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第1570話:トサ様登場

「魔宝玉もこれだけ数が揃ってると、大店に売り込めるな。お嬢ちゃん、ありがとうよ」

「こっちこそぼったくり扱いしてごめんよ。内海の相場知らなかったからさ。ドーラじゃ黄珠の買い取り価格二〇〇ゴールドなんだよね」

「バカ安じゃねえか。ドーラが魔宝玉の本場だってことは知ってたが……」

「ドーラは去年の暮れに帝国から独立して、自由に貿易できるようになったんだ。ちっちゃい国だけど、遊びに来てくれると嬉しいな」

「ハハッ、残念ながら外海には船持ってねえんだ」


 このおっちゃん商船主だったのか。

 案外船主自ら露店やってるケースも割とあるのかな?

 地道な宣伝が発展の基本だ。

 ドーラをよろしく。


「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 さて、軍艦はどこだ?

 マーク青年が言う。


「埠頭の端っこの方ですよ。造船所がありますので」

「商売の場に軍艦いたら邪魔だもんな。見に行こう」


 商港だとゆーことがよくわかる。

 てくてく。

 へー、ここが造船所か。

 資材は帝国本土からも輸入でも入るんだろうな。

 タルガの立地条件はいい。


「一番大きいのが新造艦ですよ。その他の小型船は海兵隊が使用しているものです」

「……思ったより小さい艦だな?」

「小さいですか?」

「あ、ルーネは軍艦をじっくり見たことなかったか。外洋の帝国軍軍艦はもっとデカいよ」


 この新造艦の大きさは飛空艇と同じくらいじゃないかな。


「内海は浅いところ狭いところが外海に比べて多いですからね。外海ほど天候が荒れませんし、船体を大きくする必要性がないんじゃないでしょうか」

「ふーん。大きい方が威圧感はあると思うけどな?」

「従来の大型艦と比べて最高速度は速く、攻撃力や耐久力は変わらないそうですよ」


 なるほど、さすが新型艦だな。

 マーク青年は何も言わないけど、どうせ魔道結界標準装備に決まってるし。

 艦の小型化で乗組員が少なくなると征服目的には使えないだろうけど、タルガ守備にはピッタリだろう。


 内海にはまだ、どこの国のものでもない沿岸が結構あるみたい。

 探検隊の母船としてはよさげな大きさだなあと思う。

 船体が小さければ当然燃費もいいだろうし、外海でもこの型が主流になるかも。


 『訓練生』持ちがうっとりしている。


「格好いいぜ」

「そう? 照れる」

「あんたじゃねえよ! 軍艦だよ! 見ろ、あの機能美を!」

「まー兵器としては大したもんなんだろうけど」


 ルーネが聞いてくる。


「ユーラシアさんはあまり興味がないんですか?」

「武器とか兵器とかはおゼゼを産むものじゃないからね。使い方が難しいじゃん?」

「あんた総督府でも元を取るのって言ってたな。この軍艦使って戦争しろってことか?」

「ちげーよ。あたしは戦争大嫌いだわ。わざわざおゼゼ使ってビンボーになって、人殺して未来を消そうとする行為の何が楽しいかわからん」


 マーク青年とルーネは頷くが、『訓練生』持ちはまだ食い下がってくるつもりらしい。


「でも、じゃあどう軍艦を使えって言うんだ?」

「脅しだよ。抑止力だよ。世の中言うこと聞かないやつはいるからね。ルールを守らせるための最低限の力はしょうがないと思ってる」


 警察とか憲兵とかな。


「ところでお腹減ったね」

「いきなりだな、おい!」

「あたしの腹時計はかなり正確なんだ。おいしい食堂に案内してよ。そのためにタルガに詳しいあんたを連れてきたんだから」

「飯のためなのかよ!」


 さすがのユーラシアさんでも、見ただけじゃおいしい店か不味い店かわからんもん。

 大体しか。

 わざわざタルガなんて遠くに来たのに、ハズレ引くのはかなわん。


「皇女殿下の口を満足させる料理店がいいな」

「ハードル高いな……正門近くじゃなくて、貿易商向けの高級店がいいか」

「だよねえ。客の入りだけじゃ美味い不味いが判断できないと思ったんだ。さっきの魔宝玉取り引きで儲かったから奢るぞー」

「奢るぬ!」

「よっしゃ! ちょいとストリートを戻るぜ」


 うまーい店に心当たりがあるらしい。

 楽しみだな。


「おい、スティーヴ」


 不意に声をかけられる。

 結構な大男で、背中に武器を背負ってるところ見ると辺境開拓民かな。

 羽振りはよさそう。

 二人の子分らしき男を連れてる。


「あっ、トサさん! お久しぶりです」

「おめえ、ドーラに渡ったんじゃなかったのかよ? 可愛い子ちゃん三人も連れやがってよ」

「ルーネ、可愛い子ちゃんだって」

「ありがとうございます!」

「ありがとうぬ!」

「お? おう」


 毒気を抜かれるトサという大男。

 これは面白くなる展開だなニヤニヤ。


「ちょいとわけあって、彼女達のタルガ案内を頼まれたんです」

「ならばタルガの主、トサ様に任せておけよ。じっくり可愛がってやるよ」


 だらしない顔だなあ。

 あんま下品なものはルーネに見せたくないんだけど。


「おっちゃん、タルガの主なんだ?」

「お兄さんと言え。このトサ様はスイープ、サブローとともに、辺境開拓民三羽ガラスと呼ばれた男なんだぜ。二人が去った今、タルガはトサ様の町と言って過言じゃねえ」

「カラスは何羽いてもカラスじゃない?」

「何だと、クソアマ!」


 煽り耐性が低いなあ。

 確かにレベルはスイープのお頭や移民頭サブローさん並みにあるけど、あたしやヴィルがいるのに絡んでくるってどういうことだ?

 油断し過ぎだろ。

 お頭やサブローさんとは、人間としての出来が違うぞ?


「ちょっと付き合えって言ってんだよ!」

「えーと、お断りします。付き合うならもうちょっとハンサムな人がいいです」

「トサ様はハンサムだろうが!」

「チェンジ」

「何だとお!」

「お、おい、謝っちまえよ」

「あたし悪くないじゃん。悪いのはトサ様の顔と性根だぞ?」


 ヒートアップする大男達。

 揉め事を嗅ぎつけて集まるやじ馬。

 ハラハラする『訓練生』持ち。

 すげえ嬉しそうなルーネ。

 そのルーネにくっついてるヴィル。

 完全に空気で員数外マーク青年。

 さあ、盛り上がってまいりました!


「赤コーナー、ドーラの美少女ユーラシア! 拍手!」

「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」

「青コーナー、タルガの主トサ様! 拍手!」

「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」

「武器の使用はなし。相手がまいったするか戦闘不能になるまでの一本勝負だよ。さあ、賭けるなら今の内っ!」


 ハハッ、マジで外野賭けてやがる。

まあトサ様はタルガの主って言われても納得できるだけの器量はあると見た。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流れるように人間お手玉に移行するんですね、わかります 俺はユーちゃんに詳しいんだ
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