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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1777話:御褒美をもらうまでがクエスト

「……とゆーわけなんだ」


 ギルドに戻り、うちの子達とダンの他、おっぱいさんも交えて報告がてら昼食中だ。

 二人の公子を救ってガリアの王様に預けた顛末を話している。

 ダンが笑う。


「いやあ、面白かったぜ」

「過去形で括るのは早いぞ? まだクエスト完了のアナウンス聞いてないんだから」

「おう、そうだったな」

「御褒美をもらうまでがクエストとか、謝礼を諦めたら試合終了だっていう有名な諺があるじゃん?」

「何の試合だ」


 まあでもダンの言う通り、面白いことは面白かった。

 特にガーディアンゴーレムはすんごい魔道技術だと思うわ。

 あんなんが作れるのなら、見世物として最高なのになあ。

 客寄せに作るもんじゃないのかもしれないけど、思考が商売方向に行ってしまうわ。


「午後から帝国の施政館へ報告に行くけど、ダンも来る?」

「いや、もう腹一杯だから遠慮する」


 本当に腹一杯食べたからなのか、午前中に脱出行を十分楽しんだからなのかどっちだろうな?


「もう一つ報告しとくね。七日前だったかな、サクラさんにもらった『不思議の泉』のクエスト。あれ、知り合いの女神様の家だった」

「「知り合いの女神様?」」

「以前からあたしの夢に出てくる女神様がいるんだ。こっちの世界を管轄してるの」

「こっちの世界ってどういうことだよ」

「亜空間に隔てられた実空間がいくつかあるじゃん? ドーラや帝国を含めた同じ実空間内にあるのがこっちの世界。『アトラスの冒険者』本部はこっちではない、別の実空間にあるんだ」


 ダンもおっぱいさんも、この辺アバウトに理解はしてるだろう。

 でも神様管轄の概念が出てきたから一応。


「世界ごとに管轄してる神様は違うらしくてさ。こっちの世界の女神様は、『アトラスの冒険者』本部のある世界に干渉されてるって、以前から不満があったようなんだ」

「……つまり神様同士の力関係で『アトラスの冒険者』は廃止される、ということですか?」

「どうだろうな? 神様は世界に直接手出しできないっていう縛りがあるらしいんだ。向こうの世界の神様と相談して、『アトラスの冒険者』本部を廃止の方向に誘導させたくらいのことはあったかもしれない」


 いずれにしても『アトラスの冒険者』は廃止なのだ。

 細かい事情は考えるだけムダのような。


「で、その女神様がイシュトバーンさんのファンで。今日イシュトバーンさん連れていって、絵を描いてもらう予定なの」

「おい、他人を連れていくのはありなのかよ?」

「ありみたい。寂しいから五回遊びに来てっていうのが、『不思議の泉』クエストのクリア条件なんだ」


 おっぱいさんが言う。


「ユーラシアさんから見て、その転送先は有用ですか?」

「有用だよ。『不思議の泉』の転送先は、これまたちっちゃな独立した実空間なんだけどさ。何とそこには聖風樹が生えてるの。あのお肉が悪くならない箱を生産できちゃうようになるかもしれないな」


 あの箱を大量生産できるなら生鮮品も輸送できる。

 流通に革命的変化を起こせるのではないか、とゆー期待もあるのだ。

 林業資源としてメッチャ重要なので、管理が必要だな。

 どこでも生えるってわけじゃなさそうだし……。


「……聖風樹って増やせないのかな? クララどう?」


 ムリらしい。

 おそらく世界樹と同じように魔力濃度が必要だろうとのこと。

 魔境なら育つかもしれないけど、普通の人が利用することはできないしなあ。

 ヴィルが言う。


「あの木は嫌な感じがするぬよ?」

「名前の通り聖属性を帯びてるのかな?」


 クララが頷いてるところをみると合ってるみたい。

 じゃあ何でバアルはわざわざ聖風樹製の宝箱なんか使ったんだろ?

 まさかバアルが自分で作ったってことはないだろうから、たまたま手に入れてたくさん持ってたってだけかもしれんけど。

 宝箱に最適な木だとは思うから、過去に聖風樹製の宝箱が流行った時期があったのかもな。


「何だかんだでサクラさんの回してくれるクエストは大変面白いです。感謝してます」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます」

「あんたはしばらく『不思議の泉』と今日のクーデターにかかりきりなのか?」

「そーなるかな。『不思議の泉』はどうでもいいんだけどね。あたしの持ってる正規の石板クエストが『ガリア・セット』ってやつなんだ。今日のクーデターとの絡みで、しばらくガリアとサラセニアに行くことになりそう」


 大公の死とクーデターで、おそらく天使国アンヘルモーセンの意図が明瞭になるだろう。

 また一つ動かなかった案件が動き出す。

 おっぱいさんがにこやかに言う。


「御馳走していただいてありがとうございました。私はそろそろ仕事の時間なので戻りますね」

「また何かクエストで進展あったら話すよ」

「バイバイぬ!」

「ごちそーさま。さて、あたしも行かないとな。勤労精神が美少女精霊使いの原動力」


 ダンがニヤニヤしてるぞ?

 何だろ?

 気持ち悪いとゆーのに。


「ちょっと待てよ。三日後にサラセニア行くんだろ? 王様連れて」

「うん」

「優秀な護衛はいらねえか?」

「いらない」

「いらないぬ!」


 一緒に行きたいなら素直にそう言え。

 まーでもダンも今日の事件がどう片付くかは知りたいか。


「三日後の朝、ギルドに迎えに来るよ」

「待ってるぜ。と、気がかりなことがもう一つあるんだ」

「ん? 何だろ?」

「カールがどうしてるか知らねえか?」

「ピンクマン? いや知らない」

「最近ギルドに来てねえんだ」


 ちょっと気になるな。

 あたしが前に会ったのは醸造ラボだった。

 天使について聞きに行った時だ。


「ピンクマンは次期黒の民の族長だろうし、酢と醤油の生産で忙しいはずだから、ギルドに来ないってのはわからんでもないんだけど」

「以前はしょっちゅう飯食いに来てたんだが」

「サフランお手製の御飯を食べてるんだろうなー」


 ニヤニヤ。

 幸せを満喫してください。


「醸造ラボにトラブルあったならあたしんとこに話来るはずだし、心配しなくてもいいと思うよ」

「おう。一応あんたも気にしててくれ」

「わかった」


 酢と醤油の生産状況がどうなってるか知りたいし、よおぐるとのことで相談したくもある。

 時間ある時黒の民の村行ってみよ。


「じゃねー」

「バイバイぬ!」

「あっ、おいこら!」


 転移の玉を起動、支払いをダンに押しつけて帰宅する。

奢りだと思うと御飯は何割増しかで美味しくなる。

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