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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1713話:お肉の聖女

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『今月の移民が開拓地に到着したんだ』

「あ、今日だったっけ?」


 陛下が亡くなってからバタバタしてたんで忘れてたな。


『特には問題ないから大丈夫だぞ』

「よかった。揉めなきゃ何とかなるよねえ。明日午前中は空いてるから、お肉持って開拓地へ飛ぶよ」

『明後日にならないか? 久しぶりに焼き肉パーティーをやりたいという声が多いんだ』


 焼き肉パーティーか。

 心躍るワードだなあ。


「いいね。お肉の聖女ことウルトラチャーミングビューティーユーラシアが、責任持ってお肉の調達を承ろうじゃないか」

『こういう時は実に心強いなあ。お肉の聖女はあえてスルーするけれども』

「要するに調理係が泣くまで働くほど、お肉を狩ってこいということだね?」

『ユーラシアの勤労精神に従わせなくてもいいよ』

「とゆーことは、従わせても構わないと」

『お好きなように。君明日の午前中は時間あるのか。じゃあ運搬用の台車をそっちに派遣していいかな?』

「明日肉狩りでお肉をお肉にまでしておく。明後日お肉パーティーってことでオーケー?」

『ちょっと何言ってるかわからないけど、ニュアンスは合ってると思う』

「よーし、楽しみだな」


 皆で食べると余計においしい。

 外で食べるとさらにおいしい、お肉の真理。

 いや、心理なのかな?


「今日皇帝選の候補者が出揃ったんだ」

『うん、最終的に何人になった?』

「五人だよ。既に出馬を表明していた主席執政官閣下とプリンスルキウスとレプティスさん以外に、何とかいう双子の皇子が立候補した。プリンスと母は違うけど、すぐ下の弟に当たる人達。顔が同じで区別がつかないことだけが特徴かな」

『君が名前覚えてないってことは、存在感のない皇子か?』

「そうそう。モブ」

『仮にも帝国の皇子なのに、モブ扱いはひどいなあ』


 あたしはひどくないと思うよ。

 ひどいのは双子皇子の方。


『何でユーラシアがモブと決めつけてる程度の皇子が出馬したんだ? 一定の支持があるのかい?』

「いや、双子なのに仲が悪くてさ。イキり倒してる内に勢い余って立候補しちゃったみたい」

『何だそれ? 考えなしなのか?』

「考えなしだねえ。当選の見込みのない立候補って、新皇帝含めた他の候補者に対する反抗とも挑発とも取れるじゃん? 各々のお嫁さんの実家に怒られたみたいで、プリンスルキウスに泣きついたんだって」

『何だそれ? ルキウス皇子だって立候補者じゃないか。言わば敵だろう?』

「間抜け過ぎて笑えてきちゃうよね。でもプリンスはいい人で能力もあるから、頼りたくなる気持ちはわかる。で、プリンスからあたしんとこへ何とかしろって話回ってきちゃった」

『何だそれ? 全くわけがわからない』


 まさに何だそれの嵐。

 こっちが聞きたいくらいだわ。


「プリンスもあんまりバカバカしいからこっちに振ったんじゃないかな。あたしに皇族を紹介してやろうって気もあったんだろうけど」

『なるほど。君としてはモブ皇族を紹介されても嬉しくないけど、何だかんだで暇潰しになるから手を貸すということか?』

「まあね。トンマなドングリの背比べってのも初めて見るじゃん? キャラとしては面白いかと思って」

『やはりひどいの王者はユーラシアだなあ』


 何だひどいの王者って。

 全然嬉しくない王者だわ。


「候補者同士に握手させてクリーンに選挙戦やるぞ、遺恨は残さないぞってセレモニーをやることにしたの」

『……ははあ、選挙の絶対性を高めて選挙後の争いを排除し、速やかに新帝体制に移行する目論見か。候補者数が多くなることでクリーンな印象を高め、同時に双子皇子も新帝から敵扱いされることはなくなると』

「おおう、サイナスさんが格好良くまとめたなあ。正しいっちゃ正しいんだけど」

『結構なことじゃないか。問題があるように思えないんだが』


 問題大ありなんだわ。


「あたしは皇帝選の正当性と透明性を謳うセレモニーをやりました、っていう事実だけを新聞に載せときゃいいと思ってたんだよ。そしたら閣下とプリンスが市民を集めて大掛かりなイベントにしようって言い出して」

『君の得意技じゃないか』

「違うんだなー。盛り上がんないからやめろって言ったんだけど、明日やるんだって」

『何が違うのかよくわからないんだが』


 サイナスさんはあたしの煽りをよく知ってるだろーが。


「ライバル同士の熱き戦いです、なら白熱するよ? 皆仲良しハッピーセーットみたいなのが盛り上がるわけないじゃん。当たりもしないよーなイベントをプロデュースしたなんて知れたら末代までの恥だから、あたしはパスしたんだ。現植民地大臣次期広報担当のアデラちゃんが仕切ることになった」

『うん。君が尻尾を巻いて逃げるなんてことはないと知ってる。何やるんだ?』

「鋭いね。あたしの言うこと聞かないなら失敗してろ。マジで放っとこうと思ったんだけど、無茶イベント振られて手腕どうこう言われちゃうアデラちゃんが貧乏くじ引いちゃうじゃん? ただでさえ平民女性大臣で、いい意味悪い意味で注目されてるんだから、非難されるのは可哀そう。で、しらけ切ってる会場にあたしとリリーが予告なしで登場して、少しイベントとしての体裁を整えてやろうと思ってるんだ」

『面倒見がいいなあ』

「いいんだよ。あたしは人々の幸せを心から願う聖女だからね」

『途端にウソっぽくなるなあ』


 アハハと笑い合う。


『当分帝都で楽しめそうじゃないか』

「んーどうだろ?」

『その双子皇子とはまだ絡みがあるんだろう?』

「あ、今日の報酬をもらいに行かないといけないんだった」


 昼御飯で満足したから忘れてた。


「何か双子皇子、報酬を請求するって言ったら喜んでたんだよね。美少女の取り立てが嬉しいんだろーか? サイナスさん、どう思う?」

『まだ何かトラブルが待ち受けてるに違いない』

「ええ? 喜ぶべきなのかそうでないのかわかんないなー」


 エンタメが待ってると思えば楽しみだが、提供の主体がモブ皇子ズだしな?

 期待し過ぎは厳禁の気がする。


「じゃサイナスさん、おやすみなさい。台車待ってるよ」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はまず肉狩り。

お肉の聖女って、響きが素晴らしいなあ。

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