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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1543話:『訓練生』の人

 ――――――――――二四七日目。


「フェイさん、おっはよー」

「おはようぬ!」

「来たか、精霊使いユーラシアよ」


 開拓地の移民の中から輸送隊員を選抜するため、JYパーク黄の民のショップへやって来た。


「ユーラシアさん、おはようございます」

「あっ、ビルカじゃん。久しぶり」

「希望者の中からビルカが固有能力持ちを見繕ってくれたのだ」

「ありがたいなー」


 ビルカは赤の民の『鑑定』能力持ちだ。

 あらかじめ人数を絞っていてくれたか。


「いえいえ、これくらい。お手伝いできると嬉しいです」

「経験は絶対にムダになんないよ。カラーズや開拓地でもビルカが『鑑定』持ちとして信頼できるってことが知られてくれば、鑑定士としてやっていけるかもしれない。特に開拓地はどんどん人口増えてくからね」

「はい!」


 むしろ鑑定士を商売として成り立たせるには、ビルカの信用よりも必要なことがある。

 自分の固有能力を知っとくことは重要だ、という意識を皆に持たせることだ。

 フェイさんが言う。


「農業経験のある者以外から選んだ。主に直近の移民で結構希望者がいてな。趣旨を説明して固有能力持ちを選抜した。この七人だ」


 リストを見る。

 ふむふむ、『雷魔法』『火の申し子』『頑強』『スワンプ』『コスモ』『オアシス』『訓練生』か。

 後ろの二つは知らない能力だな。


「『オアシス』は水のありかを探知できる。『訓練生』は基本的な魔法やバトルスキルを覚えていくというものです」

「へー。いいじゃんいいじゃん。特に『訓練生』は戦闘に向いてそう」

「それが……」


 スキルの習得スピードが遅いらしい。

 冒険者ならレベルの低い内に攻撃魔法やバトルスキルを持っていたら、有力なアドバンテージになる。

 でも確かに中級冒険者になってから『ファイアーボール』覚えるのなら微妙だな?

 どうやってそこまでレベル上げるんだってこともある。

 一般人だったらそもそもレベルなんか上がんないから、固有能力持ってない人と変わらん。

 ちょっとクセのある固有能力ではあるけど……。


「まあでも輸送隊隊員クラスまでレベル上げれば『ヒール』も使えるんでしょ? 十分育てる価値ありだよ」

「ふむ、では『訓練生』持ちは採用決定か」

「フェイさんが見て性格に問題ないなら、全員採用でいいんじゃないかな。どうせ今後移民増えるし」


 最低三人採用を考えていたが、今日はエルマやピンクマンの手伝いがない。

 新しい転移の玉を併用するなら七人でもいい。

 クララの『フライ』で運べる人数でもある。

 目が行き届きにくいのは若干心配ではあるが、言い聞かせりゃいいだろ。


「移民なら全員成人なんでしょ? 今の輸送隊、未成年が多いのはいかがなものかと思ってたんだ。成人が増えると、傍から見た信頼性が増すんじゃないかな」

「では全員採用だな。性格は……そうだな。『訓練生』持ちは辺境開拓民の経験が若干あるそうだ」

「えーと、挫折して捻くれてる?」

「少々な。ドーラで心機一転、新しい生活をということのようだが」


 でも移民申請が許可されるくらいの人で、フェイさんが大丈夫と見てるなら平気だろ。


「あっ、来ましたよ」


 一人の黒の民、クロード族長かな? に率いられた七人がやって来た。

 全員男だな。


「クロード族長。引率感謝する」

「いや何。たまには働かないとな」


 やっぱクロードさんだった。

 軽く会釈する。


「こちらがドーラの誇る冒険者ユーラシアだ。本日、諸君らのレベル上げを担当してくれる」

「こんにちはー」

「レベル上げとはどういうことだ?」


 険のある言い方をする移民の一人。

 男性としては比較的小柄で、全くの戦闘素人じゃないけどレベル一〇はないな。

 ははあ、これが件の『訓練生』持ちか。


「輸送隊では当然盗賊や魔物に襲われる危険が考えられる。有事に備えて、あらかじめレベルを上げておこうということだ」

「どうやって?」

「ドーラは魔物が多いんだ。うちのパーティーで魔物を倒すよ。同伴者であるあんた達にも経験値が入ってレベルが上がりまーす」

「……理屈はわかるが……」

「レベル三〇を目標としまーす。一応二時間くらいを予定しといてくださいねー。そんなにかかんないと思うけど」

「ちょっと待て!」


 何だろ?

 あたしも忙しくないわけじゃないんだが。


「二時間でレベル三〇まで上げるというふうに聞こえたが?」

「うん、間違いないよ」

「あり得ねえ!」


 フェイさんとクロードさんが苦笑してら。


「レベル三〇って、よほど恵まれた体格のやつが二〇年魔物狩りして、ようやく到達するかしないかの境地だろ!」

「帝国ではそうらしいけど、ドーラの常し……現実も知って欲しいね」


 体格はあんまり関係ない気はするがな?

 この『訓練生』のおっちゃんは、体格にコンプレックスがあるらしい。


「お前はレベルいくつなんだ!」

「正確にはわかんない。大体一四〇くらい」

「デタラメだ! レベルの上限は九九だ!」


 本当だとゆーのに。

 他の人まで不安そうな表情になってきたじゃないか。

 パッと見であたしの実力がわからないのはともかく、ヤマタノオロチ退治のことを誰も知らないのか。

 今度の移民はかなり田舎の人達なのかな?


「どうすれば信じてもらえるかな?」

「オレと勝負しろ!」

「まー納得するなら構わんけど。フェイさん。棍一本貸してもらえる?」

「一本でいいんだな?」


 まーフェイさんが悪い顔してること。

 棍を『訓練生』持ちに渡す。


「棍があたしに触れたらあんたの勝ち。棍が触れる前にあたしがあんたを持ち上げたらあたしの勝ち。どお?」

「持ち上げる? い、いや、お前に勝ち目がねえだろ!」

「やってみそ?」


 だあーっと打ちかかってきたのを軽く躱してひょいと持ち上げる。


「あいうぃーん!」

「ば、バカな!」

「バカじゃないわ。満足するまで何度でもどーぞ」


 振り回そうが投げようがムダだとゆーのに。

 でもこういうのは納得するまでやらせないとな。

 魔境で勝手なことされると、命の危険が危ないわ。


「はあはあ……」

「疲れちゃった? もういいかな? あたしも午後は行きたいところがあるんで、レベル上げは午前中で終えたいんだ」

「あ、あんたの力はようくわかった」


 二人称が『お前』から『あんた』に変わったな。

 いいだろう。


「じゃ、ちょっと休憩したらレベル上げに行くよー」

適度な鼻っ柱は折っとくと、あとが従順の法則。

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