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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1811話:ドワーフとお肉とエルフ

「エルフにも人物はいるな」


 エルフの里からあたしん家に帰ってきて、カスパー前子爵が感心したように言った。


「カナダライさんのこと? できる男だよねえ。カナダライさんいなかったら、森エルフはまとまんないと思う」

「でも白いエルフは伝説的な族長なんだろ?」

「ウッドエルフ史上最高の魔道士だってよ」

「民を導くとかいう伝承があるんじゃなかったのかよ?」

「伝承は伝承でしょ。アビーなんかに導かれたら迷子になるわ」


 皆がメッチャ頷いとるがな。

 アビーもまたすごい人であることは間違いないんだけれども、方向性がね。


 フェーベさんが言う。


「私、亜人を見たのは初めてです。エルフは本当に耳が長いんですのね」

「森エルフはそうだね。洞窟エルフはあんま長くないって聞いたけど、会ったことないからわかんないな」

「長命なんでしょう?」

「うん。さっきのアビーは、ドーラ黎明期にノーマル人とパーティー組んで冒険者やってたんだって。一〇〇歳は軽く超えてる」

「そうなんですのね」

「せっかくだからドワーフも見ていく?」

「いいのか?」

「おっ、ディートマルさん乗り気だね。ちょうど行く用があるから、ドワーフのところでお昼御飯にしよう」

「注意することはあるか?」

「特には。土と岩の民って自称してるけど、ドワーフって言っても怒りゃしないよ。やっぱりエルフのことは話題にしない方が無難だと思う」

「ドワーフは職人気質で偏屈と言われているが?」

「格好つけてそーゆーポーズは取るね。俺達は腕の安売りをしないんだみたいな。でもお肉とお酒が大好きで陽気だよ。ちょっとお肉狩ってくるから待ってて」


 今日もまた幸せ成分たっぷりお肉の日だ。


          ◇


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやるいつもの儀式。

 ドワーフの集落にやって来た。

 カスパーさんが感心する。


「立派な門だなあ」

「ドワーフの石工の技術はすげえんだよね」


 門番がふて腐れたように言う。


「おう、またあんた達か」

「うん、美少女といったらあたしだよ。どうしたの? 機嫌悪いみたいだけど」

「あんた昨日来なかったじゃねえか! 肉を待ちわびてたんだぞ!」

「そりゃごめん。あたしだって忙しくて来れない時もあるんだよ」

「本当か? 忘れてただけじゃねえだろうな?」


 実は忘れてた。

 案外鋭いな。

 これがミートマジックか。


「お詫びに今日はお肉のお土産は多めだからね」

「ウソだ! 騙されねえぞ? この前の方が確実に多かった!」

「これだけじゃなくてまだあるんだってば。今日は人数が多いから、今持ってきたのが少なめってだけだよ。転移事故起こしたら嫌じゃん。まずこれ解体してお肉にしといてよ。残りはすぐ持ってくる」

「おーい、肉が来たぞ! 宴だ! 客人を歓待するぞ!」


 ハッハッハッ、ドワーフの扱いは実に簡単だなあ。

 お肉の虜になってしまえ。


          ◇


「大変おいしいお肉ですね」


 男どもがドワーフと愉快にお酒を酌み交わしている間、うちの子達とフェーベさんは肉食選科だ。

 アトムよ、飲みたかったら向こうに混ざってこい。


「これはコブタマンっていう魔物の肉だよ。炙り焼きして塩かけて食べるのが最高だね。ブタはこの肉に質が似てるんだって」

「素晴らしいです。この美味しさなら高級品と言われていたのも納得ですね」

「うーん、でもこの味を出すためには、エサを限定した特級品じゃないと難しいと思う。その辺にテルミッツ産ブランドブタが君臨する余地があるんじゃないかな。今からブタ飼育の環境作りをしとくといいよ」

「そうですね」


 早いと五年以内に導入できるからね。

 エサだけじゃなくて他にもコツがあるんだろうけど、資料をよく読んで計画立てておくべきだと思う。

 準備しとくに越したことはない。


「ホッホッホッ、面白そうな話をしておるの」

「あっ、長老」


 ヤギみたいな白い顎ヒゲと温和な表情が特徴のお爺さんドワーフだ。


「今日の皆さんはどういう方々かな?」

「海の向こうのカル帝国の人達だよ。ブタっていう、おいしいお肉が取れる家畜の試験飼育の関係でドーラに来たんだ」

「ほ? 美味い肉の取れる家畜とな?」


 ハハッ、うまーいお肉とあってはドワーフは無視できまい。

 家畜として飼うならいつでも食べられるからね。


「ドワーフが普段食べてるお肉って何の肉なの?」

「野鳥や野ウサギ、シカが多いですかな。ウサギとウズラは飼育もしておりますぞ」

「エルフが魔物のワイルドボアを家畜化しようとしてるんだ。帝国の客人達の協力で」

「エルフどもが? ふむ……」


 あんまり仲が良くないだろうエルフが美味しいお肉に関わっているとなると、心穏やかでいられないのだろう。


「魔物肉を食うことはありますが、ワイルドボアを食したことはありませんな。臆病であまり姿を見せぬ魔物ですじゃ」

「らしいねえ。エルフも似たようなことを言ってた。でもワイルドボアはうまく家畜化できれば、あたしがいつも持って来るお肉くらいおいしく育てられるはずなの」

「何と、あれほどの肉が……。しかしエルフ……」

「まー思うところはあるだろうけど、ワイルドボアはエルフに任せておきなよ。家畜化に成功したらこっちでも飼えばいい」

「い、いやエルフとは……」

「あたしが間に入ってあげるから」


 族長アビーはドワーフと冒険者パーティー組んでたくらいだ。

 特にドワーフに含むところはないだろう。

 カナダライさんはむしろドワーフとの修好のために、家畜ブタを積極的に使おうとするんじゃないかな。


 ドワーフはお酒を造るために農業もエルフより熱心にやってるようだ。

 とゆーことはブタのエサには困るまい。

 きっとおいしく育てられるよ。

 結論、心配いらん。


「御馳走様。大変結構でしたとシェフにお伝えください」

「いや、シェフいないから」


 フェーベさんの発言は天然かジョークなのかわかりづらいな。


「あたしもごちそーさま。転移の玉もらっていくね」


 さて、そろそろお開きだ。

 あれ、どうしたアトム。

 え? ドワーフのお酒を飲んでみたいって?

 アトムは自分の酒量がわかってないからなー。

 まあ少しだけ。


「長老、ドワーフのお酒二本買っていくね」


 そんなに喜ぶなよ。

 一本はデス爺へのお土産だとゆーのに。


「帰るよー」

「バイバイぬ!」


 新しい転移の玉を起動しホームへ。

帝国の皆さんに亜人を見せておくことは、将来の観光事業に役立つかもしれない。

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