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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1745話:地方領主の心得

「私、少し疑問なことがあるんですけど」

「何だろ?」

「どこへ向かっているんでしょうか?」

「そーいや言ってなかった気がする」


 ルーネ双子皇子ヴィルを連れて皇宮を出たところだ。

 しかし何でどこに行くかも知らないのに、ついて来ようとしたんだろうか?

 行先が目的じゃなくて、あたしのエンターテインメントが期待されちゃってるんだな?


「『ケーニッヒバウム』へ行くんだよ。トウモロコシが欲しくて」

「「「トウモロコシ?」」」

「エルフがブタの復活に向けて実験的飼育してるって話したじゃん?」

「「何と、エルフ?」」


 双子皇子は知らなかったか。

 ちょっと詳しめに。


「高級肉として知られるブタは、ある種の魔物を家畜化したものなんだ。ただ魔物除けのあるところだと、邪気を持つ魔物は弱っちゃう。だから魔物の家畜化って言うほど簡単じゃないの。ここまでいいかな?」


 首肯する全員。

 皇宮地下みたいにメッチャおゼゼをかけられるならば多くの魔物飼育も可能なんだろうが、普通の貴族じゃムリな話だ。


「ドーラじゃ魔物除けを使わないエルフが、ブタと近縁種の魔物の試験的な飼育を担当してくれててさ。昨日見に行って、一二頭邪気の弱い個体を飼育してる。累代飼育していくと魔物除けを嫌がらなくなるだろうってことだよ」

「「すごいじゃないか」」

「まあね。でもどう考えてもエサが足りなくなりそうで。トウモロコシだと今から蒔いても、今年の収穫にギリギリ間に合いそうじゃん? でも移民一杯来てるドーラにはトウモロコシの余裕がなくてさ。『ケーニッヒバウム』だったら保存状態のいいのが手に入るかと思って、調達しに来たの」

「ユーラシアさんは色々やってるんですねえ」

「「予達も疑問に思ってることがあるんだが」」

「何だろ?」


 双子皇子が疑問に思ってて、積極的にあたしに聞きたいこと?

 ちょっと思いつかないけど。


「「何故予達の名を覚えないのに、ジルケとペトラの名は覚えているのだ?」」

「おおう、意外と鋭いな。あたしの整理された頭脳は、覚えなくていいと判断したことは覚えないんだよ。重要人物の名前は一発で記憶するけど、大事じゃないと考えちゃうと何というかごにょごにょ」

「「要するに重要じゃないから予達の名は覚えられないと」」

「うん。一応双子皇子殿下達も皇族だから失礼かなと思って、口を濁してみました」

「「濁してないから! 九割口に出てるから!」」


 アハハと笑い合う。

 双子皇子の口調がピッタリ合う芸は洗練されてるなあ。

 大したもんだと思う、そこだけは。


「ジルケさんとペトラさんのお嫁さんズは、大貴族の娘としての覚悟というか気概が見て取れるんだよね。双子皇子には残念ながらごにょごにょ」

「「ハッキリ言ってくれ」」

「女の子をナンパするテクニック以外に、磨いてきたものがあるのかなーっていう」

「「……」」


 二人張り合うのがいい方向に出ていれば、さすが先帝陛下の皇子だけのことはあるって言われてたんじゃないの?

 今回の皇帝選もそうだけど、何でいらんところで競争しようとするのか。

 おつむの出来も似たようなもんだから?


「あたしは正直者だから言っちゃうけど、ズバリ言ってくれる人なんかほとんどいないでしょ? 皇子の割りに周りから軽く扱われてるなーって、薄々気付いてるんじゃないの?」

「「……うむ」」

「素直だな。地方領主としての人生はこれからじゃん。努力次第で皇帝の忠実な臣たる名領主にはなれるよ」

「「そうかな……」」

「ごめん。あんまり双子皇子が殊勝なんで、つい思ってもいないこと言っちゃった」

「「何なんだ君は!」」


 ルーネ笑い過ぎだろ。

 最初こんなに笑うイメージの子じゃなかったのにな。


「でも地方領主のやることって決まってるじゃん? 一般的には領民を飢えさせないこと、産業の振興、他の領主や中央とのパイプを持っとくこと」

「領民を餓えさせないことはまあ」

「ああ。本土北西地区は穀倉地帯であるし」


 お嫁さんの実家から双子皇子に期待されてるのは、パイプ役だと思うけどね。

 皇子としての人脈だよ。

 何せ主席執政官閣下かプリンスルキウス、どちらかの兄が皇帝になるんだから。

 

「考え方を変えようか。帝国本土北西地区が穀倉地帯ってことは、そうじゃない地区もあるわけじゃん? 飢饉の時はどうする?」

「「!」」

「自領はギリギリ足りるかもしれんけど、他領は違うでしょ?」

「「た、他領の民をも飢えさせない?」」

「帝国民を飢えさせない、かな。とゆー考え方を持っておくことが名臣名領主ってもんでしょ。じゃあ必要なものは?」

「「備蓄?」」

「そうそう。備蓄と救荒作物の研究。救荒作物の研究はやればやっただけ成果が出るから、早めにやった方がいいね。北国を視察させるとかもありだね」

「「うむ」」

「備蓄食料は案外難しいぞ? 量があればいいってもんじゃないんだ」

「ストックをどう処理するかの問題だな?」

「右分け皇子正解。例えばお酒はいいんじゃないかと思ってるんだ」

「「「お酒?」」」


 ルーネはともかく、双子皇子は手を打って納得してくれなきゃ困るんだが。


「ものってのは安くて質が良くて知名度がないと売れないんだ。でもお酒はそういうジャンルの商品じゃないというか」

「珍しい酒は飲みたくなるな」

「左分け皇子正解。放出するストックを使って、家畜飼うのも観光客呼ぶお祭りやるのもいいね。でもお酒の生産も有力でしょ? 保存が利くし」


 あたしもお酒のことをよく知ってるわけじゃないが、どーも商品としての特性は気になるのだ。

 造り過ぎても消費できないんだろうけど、一定の需要は確実にあると見た。

 またお酒と似たような特性、保存が利いて地域性が出るようなものを作れるなら、他所に売ってお金にできるよ。


「ユーラシアさんは随分と色々考えてるんですねえ」

「頭使うのはタダだから使った方がお得だぞ? いや、今喋ってるのは思いつきだけだよ。備蓄の量や使い回しについては、あたしなんかより良識ある商人さんや地元の有力者の話をよく聞いた方がいい」


 地方領主になるような人には、人脈は絶対に必要なのだ。

 わかんないことは聞けばいいし、自分にできないことは丸め込んでやらせればいい。

 自分一人でできることなんかたかが知れてるんだから。

本当は特産品が欲しい。

まあでも難しいからな。

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蕎麦やヒエだのの雑穀育ててイザと言う時のために食べられる雑草を保護するしか
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