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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1798/2453

第1798話:後ろから声

 フイィィーンシュパパパッ。


「何これ? どこ?」

「港だな。埠頭から少し離れた、貯木場との境のところだ」

「貯木場?」


 ピエルマルコ王とダン、ヴィルとともに『サラセニア・ウトゥリク市内』の転送先にやって来た。

 先日の『公子を救え:大至急』から、転送先が変わったところだ。

 王様が説明してくれる。


「ウトゥリク港は河口の近くに発達しているのだ。川を用いて我がガリアから木材を運んでいるので、大きい貯木場もある」

「へー、腐っちゃわないの?」

「却って乾燥させやすいと聞くな。また長い間水に浸けておき、周りの柔らかい部分をわざと腐らせ、中央の硬い部分だけ残す手法もあるのだ」

「なるほど」


 材木を大規模に商売しようと思うと、知らない技術があるんだなあ。

 いや、樹種によっても適した方法が違うということはあるのかもしれない。

 ぷかぷか水に浮かぶ木がユーモラスだ。

 港の端っこであるこっちへは商人や旅行客もあんまり来ないから、転送先になってるんだな。


「大きい港だな」

「そうだねえ。タルガもデカかったし、テテュス内海の港って皆すごいのかしらん?」

「ハハッ、ウトゥリク港は大きいし設備も整っているな。我が国でも内海に自前の港を持とう、という議論が起きにくい理由もわかるであろう?」

「うん、わかる」


 こんだけの港作ろうと思ったら大変だ。

 しかもガリアの内海に面したところは人口希薄地帯なので、貿易による国全体への利益はともかく、あんまり地域住民への恩恵がない。

 貿易にウトゥリク港を利用するのもわかるし、だからこそサラセニアを手放せないんだろう。


「行こうか」

「うむ、どうする?」

「適当に人捕まえて話を聞きゃいいよ。絡まれたら絡まれたで構わないし」

「構わないぬよ?」

「大胆だな」


 とりあえず町がメッチャ混乱してるわけじゃないことはわかった。

 なら迷うだけムダだと思うよ。

 レッツゴー。


          ◇


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 おそらくは時間待ちの商人らしい人に話しかける。


「おお? お嬢ちゃん達は旅行かい?」

「そうそう。大公が亡くなってクーデター起きたって聞いたからさあ。街中がどうなってるのか知りたくて」

「もう落ち着いてるらしいぜ? 港に検問があったのも二日間だけで、一昨日には取っ払われた。下町の方の状況はわからんが」

「あっ、じゃあ大体安全なんだね」


 ふむ、ここまでは予想通り。


「騎士団が宮殿襲ったって聞いたよ。クーデターって何でなの? 唐突な気がするけど」

「さあ? お偉方のやることはわからねえが、大公家もガリアに擦り寄るかアンヘルモーセンに擦り寄るかで派閥があったんだ。その関係じゃねえかな。あそこで話してるのが騎士団長のベルナルド様と商業ギルド長のジョコンドさんだぜ」


 チラッと見ると騎士団といかにも商人らしき風体の人が立ち話をしている。

 ちょっと遠くて顔までわからん。

 ジロジロ見るわけにいかないしな?

 ナップザックからガリレオちゃんの描いてくれた似顔絵を取り出す。


「つまりアンヘルモーセンの派閥の人達だよね。これお土産で手に入れた似顔絵なんだけど似てる?」

「おお? そっくりじゃねえか。大した腕の絵師だな」

「そっくりなのかー。あんまり悪い顔だから誇張されてるのかと思ったよ」


 アハハと笑い合う。


「おっちゃんはアンヘルモーセンの商人なんでしょ? サラセニアがアンヘルモーセンベッタリになると嬉しいの?」

「いやあ、冗談じゃないぜ。お偉いさんが代わったからって、安く仕入れられるわけでも高く売れるわけでもねえ。今だってクーデターの混乱で商品が入らねえし、石炭が高騰してるんだ。えらい迷惑だぜ」


 ふむ、商人は必ずしも歓迎してるわけじゃないのか。


「商人さんも大変だね」

「お嬢ちゃん達は街へ行くのかい?」

「うん。古いガリア様式の町並みが見どころだって聞いた」

「気をつけろよ」

「ありがとう。じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 さて、街歩いてもう少し調べて行こ。


          ◇


「本当に綺麗な街だねえ」


 白壁でオレンジないし青のどちらかに塗られた屋根の建物が並ぶ。

 溢れる異国情緒をさらに増幅しているのが運河の存在だ。


「こういう運河が張り巡らされてる街はドーラにないから面白い」

「アンヘルモーセンの首都シャムハザイの運河網は、ウトゥリク以上だと聞くぞ」

「へー、すごいなあ」


 さすが商都だけあるなあ。

 王様が言う。


「予は行ったことはないが、下町は露店で賑わう地区があるそうだぞ」

「おいしいもの売ってないかな?」

「今は食い物屋は商売上がったりなんじゃねえか?」

「ごもっとも。クーデターメッチャ迷惑だなあ」


 食材が手に入りにくいよな。

 店やっててもお値段高くなっちゃってるだろうし。


「今まで見聞きしたことをまとめると、こんな感じかな?」


 大公弟ヒラルス殿下を担いだクーデターである。

 実働部隊はベルナルドを長とする騎士団だが、サボタージュしてる隊員も少なくないらしい。

 商業ギルド長ジョコンドの名前はあまり出てこなかったけど、実際に騎士団長と話してる場面を目撃したしな。

 癒着してるのは間違いないだろ。

 で、五日後に前大公殿下のお葬式。


「アンヘルモーセンがどこまで踏み込んでるのかがわからん」

「それなー。丸っきり見えてこないよね。このまま事態が落ち着いちゃうと、なし崩しに親アンヘルモーセン派ヒラルス殿下が大公として認められそうな展開がよろしくない」

「どうする?」


 どーすべ?

 少々ムリヤリにでも介入しないと、アンヘルモーセンばかりが得をしちゃう。


「……ガリア軍が公子二人をサラセニアまで連れてくるとすると何日かかるの?」

「騎兵のみで構成したとして、最短一二日だな」

「よし、亡くなった大公殿下には悪いけど、お葬式はあたしが壊しちゃう」


 だってお葬式を謹んで執り行いましたなんてのを許したら、次の大公として認めるようなもんだから。


「ガリアを味方にした真の大公たる公子が帰ってくるぞーって吹かしとくよ」

「任せた」


 王様細かいこと何も言わないのな?

 ダンはニヤニヤしてるし。

 つまりあたし演出のエンターテインメントでいいらしい。

 十分計画を練らなくては。


「この先は下町と言っていいエリアだ」

「そこのあなた」


 後ろから声がかかる。

 しばらく前から気配はあった。

 誰だ?

知り合いなどいないはずのサラセニアの首都ウトゥリクで話しかけられるミステリー。

なーんちゃって。

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