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第1574話:子ども扱いとは

 ――――――――――二五一日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、精霊使い君、いらっしゃい」


 皇宮にやってきた。

 いつものサボリ土魔法使い近衛兵がニコニコしている。

 とゆーことは、特に変事は起きてないらしい。

 自分がハプニング判定機と化していることは、サボリ君も知るまい。


「あんたはここにいつもいるなあ。実は仕事熱心な気がしてきた」

「だろう? 俺の勤勉さをようやく理解してくれたかと思うと感無量だ」

「気がするだけだからな? 事実とは乖離があるのかもしれない。もっと言うと、あたしが納得してるかはこれまた別の話」


 アハハと笑い合う。


「今日はどうしたんだい?」

「いや、昨日ルーネとタルガ行ってきたから、一応お父ちゃん閣下に報告しとこうかと思って」

「ちょうどよかった。施政館から君に呼び出しがかかってるんだ」

「え?」


 サボリ君がニコニコしてたから油断してたわ。

 何の用だろ?

 心当たりがない。


「特級聖女勲章が完成したんだと。授与するということで」

「ああ、なるほど。認定聖女を崇め奉ってちょうだい」

「というのが表向きの理由」

「裏もあるんだ?」

「ルーネロッテ様が詰め所にいらしているんだ」


 何でだろ?

 遊ぶの控えろってことじゃなかったっけ?


「昨日、ルーネロッテ様に魔物退治させたそうじゃないか」

「……魔物退治と言われりゃ、間違いではないかな。魔物の範疇に入れていいか迷うようなザコだったけど」

「危ないことさせるなと、ドミティウス様がお怒りだそうな」

「ええ? 理不尽だな。お父ちゃん閣下が怒ってるとゆーのに、何であんたはニコニコしてるのよ?」

「君がどうドミティウス様をあしらうのかと楽しみで」

「実に理不尽だな」


 あたしがついてるところでハマサソリ退治なんて、小指の先ほども危なくなんかないわ。

 むしろ毒持ちの魔物を放っとく方が危ないわ。

 過保護もいい加減にしときゃいいのに。

 ルーネの成長が止まっちゃうぞ?


「報告早い方がいいかと思って今来ちゃったけど、考えてみればもう少し遅くてもよかったな。そーすりゃ施政館で昼御飯を食べさせてもらえた」

「余裕だな。ドミティウス様が怖くはないのかい?」

「特には。ルーネが喜んでるなら、いくらでも言い逃れできるし」


 近衛兵詰め所へ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「ユーラシアさん!」

「御主人!」


 飛びついてくるルーネとヴィル。

 何なんだ君達は。

 すっかりパターン化してるけれども。


「ごめんなさい。ついうっかり昨日のハマサソリを風魔法でやっつけたことをお父様に話したら、大変お怒りになってしまって……」

「聞いた聞いた。人間どこに怒髪天スイッチがあるかわからんねえ。笑えてきちゃう」

「ユーラシアさんに申し訳ないです」

「いいんだぞ? ルーネもタルガは楽しかったでしょ?」

「すごく楽しかったです!」

「よしよし、じゃあお父ちゃんが怒ってることなんか気にしないでいいよ。ところで今日これからルーネはやらなきゃいけないことがあるかな?」

「ええと、午後からのヴィクトリア伯母様のお茶会には参加しなさいと言われています」

「じゃ、今はいいのか。施政館行く?」

「行きます!」


 ハハッ、ルーネがいる前でお父ちゃん閣下は怒りゃしないわ。

 施政館へゴー。


          ◇


「大体お父様は私に干渉し過ぎなのです!」

「まー過保護かもしれんけど」

「魔物魔物って大騒ぎして、全然危なくなんかなかったのです!」


 道々話しながら行く。

 これだけプンスカしてるルーネも珍しいなあ。

 おそらく小さい頃からいい子だったに違いないし、お父ちゃん閣下も怒るルーネは見たことないんじゃなかろうか?

 ……閣下がどんな顔してるか楽しみだなニヤニヤ。


「私は社交界デビューも間近なのです! 大人と言ってもいいのです! いつまでも子供扱いすることが……」

「何をもって子供扱いなのか、なんだよね。問題は」

「えっ?」


 あたしの言ってることがわからなそうなルーネ。


「お父ちゃん閣下に何を話したかな?」

「まずタルガに行ったこと。私の中で一番印象に残っていたのがハマサソリでした。風魔法で退治したことを話し始めたところでお父様がカンカンになってしまって……」

「ふーん、一番最初のところだな。他は何も話してないんだ?」

「はい」

「じゃあルーネは怒っていい」

「ですよね!」

「何に対して怒っていいと思う?」

「えっ? ……私を子供扱いしたことですよね?」


 広い意味では正しいんだが。

 ここはルーネの成長のためにも理解させとかなきゃいけないところだな。


「親が子供の身を案じるのは当然だから、魔物退治に関して閣下が腹を立てるのはわかるんだ。しょぼい魔物だわ危なくないわって文句言うのは、ルーネじゃなくて監督者であるあたしの役目」

「そ、そうですか」

「でもルーネだってタルガへ行って、サエラック総督やツェーザル中将に会ってるでしょ? 閣下がルーネに大人の報告能力と観察眼を期待しているなら、タルガ総督府で何があったか聞くべきだったんだよ。そーしなかったのは、タルガを軽視してるかルーネを軽視してるかのどちらか。タルガを軽視するのは為政者としての資質に欠けるし、ルーネを軽視するのは頭の中までお子ちゃまだって言ってるのに等しい。これが怒っていいってことだよ」

「な、なるほど?」


 お父ちゃん閣下が為政者の資質に欠けているわけがない。

 つまり閣下はルーネの言うことに信用を置いていないのだ。

 あたしの言う子供扱いとはこのことだ。


「ちょっとはクールダウンしたかな?」

「クールダウンしたぬよ?」


 ルーネの感情を読み取ったか。

 ちょっと面白い。

 ヴィルが新しい芸風を覚えて段々進化するなあ。


「どうもほとんど話ができてないようだから、ルーネの方から先に謝っておきなさい。すると閣下は当然あたしに矛先向けるじゃん? あたしのターンだな。任務ってわけじゃなかったけど、タルガで聞いたことは知らせておくべきだろうし」

「楽しみなんですか?」

「楽しいねえ。閣下は他人の裏をかこうとしたがるんだよ。するっとすり抜けたり、マジ怒なの躱したりするのは面白いな」


 閣下も楽しいんじゃないだろうか。

 帝国じゃあたし以外、閣下に逆らう人いないだろうからな。

 何はともあれ、施政館にとうちゃーく。

ふんふーん、楽しいイベントだ!

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