表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1701/2453

第1701話:ハマサソリさんに失礼

「ただいまー」

「ただいまぬ!」

「お帰りなさい」


 ギルドで不用品を処分したあとに帰宅した。

 ん? うちの子達が興奮気味だぞ?


「新しい転送魔法陣が出やしたぜ!」

「レッツゴーね!」

「お弁当用意しておきました!」

「おいこら、あたしにも喋らせろ」


 未だかつてうちの子達がこんなにノリノリの転送先なんてあっただろうか?

 いや、ない。

 そんなに行きたくなっちゃうような転送先なんかな?


「じゃーん! ギルドでもらった新しい地図の石板でーす!」

「「「パチパチパチパチ!」」」「パチパチだぬ!」

「おっぱいさんによると、配給されてる石板クエストのクリア非クリアに拘わらず、余ってるクエストをもらえることになりました!」

「ワッツクエスト? セレクトね?」

「いや、こっちで選ぶんじゃなくて、おっぱいさんセレクションに任せることにした。あれ、おっぱいさんセレクションって魅力的なワードだな?」

「新たな転送先は、『青い空と白い砂の島』という名なんでやすぜ」

「おおお? 聞いただけで行ってみたくなっちゃうな」


 リゾート地かな?

 うちの子達が浮き立つのもわかる。

 気持ち良さそう。

 しかし……。


「魅惑の響きではあるな。でもやっぱり転送先名からどんなクエストかってのはわからないね」


 これは今までのクエストにも共通ではあるけど。

 まあ難しいクエストではない。

 わからないのも楽しみの内と思えば全然構わん。


「新しい転送先について、サクラさんから情報はありますか?」

「あんまりないな。レベル一でもクリア可能って言ってた」

「どうして新人に回さなかったんでやすかね?」

「ワンダーね?」

「クセがあるから残ってたクエストなのかもしれない。その辺はおっぱいさんの判断だから何とも」


 最近転送可能になったクエストなのかもしれないしな?


「私達に回された理由もわかりませんね」

「あたしなら効果的な使い道を思いつくんじゃないかって、おっぱいさんが言ってたわ」

「使い道、でやすか?」

「うん、ちょっと期待してるんだ」


 使い道というのはどういうことだろう?

 保養地としてということかもしれないし、有用な何かが採取できるということかもしれない。

 あたし達が魔境でいろんな植物を見つけてるということをオニオンさん経由で聞いていれば、植物関係に見るべきところのあるクエストということは大いに考えられる。


「とにかくレッツゴーね!」

「ダンテの言う通りだ!」


 行ってみて考えりゃいいわ。

 転送魔法陣のある東の区画へ。

 赤っぽく光る転送魔法陣の上に立つ。


『青い空と白い砂の島に転送いたします。よろしいですか? 注意事項があります』

「注意事項を聞かせて」

『魔物を一〇体倒すクエストです』

「一〇体? 多いな」

「初級冒険者向けじゃない気がしますねえ」

「うーん、クララの言う通りでしょう」


 初めてのクエストの時、あたしとクララ二人がかりで五体のスライム倒すのはやっとこさっとこだったぞ?

 もっとも一回で終えるのを想定していないクエストかもしれないが。


「転送よろしく」


          ◇


「ふああああああ!」

「ナイスプレイスね!」

「素晴らしいぬ!」


 美しい砂浜が広がる。

 その名の通り青い空と海、白い砂浜の対比が美しい。


「いい風ですねえ」

「ソロモコに雰囲気が似てるねえ」


 暖かいし、ソロモコに近い場所の島なのかもしれない。


「いえ、植生からするとドーラに近いんじゃないかと思いますよ」

「そーなん?」

「この島、誰か住んでるんでやすかね?」

「あ、無人島とは限らないもんな。人がいて、ソロモコみたいに言葉通じないことがあるかもしれない。ヴィル、ここがどこか、誰か住んでるかって調べられる?」

「見てくるぬ!」

「あたし達は海岸沿いをぐるっと歩いてるからね」

「わかったぬ!」


 お散歩お散歩っと。


          ◇


「むーん、魔物ってこーゆーことだったのか」

「ハマサソリですねえ」


 ハマサソリ。

 タルガにもいた魔物だ。

 特徴:弱いけど毒持ち。


「メニーメニーハマサソリね」

「うじゃうじゃおるやん。転送先のところからはわからなかったなー」

「景観が台無しでやすぜ」

「景観もだけど、こんなんがいるんじゃリゾート地にもならないわ」


 うじゃうじゃってのは言い過ぎか。

 タルガ郊外の荒地よりも白い砂浜は身を隠す場所もなく、目立つからたくさんいるように思えるだけかもしれない。

 ほいっと邪魔なハマサソリを駆除しながら歩を進める。

 クララが何かに気付いたようだ。


「これ『鎧貝』ですね。どこでも手に入れられる素材ではないですから、覚えておきましょう」

「マテリアルをゲットできるのはグッドね」

「おゼゼになるものを拾えるのは、大変よろしいな」

「しかしこれは新人のクエストでいいでやすぜ」

「メイビー、ポイズンはデンジャーだからね」


 うむ、ダンテの言う通りだろう。

 ハマサソリは弱い魔物ではあるが、何も知らない初心者にとって毒持ちは危険だ。

 チュートリアルルームでは何も教えてくれないしな。

 一回目のクエストである程度の知見を得ているならともかく、最初のクエストには向いていないというおっぱいさんの考えなんだろう。

 そして二回目以降のクエストとして振るにはハマサソリは弱過ぎ、経験値も少な過ぎる。


「タルガではハマサソリの尻尾が売れるんだけど、ドーラじゃ売れないだろうなあ。薬作ってる人もいないだろうし、退治依頼が出てるわけもなし」

「倒し損でやすね」

「まー退治のクエストだから、いいっちゃいいんだけど」

「揚げて食べるとおいしいらしいですよ」

「あれっ? 突然無視できない情報が出てきたぞ? でもハマサソリって毒あるじゃん」

「ハマサソリの毒は熱で分解すると本には書いてありました。気味が悪いなら、尻尾を切り取って身だけ食べてみるのはいかがでしょう?」

「何故かクララが乗り気だね。じゃ、今日の夕御飯はハマサソリのから揚げだな。おいこらアトムダンテ。うへえって顔しない。それは食べて不味さを確認したらする顔だ。ハマサソリさんに失礼だぞ」


 クララがおいしいって言ってるんだからおいしいんだろう。

 脚の多い生き物は食べると美味い説あるしな。

 ナップザックから袋を取り出す。


「ここから先は、ハマサソリの尻尾だけ切るから、アトムとダンテは身を拾って袋に入れてね」

「「了解!」」


 先へ進む。

うちではあんまり揚げ物はやんないんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ