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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1622/2453

第1622話:皇妃様が強欲?

「札取りゲームだよ。あたしの弟分達が中心になって開発したんだ」


 帝国の皆さんが興味津々だ。

 これ帝国にも輸出されてるんだけどな?

 やっぱ購入するのは庶民層だろうから、お貴族様は知らないのか。


「これは……絵札と字が対応しているのじゃな?」

「こうしとけば、何の絵かわかれば字も覚えられるでしょ?」

「なるほど。傑作じゃ」

「ニライちゃんにも一つあげようね」

「ありがとうぞなもし!」


 ニライちゃんは読み書き覚えるのこれからだろうから、十分楽しめると思うよ。

 あれ、ノルトマンさんが真剣に見とるがな。

 識字率向上について、思うところあるだろうか?


「これガリアに持ってって王様に見せたら、乗ってくれてさ。ガリアでも生産することになったんだ。しかも子供が八歳になったら無償で与えるという案まで出てるんだって」

「ほお? そりゃ大したもんじゃねえか」

「つまりガリアでは国策として子供に教育を与えるということかの?」

「そうそう。識字率の向上はガリアでも重要な課題らしくてさ。特にガリアは森林国だから、紙が売れると嬉しいんだよね。やっぱ読み書きできると本が売れる素地ができるじゃん? 本が売れれば紙の需要も増えるから」

「ふむう」

「何にもしてないのは帝国だけだぞ?」

「どうにかせえ!」


 ここで焦るのはわかる。

 どうにかするべき。


「あたしはドーラ人だとゆーのに。しかも札取りゲームを紹介してるじゃん。あたしのやれることは目一杯やっとるわ」

「う、うむ。ユーラシアはよくやっておるが……」

「帝国のことは帝国人がやってよ。本当は識字率を上げようなんて、国がどうにかせにゃいかんことだわ。でも政府が動かないなら、ヴィクトリアさんも働いて」

「何をすればいいのじゃ?」

「本に注目させよう。本が売れる環境作りから始めないと。フィフィの本を帝国で発売する前に一冊提供するから、読んで面白かったらガンガン宣伝してよ。有名人が宣伝してくれると売れ行きが違うからさ」

「うむ、任せよ!」


 プリンスルキウスとパウリーネさんに続き、推薦してくれそーな人ゲット。

 それにしてもヴィクトリアさん、実にコントロールしやすい人だなあ。

 押す方向に素直に転がってくれるわ。

 イシュトバーンさん笑ってるやん。


「飯ができたぜ」

「やたっ! いただきまーす!」


          ◇


「ごちそーさまっ! おいしかった! もー入んない!」

「大満足だぬ!」


 よしよし、ヴィルいい子。

 ヴィクトリアさんが唸るように言う。


「……素晴らしい。これほどの美味をドーラで味わえるとは」

「気に入ってもらえてよかったぜ」

「この魔物肉は、ブタによく似た肉質なんだって」

「ブタ……古の高級肉か」

「まだどうなるかわかんないんだけどさ。家畜ブタはある種の魔物を飼い馴らしたものなんだそーな。ひょっとすると家畜ブタも再現できるかもしれないの。うまくいったら帝国でも増やしてよ」

「ぜひ我が領で導入したい!」


 お? ノルトマンさんは一生懸命だなあ。

 ライナー君もお父ちゃんの産業育成に熱心なところを見習ってください。


「構わないけど、多分特産品にはなんないぞ?」

「どういうことです?」

「家畜化に成功しさえすれば、大体何でも食べるし、育てるの簡単なんじゃないかと思われるんだよね」


 バエちゃんの言ってるニュアンスからするとだが。


「元々のブタの育成者がルーツを秘密にしてて、数も少なかったから高級品扱いだったっぽい」

「普及して誰でも食べられるような肉になると?」

「あたしはそう思う」

「し、しかし今日のこの肉は大変な美味じゃったぞ? これが普及品などとはとても……」

「魔物でも同じなんだけど、エサで肉質が変わるの。よっぽどいいエサを食べさせて厳選して育てれば今日の肉みたいな味になっても、普及品じゃそうはいかない。具体的に言うと、植物質の木の実みたいなものばっかり食べさせてると肉質はよくなるだろうね」

「ふむ……」

「なるほど、エサか……」


 考え込むヴィクトリアさんとノルトマンさん。

 お肉好きだなあ。

 ブタが再現できたら、低価格のお肉を生産できると考えた方がいいんじゃないかと思うよ。

 

 ニライちゃんが嬉しそうに言う。


「こんなおいしいたまごははじめてぞなもし」

「でしょ? これ皇妃様も大好きなんだ」


 あえて皇妃様の話題を突っ込んでやった。

 ヴィクトリアさんと皇妃様の確執はどの程度だか、生の情報が欲しい。

 ルーネとノルトマンさんの顔が緊張の色を帯びる一方、イシュトバーンさんと新聞記者トリオは好奇の色を滲ませる。


「カレンシーか。ふん」


 あれ、大した反応じゃないな。

 もっと切り込んでも平気そうだが……。


「リリーがヴィクトリアさんとはあんまり喋んないみたいな話してたけど」

「カレンシーは強欲じゃ。その娘とは話す気にならぬ」


 強欲?

 正妃がどうの皇位継承権がどうのというより、皇妃様を個人的に嫌っているような言い方だ。

 ちょっと意外だな?

 皇妃様嫌われるような人じゃないと思うけど、天然ゆえの粗相でもあったんだろうか?


「変な話してごめんね。ところで今日のスイーツは帝都での対決の時のものだけど、どうだった? グレタさんも食べてるやつ」


 イシュトバーンさんと新聞記者トリオが終いかよ、もっと楽しませろって顔してるけど、ヴィクトリアさんとの距離感ってやつがあるだろーが。

 今のでもギリギリだったわ。


「至高の味わいじゃ。知らない材料があったな。プルプルで半透明の」

「ドーラ近海をナワバリにしてる魚人がある種の海藻から作ってる、寒天というものなんだ。ドーラでは寒天に果汁と砂糖入れて固めた簡単なスイーツを販売しているんだよ。広く受け入れられるようだったら寒天も輸出しようかと思って、増産頼んでるの。多分来年には少しずつ帝国へも輸出できるようになるよ」

「うむうむ」


 ヴィクトリアさんの近くにいるヴィルの様子からして、特にヴィクトリアさんが気分を害している様子はない。

 とゆーことは、また今後も皇妃様について聞く機会はあるな。

 今日は切り上げ時か?


「主殿、馳走になった。大変結構であった」

「皇女様に褒めてもらって嬉しいぜ」

「じゃあ帰ろうか。イシュトバーンさん、じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 あたしが転移の玉を、ヴィルが新しい転移の玉を使いホームへ。

ノルトマンさんは元騎士でしかもしっかり領主じゃん。

ライナー君は父ちゃんを見習え。

やってることというよりも姿勢を、だな。

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