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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1710話:イモでも食ってろ

 ホッとした表情で両殿下が言う。


「助かったよ」

「ああ、これで面目を失わずに済む」

「でもこれじゃようやくマイナスポイントを少なくしただけなんだよね。せっかく立候補したんだから、得がないとつまらんねえ」


 敗北者の汚名を着るだけ損だしな?

 とゆーかあたしが関わってるのに損するとゆー状況が面白くない。


「得できるのか?」

「それをこれから考えないと」


 赤プレートに反応がある。


『御主人! ドミティウスだぬ!』

『ユーラシア君かい?』

「そうそう。聖女にして商売人にして賢者のあたし。今マルクス殿下とガイウス殿下に会っててさ。両殿下が閣下に面会したいって言うんだけど、施政館に行っていいかな?」

『マルクスとガイウスが? ふん、皇帝選に立候補するならどちらか一人に絞って支持層を一本化すべきだろうが。遊びの延長のつもりか? 愚か者を相手にしている時間はない。イモでも食ってろと伝えてくれ』


 マジでイモでも食ってろが出ました。

 ルーネ大笑いです。


「ま、閣下の言う通りなんだけど、両殿下に当選する気はないんだ」

『どういうことだい? 意味がわからない』

「あたしだってわからんけれども、動機はひとまず置いといて。せっかく双子殿下が立候補してくれたんだから、状況を利用しない?」

『ふむ?』

「皇帝選の立候補者全員集めて、正々堂々戦うぞーっていうセレモニーやろうよ。新聞記者さんも呼ぶからさ」

『セレモニーか』

「そうそう。国内的にも対外的にもいいでしょ?」

『……一理あるな』


 皇帝選の正当性を市民に訴えかけること。

 及び候補者の間に選挙後遺恨なしのアピールが有効なことに気付いたな。


「プリンスルキウスとレプティスさんはそっちにいるかな?」

『ああ』

「ルーネも施政館へ行きたいって言ってるんだ。連れてっていいかな?」

『すぐ来てくれ』


 よーし、思い通り。

 双子殿下も大喜び。


「今から歩いて行くよ。ちょうど立候補締め切るくらいの時間になると思う」


          ◇


 ヴィル通信で新聞記者トリオにも連絡を取ってから、施政館へ向かう。


「あのドミティウス兄上を相手に思い通りの展開に持っていくとは」

「ああ、正直驚いた」

「ハッハッハッ、まあ大したことあるよ。ところでさ。今更でごめんなさいだけど、両殿下はどっちがどっちなん? 皆どこで見分けてるのかな?」


 双子で顔一緒だもん。

 区別がつかない。


「私は髪型で見分けています。髪を向かって右分けにしているのがマルクス叔父様、左分けにしているのがガイウス叔父様ですよ」

「髪の分け方か」


 失礼だから声には出さないけど、覚えておける自信がない。

 だってモブ皇子なんだもん。

 存在感がイマイチ薄いとゆーか、忘れてもあたしの人生に関わりなさそうとゆーか。

 双子殿下が言う。


「先ほどの皇帝選で得できることについてだが」

「予も気になっていた。メリットがある方向に持っていけるものだろうか?」

「うん、気になるよね。今のままだと失点をある程度回復したとしても、悪目立ちしてる分は損なんだ。これを目立って良かったねって方向に持っていければ得になる。いいかな?」

「「うむ、どうすればいい?」」

「新聞記者さん達と仲良くできる?」

「「は?」」


 情報戦は大事なのだ。

 両殿下ともゴシップ紙の餌食になってたみたいだけど、そーゆー過去は捨てられるかってことだよ。


「皇帝選がいかに崇高で重要で正当かってことを主張しまくるんだよ。これは事実だからやましいことないでしょ?」

「新聞記事にするということか? だからって……」

「要するに、皇帝選に勝った候補者の求心力が高まるという、さっきの理屈の補強ですね?」

「そうそう、ルーネ正解。これはイコール将来の皇帝に対する貸しだよ」

「「な、なるほど」」

「知り合いに有力者いたら巻き込んでいいからね。たくさんの人が選挙に肯定的なら、それだけ新皇帝の基盤は磐石に、帝国の安定性は増すと考えていい」

「国のためでもあるのか」

「どうせなら帝国のメリットも追求したいね。間違っても自分の票に繋がるかもなんて色気出しちゃいかんよ? 予達が公務で忙しいのに卑怯なことをしやがってと、ヘイトを買っちゃう。そーなると努力が水の泡だぞ? 主張は皇帝選の意義と正しさだけにして」

「「お、おう」」


 やるべきことがわかったかな?


「もう一つ得できることといったらそうだなー。殿下達仲直りしなよ」

「「は?」」

「どーしてそこ疑問形なのかな?」

「「生まれた時からおっぱいを取り合う敵同士だからだ!」」

「おおう」


 イシュトバーンさんが手を叩いて納得するような理屈キター!


「「不倶戴天の敵だ! 手を結ぶなんてあり得ん!」」

「ビックリするほど言葉が重なるなあ。今までは同じものを取り合うライバルだったかもしれないけど、これからは生き方が分かれるでしょ? 両殿下が自分の将来をどう考えてるか知らんよ? でもいつまでも皇宮にいるってわけでもない。皇籍を離れてどこかの領主になったりするんでしょ?」

「「おそらくは……」」

「人脈が今まで以上に大事になるよ。殿下Aと仲良くすると漏れなく殿下Bに恨まれます。みたいな面倒な関係持ってる人と関わりたいと思う?」

「「そ、それは……」」

「殿下同士の関係だって同じだよ。殿下Aと殿下Bが協力し合えますのケースと喧嘩していますのケース。どっちが頼りになる? どっちが国のためになる? どっちがお嫁さんの実家に喜ばれる?」

「「……」」


 顔を見合わせる両殿下。

 ちょっとは心に染みたか?

 ん? ルーネどうした?


「どうして急にお名前が匿名になったんですか?」

「殿下達の名前ド忘れしちゃって」

「マルクスだ!」

「ガイウスだ!」

「ド忘れしちゃうぬ!」


 アハハと笑い合う。


「新聞記者さん達を相手にして、二人で行動しててごらんよ。あれ、両殿下は仲悪いっていう噂だったけど、今は違うじゃん。むしろ仲いいんじゃねって思われれば、今後見えない部分で得できるよ」

「「……わかった」」


 互いに顔を見合わせる両殿下。

 鏡合わせみたいだとゆーのに。

 急に仲良くするのは難しいかもな。

 でも考えてみりゃ、自分の半身同士みたいなものだよ。

 話し合ってみてください。


「あっ、ラッキー! 記者さん達来た。タイミング良かったなー。おーい!」


 合流して施政館へ。

双子って不思議。

そーいやゲレゲレさんとこのお子さんも双子だったな。

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