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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1610話:伝説の家畜

 ――――――――――二五六日目。


「青々として実にうまそーだな」

「実際に美味いんだぜ」

「うん、心の底から理解してる」


 今日は凄草株分けの日だ。

 いつものように畑番の精霊カカシ、大悪魔バアルと話をしながらの作業だ。


「うちで実験的な植物の栽培ができてさ。食生活が充実してるのはカカシのおかげだわ。本当に感謝してる」

「改めて言われると照れるぜ」

「この賢くも美しいあたしがありがたがっているのだ。素直に褒められておきなさい」

「すかさず自分上げが入るところは、さすが吾が主である」

「何言ってるんだ、この大悪魔め」


 アハハ、楽しいなあ。


「明日帝国の第一皇女が来るんだ。ハーブが好きらしいから、レモンバーベナと魔境のタイムをあげようかと思って」

「おう、この前エルフからもらってきたレモンバーベナもか」

「エルフであるか」


 そーだ、バアルに一応聞いておくか。


「バアルはエルフと絡みあるの? 洞窟エルフじゃなくて森エルフの方。あんたはどこで何やらかしてるかわからないからなー」

「大物の証拠だぜ」


 アハハと笑い合う。


「森エルフと特に諍いを起こした記憶はないであるな。ヒバリの配下に白いエルフがいた、それくらいの関係である」

「ドワーフとは摩擦があるって言ってたじゃん。エルフとはあんまり絡みがなかったんだ?」

「ドワーフはあの興味深い塔のダンジョンを占有していたからである。またエルフよりドワーフの方がからかい甲斐があるである」

「バアルはドワーフを玩具にしたいタイプか。あたしはエルフもドワーフも、両方からかい甲斐あると思うけど」

「ユーちゃんは大物だぜ」

「吾など足元にも及ばぬである」

「何言ってんだこの大悪魔め。あんたはあたしもからかい甲斐があると思ってるクセに」


 朝から楽しいな。

 今日もいい一日になるに違いない。

 カカシがしみじみと言う。


「この家もかなり有用な植物で埋まってきたよな」

「カカシのおかげだよ。でもまだ後回しにしてる植物も多いんだよなー」

「食べる方が優先になるからであるか?」

「どうしてもね。食べる方でも、育てやすさと効率を特に優先しないと。移民を受け入れるノウハウができて、食べることに困んないぞーってなったら優先順位変えたいけどね」


 うちでは手一杯だ。

 本来ならばドーラで農業試験場を作って、あちこちから集めてきた有用な植物を試作したり品種改良したりして欲しい。

 でもおゼゼのない今のドーラじゃムリなんだよなー。


「ユーちゃん考え過ぎじゃねえか?」

「吾が主は贔屓目なしによくやっているであるぞ?」

「ぶっちゃけ人間の生存できる数ってのは、食料の量で決まるじゃん? 食料が足んなくなると奪い合いの争いになるんだよ。バアルは悪魔だから争い上等、悪感情万歳かもしれないけど、あたしは人間の数を増やしたいんだ」

「そこがわからぬである。吾が主が平和と混乱をともに愛することは理解しているつもりであるが、人口は増えただけ争いが増えるであるぞ?」


 なるほど、バアルの言うことももっともだ。

 が……。


「何か面白いことを考えたり、発明したりする人が出てくるかもしれないからだよ。人間の数だけ可能性が生まれるんだ」

「人口が多い方が大儲けのチャンスが増えるからだろ?」

「大儲けって言葉はいいね。でもぼろ儲けはもっと好きかな」

「吾が主の強欲に納得したである」


 ハハッ、納得されちゃったわ。

 あたしはあたしにとって都合のいい世界を作りたいのだ。


「エルフはワイルドボアっていう魔物の家畜化を進めてくれているんだ。魔物の家畜化って、こっちみたいに魔物除け使ってると難しいじゃん? 期待してるの」

「ふむ、主はブタを知っているであるか?」

「ん? 変わった話題だね。名前だけは知ってるよ」


 かつて帝国で飼育されていたという、有名な伝説の家畜だ。

 元々高級肉として、少数だけ詳細を秘されたまま育てられていたという。

 しかし戦乱で失われてしまい、現在では幻とされている。


「コブタマンなんかはブタに近い肉質だからそーゆー名前がついてるのかな、とは思ってるけど」

「ブタはイノシシの類の魔物を家畜化したものである。ワイルドボアもイノシシの一種であるぞ」

「あれ? 大悪魔らしい、メッチャ使える情報が飛び出てきた気がするぞ?」

「恐縮である」


 家畜とは野生の動物を慣れさせたものだ。

 しかしイノシシの類は全て魔物であり、家畜化しようとは考えないものだったらしい。


「イノシシの魔物の家畜化を思いつき、成功した者がいたのである」

「……つまりワイルドボアの家畜化は、イコールブタの復活?」

「その通りである」

「マジか」

「えらいことじゃねえか!」


 お肉は正義と平和と愛の象徴なので、家畜は増えて欲しい。

 美味い肉質とあればなおのこと。

 あたしはコブタマンを狩れるからお肉には困らないんだが、魔物狩りが一般的じゃないことはもちろんわかってる。

 コブタマンは『永久鉱山』である本の世界に生息してるからいいようなものの、普通の魔物は狩れば減るしな。

 安定供給が難しい。


「ワイルドボアの家畜化には全面協力してやらないといけないな。でも伝説って言われてるくらいだと、育てるの難しいのかな?」

「難しくはないである。丈夫で何でも食べるである」

「そーなの? ワイルドボアは植物の根っこを食べるって聞いたけど?」

「根は年中常に食べられるものだからではないか? 植物の実は好きである。昆虫や獣肉も食べるであるぞ。飼育下のブタは穀物を与えられていたである」

「あれっ? 本当に何でも食べるんだな。となると海の王国で仕入れた魚粉でも良さそう。いや、お肉の味に影響しちゃうか。肉食の動物は不味いって言うし」

「適当に混ぜてやるのがいいんじゃねえか?」


 魚粉に栄養があるのは間違いない。

 最初は飼育ノウハウの確立と邪気を抜いて家畜化すること、数を増やすことが先決だ。

 食味は後回し。


「カカシの考えからすると、植物質のものは何をエサにするのがいいと思う?」

「大悪魔の話を聞く限り、収量の多いものだな。すなわちイモとトウモロコシだぜ」

「よし、わかった! あんた達は優秀だな。ありがとう」

「照れるぜ」

「照れるである」


 何なんだあんた達は。

 可愛いやつらめ。

 いずれにせよ楽しみが増えたぞ?

 まずは朝御飯だ。

この世界でのブタのおさらい。

かつてテルミッツというところで産し、高級肉とされていましたが、帝国内乱の際に滅びてしまいました。

ちなみにテルミッツはホームレス宮廷魔道士エメリッヒさんの出身地です。

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