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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1832/2453

第1832話:ドラゴン禁止令

 ――――――――――二八四日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、精霊使い君、いらっしゃい」


 朝から皇帝宮殿にやって来た。

 今日はルーネのレベル上げの予定だ。

 いつものサボリ土魔法使い近衛兵が少しソワソワしているようだが?


「どうしたの? デートのお誘い? ごめんなさい」

「何でいきなり断られるんだよ! そうじゃなくてルーネロッテ様のことだが」

「あ、聞いた? ようやくお父ちゃん閣下の許可が出たから、ルーネのレベル上げするんだ。やっぱり許可取り消しなんて言われない内に、魔物退治行ってくる」

「ドミティウス様から、くれぐれも危ないことはさせるなとお達しがあったんだ」

「だろうね。わざわざ言ってくるところが過保護だなあ」


 予想通り。

 うちのパーティーのレベル上げは完成されてるから、危ないことはないとゆーのに。

 危なかったのは一番最初の犠牲者ラルフ君くらい。

 ラルフ君でもちょっと丸焼きになった程度だった。


「いや、実際に戦闘を行うのはうちのパーティーだよ。ルーネは見学してもらうだけ」

「凶悪な魔物なんだろう?」

「お客さん連れの時は凶悪な魔物と戦う気はないな。メニュー聞かせようか?」

「メニュー?」


 お客さんに味わっていただくメニューだよ。


「まず前菜としてライナー君かそれよりちょっと強いくらいの魔物を二、三体倒すじゃん?」

「ライナー様かなり強いんだが。武道大会剣術の部チャンピオンだぞ?」

「そーするとレベル一〇くらいにはなるから、メインディッシュである経験値の高い高級人形系魔物をいただきます」

「本当にコース料理みたいだな」


 安全性と実利とエンターテインメントを全部成立させようと思うと、順番があるんだよな。


「人形系の魔物って生息数少ないんだろう? 倒すのは困難だと習ったが」

「近衛兵は魔物についても習うんだな。あたしのホームグラウンドである魔境には、割と人形系魔物が多いんだ。特殊な武器なりスキルなりを持ってないと、人形系倒すのは難しいよ。近衛兵長さんみたいにレアな固有能力持ちだと、素の攻撃でダメージ入るけどね。人形系倒すのはドーラの冒険者の醍醐味だと、あたしは信じてる」


 おいしい魔物とおゼゼ。

 魔物退治の二大メリットだ。

 あ、経験値忘れてたわ。


「最後にドラゴンを倒します。デザートみたいなもん」

「ドラゴンって。デザートって」

「ドラゴンはさほど実入りのいい魔物ってわけじゃないから、あたしとしてはどうでもいいんだ。でも帝国の人は、いや、ドーラ人もだな。ドラゴンに憧れがあるみたいなんだよね。倒すとウケがいいというか満足度が高いというか、アトラクションとして喜んでもらえるから、締めにドラゴン倒すことが多いの」

「そんな理由でドラゴンを倒すことってある?」


 ここにあるわ。

 帝国の人は『輝かしき勇者の冒険』を読んでるせいか、ドラゴンに特別な感情があるような。

 ドーラ人はどうしてドラゴンが好きなんだろうな?

 あたしはドラゴン倒しても、『逆鱗』以外の喜びがよくわからんけれども。


「で、ルーネ大喜びの巻なのかな?」

「ああ。今日はかなり朝早くから詰め所にいらしていたと、夜番の連中が話していたよ」

「あんまりよろしくないな。冒険者には平常心が大事なんだよ」

「いつも楽しそうな君が言うのか」

「あたしはそれが平常運転だとゆーのに」

「ハハッ、違いないな」

「違いないぬ!」


 笑いながら近衛兵詰め所にとうちゃーく。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「ユーラシアさん!」


 飛びついてくるルーネとヴィル。

 よしよし、いい子達だね。

 今日はウルピウス殿下おるやん。


「お土産にお肉置いとくね」

「ユーラシア、ドミティウス兄上から連絡があるのだ」

「閣下も過保護だなー。ルーネを危険な目に遭わせるなってことでしょ?」

「ああ。具体的にはドラゴン禁止だそうだ」

「えっ?」


 ドラゴン禁止?

 ドラゴンと戦っちゃダメってこと?


「何でだろ? デザートありのコースの方が満足感が高いんだけど」

「ハハッ、ドラゴンはデザートか。ドミティウス兄上は危険だと考えているからだろう。ごく常識的に」

「ウ殿下うちのパーティーのドラゴン戦がどんなものか知ってるじゃん。閣下を説得してくれりゃいいのに」

「予も話したんだがな。納得いかないようで」

「納得いかせるにはどうしたらいいんだろ? 閣下にもいつかドラゴンを見せなきゃいかんのかな?」


 どうもお父ちゃん閣下は、魔物狩りが大変に危険なものだと考えてるふしがある。

 危険か危険じゃないかは、彼我のレベル差と現地に関する情報量によるんだけどなあ。

 ルーネが興味津々だ。


「ウルピウス叔父様は、ユーラシアさんがドラゴンを倒すところを見たんですか?」

「見た。鮮やかの極みであったな。しかし一振りだったから、呆気ないというか物足りないというか」

「贅沢だなー。戦闘引き延ばすと危ないんだってば。あたしは慎重がモットーなので、おゼゼが儲かるわけでもないのに危険を冒すのは趣味じゃない」

「ユーラシアはドラゴンに拘っていないのであろう?」

「まあ拘っちゃいないけど」

「では、ドラゴンを倒さずともよいではないか」


 それがな?


「ドラゴンって好戦的な魔物なんだよ。向かってきちゃうの。逃げようとして急襲されると却って危ないんだけど、シロートさんはドラゴンの性質を知らないからなー」

「ドラゴンの生息域を避けるのは?」

「一番簡単に経験値を稼げるデカダンスって魔物の生息域が、ドラゴンと丸々被ってるんだよね。今日はルーネのレベル上げが目的だから、どうしてもドラゴンの生息域に足を踏み入れざるを得ない」


 デカダンス抜きのパワーレベリングはさすがに考えられんしな。

 かといって自爆謎経験値君もいる北辺は、ドラゴンの生息域以上に危険だ。

 どーすべ?


 ルーネがおずおずと言う。


「私もドラゴンを見てみたいんですけど」

「皆が見たがるもんな。ま、ドラゴン禁止は努力目標だわ。避けきれないと危ないことあるし。安全の方をメインに据えよう」


 クララの装備している『逃げ足サンダル』には逃走用の魔法『煙玉』が付属している。

 逃げようと思えば逃げられるしな。


「よし、行こうか。殿下またね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

禁止だ禁止だって、フラグにしかなんないわ。

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― 新着の感想 ―
ドラゴンより危険なモンスターであるユーラシアが側に居るのに今更ドラゴンなんてねぇ 天使も悪魔も敵対を避ける危険度だぞ
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