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第1566話:お父ちゃん閣下からストップ

 フイィィーンシュパパパッ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」


 今日はタルガ行きの日だ。

 コブタマンの処理をクララに任せ、ルーネを迎えに皇宮へやって来た。

 サボリ土魔法使い近衛兵が言う。


「ルーネロッテ様が悲しんでいるのだ」

「えっ? 何かあったの?」


 楽しい楽しいタルガ行きだぞ?

 いや、本当に楽しいかは知らんけど。


「ここのところずっと君がルーネロッテ様を連れ回していたろう?」

「その入りからすると、お父ちゃん閣下からストップがかかったってこと?」

「御名答」


 今頃何でだ?

 ルーネを遊んでやるのは閣下の意向でもあったのだが。

 あたしがプリンスを推すから付き合うのやめとけってのなら、最初からルーネに構えなんてことになってないしな?


「いや、故なきことではないんだ。ルキウス様パウリーネ様の御結婚以降、ルーネロッテ様は社交界にデビューなさるだろう?」

「らしいねえ。デビューを許してもらったとは聞いた」

「貴族の夫人や令嬢に知り合いを増やしておけという、ドミティウス様のお考えなんだな」

「令息の知り合いを増やしておけじゃないところがニヤニヤできるね」

「社交界は人と知り合ってこそだから」

「そりゃそーだ。もっともな理由だ」


 ルーネの人脈が広がって、あたしに紹介してくれりゃ嬉しいしな。

 むしろどんどん社交にも精を出せって言いたい。


「ドミティウス様から君に、秘密の指令が来ているんだ」

「ルーネに言い聞かせろって?」

「またしても御名答」

「賞品のないクイズはつまらんなあ」


 アハハと笑い合う。

 お父ちゃん閣下ったら、ルーネの貴族方向への人脈が広がることはあたしにもメリットだって気付いたんだな?

 だからあたしからルーネに話せってことになったんだろう。


「もー子供に言うこと聞かせるのなんて親の仕事じゃないか。何であたしを働かせるかな?」

「それドミティウス様に言ってみなよ」

「あたしは言う時は言うぞ? でも閣下に返しきれないほど貸しを押しつけたらどうするつもりか、ひっじょーに興味があるから、今回は言うこと聞いてやるけれども」

「ええ? 言い分が怖い」

「御主人は優しいぬよ?」


 近衛兵詰め所に到着。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「ユーラシア」

「ユーラシアさん!」


 ルーネとヴィルが飛びついてくるいつものパターンだ。

 今日はウルピウス殿下も詰め所にいる。


「ルーネ、メソメソしてどうしたの? 大体の事情は聞いたけど」

「お父様がひどいのです! ユーラシアさんと遊ぶのはやめなさいと言うのです!」

「詰め所へ来た時からこんな感じでな。正直可哀そうだと思う。ルーネロッテは皇宮の外にほとんど知り合いもいないであろうから」


 顰め面のウ殿下が言う。

 ウ殿下も社交界うんぬんの理由は聞いてるだろうに。


「お父ちゃん閣下の言い分はわからんでもないから、言うこと聞いときなさい」

「ユーラシアさんまで同じことを……うっ、うっ……」


 泣かない泣かない。

 落ち着こうか。


「べつにあたしと会うなとか喋るなって言われてるわけじゃないんでしょ?」

「えっ?」


 潤んだ目をパチクリさせるルーネ。


「あたしの予定はお父ちゃん閣下と関わりないから、用があれば来るよ。会えなくなるわけじゃないじゃん」

「そ、そうですね」

「そうだぞ? 社交界デビューに備えて、遊ぶの控えて勉強しろってだけの話だよ。ルーネはデビューも楽しみだったんでしょ?」

「はい!」


 よしよし、笑ってた方が可愛いぞ。


「でも社交も実は心配なのです。私、本当にお友達がいなくて」

「ルーネロッテは教育も家庭教師のみだったと聞いている」

「皇族貴族のお勉強事情はわからんな。家庭教師以外だとどんな方法があるの?」

「高名な学者の私塾や道場で学ぶ貴族や有力者の子弟は多いな。特に男子は多い」


 ははあ、特に男子は将来何になるのでも、知り合いが多い方が有利だしな。


「しかし私塾に女性は多くない。女性は教師を雇う場合が多いが、それにしても歳の近い者数人で教わることがほとんどだ。ルーネロッテは一人だったのだろう?」

「はい」

「過保護にも程があるわ」


 マジで箱入りだったんだな?

 人脈の形成は同時に思惑の交差でもあるから、閣下の心配もわからんではない。

 けど、人間関係構築だってルーネには必要だろうに。


「ルーネロッテにとってユーラシアは、初めての友人らしい友人だ」

「ルーネの友達って改めて言われると嬉しいな」

「嬉しいぬよ?」

「でもあたしじゃ社交界の話はわかんないから、ウ殿下によく聞いておくといいよ」

「予にか? どうして?」

「そりゃ婚約者決まってない皇子なんてモテるの決まってるし。ルーネの友人としてよさそうな子、何人かピックアップしてあげてよ」

「うむ、任せよ」

「ありがとうございます!」


 第二皇子かつ主席執政官であるドミティウスお父ちゃん閣下は大実力者だ。

 娘ルーネに対する溺愛ぶりは結構知られているらしいから、ルーネが不親切にされることなんてあり得ん。

 ルーネの側にいるだけでメリットあるのに、さらにウ殿下に勧められてその覚えが良くなるとなれば、絶対に仲良くしてもらえる。

 きっと楽しいぞ?


「面白い子いたらあたしにも紹介して欲しいな」

「ユーラシアより面白い娘などおらん」

「おらんぬ!」

「ええ? 面白いのジャンルに括られるのは納得いかないなあ。可憐かせめて格好いいのジャンルに入れてよ」


 アハハと笑い合う。


「ユーラシアさんは社交の方は? 騎士爵持ちなんでしょう?」

「いやー。さすがに御夫人御令嬢が集まる会は、ドーラの山ザルには場違いかな。騎士爵持ちの親睦会はフランクだって聞いたから、そっちは機会があったら顔出したいとは思ってる」


 知らない人と知り合う機会とゆーのは結構楽しそうだ。

 帝国の社交シーズン本番は、農閑期の冬だと聞いた。

 集まりも冬に開かれるものなのなんだろうな。


「さて、タルガ行くぞお! 殿下も行く?」

「残念ながらドレッセル子爵家からの使いを待っているところなのだ。ルキウス兄上の結婚式関係だな。もうじき予の手を離れるが、それまでは息を抜けん」

「殿下は偉いねえ。不肖のプリンスルキウスをよろしく」

「ハハッ、また誘ってくれ」

「うん。じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

社交の予定がない時に経験積ませてやるのはいいじゃん、とゆーロジック。

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