人がいいんだよね」


 頷く全員。

 ウルリヒさんが言う。


「婚姻に条件は大事だな」

「メッチャ重要だよね。ビアンカちゃんの元婚約者はわかってなかったみたいだけど」


 チラッとビアンカちゃんを見たら何か言いたそう。

 元婚約者に対して思うところがあるんだろうな。


「ユーラシアさんの実話の方がずっと面白いんじゃ、私のお話はダメです!」

「そっちかい」

「そっちだぬ!」


 アハハ。

 ビアンカちゃんも婚約破棄のことは吹っ切っているようだ。

 よかったよかった。

 いいお話を期待してるよ。

ビアンカちゃんはひ弱な子かと思えば、案外精神的に強い気がする。

とゆーか立直りが早いのかな?

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― 新着の感想 ―
与り知らないところでフられるウ殿下無惨・・・!! こうなったらドーラ大使を目指すしか
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