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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1637話:くたばっちゃったドーラ人達

「すごかったぞなもしー」

「すごかったですー」

「すごかったぬー」

「何なんだ、あんた達は」


 大盛り上がりの中幕を閉じたプリンスとパウリーネさんの結婚披露パレードのあと、近衛兵詰め所で休憩していた。

 いや、何か皆疲れてるみたいなんだもん。

 ヴィルはいい感情をたくさん摂取できたみたいでツヤツヤだけれども。


「おーい、生きてる?」

「な、何とか」


 中でも一番重症なのが新聞記者ズだ。


「年齢のせいかー。年は取りたくないもんだ」

「違いますよ! 若いですよ! ただ馬車酔いして……」


 馬車の中でも結構メモ取ってたもんな。

 馬車に乗ってた時はテンション上がってたから大丈夫だったけど、降りたら反動で症状が出たって、そんなことある?

 単なる言い訳じゃないの?


「人が多いところは疲れるんですってー」

「いつも元気なユーラシアさんにはわからないかもしれませんけどー」

「あたしは賢いので理解できないではないけど、これっぽっちも共感はできないね」

「やっぱりー」


 語尾を延ばすのは何なん?

 慣れない人の多さと興奮で、アグネスやニライちゃんも消耗しているようだ。

 休ませてやりたいとゆー気持ちもあるが……。


「こらっ、帰って記事まとめるんでしょ? モタモタしてると三時になっちゃうぞ。行政府で定例の会見があるんでしょ?」


 『ドーラ行政府だより』という、『ドーラ日報』『レイノスタイムズ』両紙共通の固定記事がある。

 毎日三時にアドルフからネタを提供されているのだ。

 新聞記者ズはとっとと仕事しろ。


「もちろんわかってますよー」

「でもですねー」

「くたびれちゃったんですよー」

「休ませてくださいー」

「うっわあ、イライラする」

「イライラするぬ!」


 よしよし、あたしをわかってくれるのはヴィルだけだ。

 とにかくムカつくから、語尾を伸ばすんじゃねー。


「ユーラシア」

「ユーラシアさん!」

「殿下ルーネお帰りー」


 飛びついてきたルーネとヴィルをぎゅっとしてやる。

 ドーラ人とニライちゃんが元気なく伏せっているのを見たウルピウス殿下が言う。


「これはどうした有様だ?」

「ごめんね。さっきのパレードがすんごいフィーバーだったじゃん? 熱気に当てられて疲れちゃったみたいで」

「修行が足りんな」

「マジでそう。まーでも大目にみてよ。今は少し休ませてあげて。皇子皇女がいるのにだらけた格好している不敬は、あとで厳しく償わせりゃいいから」

「「「ユーラシアさん!」」」


 アハハ、冗談だってばよ。

 貴公子こてんぱんイベントを経験してるあたしはそうでもないけど、ニライちゃんアグネス新聞記者ズはあれだけの数の人を見たの初めてだろうし。

 何だかんだで多くの人がいる時のエネルギーってすごいと、あたしもわかっちゃいるのだ。


「殿下もルーネも御苦労様」

「予は好きでやっていたことだからな」

「私は今日だけですから。名誉あるお役目でしたし、ウルピウス叔父様の御苦労に比べれば何でもないです」


 ウ殿下はプリンスの母方の実家ドレッセル子爵家との折衝を行い、ルーネは花嫁花婿に花束を贈る役をこなし、同時に自身の帝国市民へのお披露目を果たした。


「いやいや、立派に任務を果たした二人は偉い。見物してるだけでくたばっちゃったドーラ人の不甲斐なさを目の当たりにすると、余計そう思う」

「「「ユーラシアさん!」」」

「事実だぞ?」

「事実だぬ!」


 ルーネが話題を変えるように言う。


「ウルピウス叔父様がお友達を紹介してくださったんですよ」

「へー、どこの子?」

「ドレッセル子爵家当代の娘だ。確かルーネロッテとは同い年のはず」

「殿下グッジョブ」


 ドレッセル子爵家は、プリンスルキウスの母親の実家だ。

 ルーネがドレッセル子爵家の令嬢と仲がいいということになれば、主席執政官閣下とプリンスの仲良しムードをさらに高めることができる。

 少なくとも周囲の人間はそーゆー判断をするだろう。

 近い将来閣下とプリンスが皇帝の座を争ったとしても、帝国内の決定的な断絶を防げる可能性が大きくなるのだ。


「当代子爵の娘とゆーことは、プリンスルキウスから見ると従妹かな?」

「うむ」

「どんな子なの?」

「のんびりした雰囲気の小柄な令嬢だ。ただビアンカは内気らしくてな。友人が少ないということだったので、ルーネロッテにちょうどいいかと思って」

「あたしも会ってみたいな」


 ビアンカちゃんって言うのか。

 帝国第一の実力者であるドミティウス主席執政官閣下の娘であるルーネに、がっついてない令嬢というのは友人としての条件に必要だ。

 しかしそれ以上に、ルーネにとってプラスとなる子じゃないとウ殿下は紹介しようと思わないだろう。

 ビアンカちゃんのどの辺がウ殿下に刺さったのか、興味あるな。


「ああ、ユーラシアが会ってくれるのなら問題はないな。先方も喜ぶだろう」

「何か含みのある言い方だね?」

「変わった趣味を持っているという話だったのだ。恥ずかしがって内容については教えてくれなかったが」


 ほう、仲良くなって聞き出せってことだな?

 面白ポイントが増えた。


「ユーラシアさん。ビアンカさんのところへ遊びに行きませんか?」

「ぜひ行きたいな。こっちから押しかけて構わないよね?」


 とゆーか皇宮に呼びつけるなんて向こうも気重だろ。

 あたしがいればルーネも護衛いらないし。


「明日どう? リリー迎えにこっち来るから、午前中にでも」

「すまん、話すのが遅れたが、ユーラシアは施政館に呼ばれていたぞ。可能なら明日一人で来てくれと」

「一人で来てくれ? 何の用だろ?」

「閣僚人事がどうのという話だった。ユーラシアにも役が回るということではないのか?」

「お給料をくれちゃう寸法か」


 新聞記者トリオから、非常勤の施政館臨時顧問就任があるかもって話は聞いたな。

 でも人事のためにわざわざ一人で来いって、ちょっと違和感がある。

 ルーネにも聞かせられない話ってことだもんな。

 とすると……ははあ、遺書に感付いたな?


「じゃ、仕方ない。明日の午前中は施政館だな。明後日はあたしガータン行きの予定があるんだ。三日後の午前中どう?」

「わかりました。ビアンカさんにはそう連絡しておきますね」


 ウキウキのルーネ。

 あたしも楽しみだ。


「ニライちゃん寝ちゃったか。伯爵来るまでよろしく頼むね。よーし、帰るぞー!」

お父ちゃん閣下が陛下の遺書に気付いたということになると、ちょっと面白い。

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