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第1539話:ルーネとアーベントロート公爵家邸へ

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」


 皇宮にやって来た。

 いつものサボリ土魔法使い近衛兵が言う。


「ここのところよく来るじゃないか」

「ルーネを甘やかし過ぎかなあ? どうしても来なきゃいけない用があるわけじゃないんだけどさ」

「ルーネロッテ様が楽しそうなのは、見ていて微笑ましいよ。ドミティウス様の意向にも沿っているんだろう?」

「お父ちゃん閣下も、ルーネがニコニコしてるのは嬉しいみたいだね。あたしがルーネ連れ回すの、最初嫌がってたクセに」


 今でも一〇〇%歓迎してるわけじゃなさそうだけどな?

 ルーネはできる子なので、成長にはなるべく力を貸してやりたい聖女なあたしの思い。

 とりあえず近衛兵詰め所へ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシアさん!」


 お土産のお肉を近衛兵に渡す前に、ルーネが飛びついてきた。

 これもお馴染みになりつつある。

 あれ、今日はヴィルがルーネに飛びついてる。

 よっぽどルーネが御機嫌らしい。

 面白いなあ。


 近衛兵長さんが言う。


「施政館から連絡がありますぞ」

「施政館から? 何だろ?」

「ツェーザル中将が本日タルガに着任とのことです。同時に新造艦も就役です」


 テテュス内海に面する帝国の植民地タルガ。

 不測の事態に備えて中将が赴任するとは聞いていた。

 サラセニアとの貿易がどうなるのかも気になる、あたしの中で現在注目を集めている場所だ。

 お父ちゃん閣下が好きって言ってたくらいの町だしな。


「タルガ総督ってのは文官なのかな?」

「さようですな。植民地総督は例外なく文官ですぞ」

「上下関係っていうか、命令系統はどうなるの? タルガにも衛兵だか常備兵だかはいるんでしょ?」

「総督府の衛兵と海兵隊がおりますな。制度上、植民地における最高責任者は総督ですが、おそらく軍権は一時的にツェーザル中将に移管されるものと思われます」

「ふんふん、なるほど」


 つまりツェーザル中将がタルガにいる内は、紛争があれば中将が出張るってことか。

 何か起きても、中将が対応するなら問題ないな。


「近衛兵長さんはタルガ行ったことある?」

「出張で何度か」

「面白いところだって聞いたんだ。近衛兵長さんの感想は?」

「面白いと言えば面白いですが……」


 難しい顔をする近衛兵長さん。

 チラッとルーネを見たな?

 ルーネはタルガ行ったことないはず。


「治安がよろしい地とは言えませぬな。港近くは商人の町ですが、正門あたりは流れ者と荒くれ者、無法者が往来しています。生き馬の目を抜くというか、帝都人にとってはズルく思える町です」

「そーか。ルーネ、今度行ってみようか」

「いいんですか! 嬉しいです!」

「ユーラシア殿……」

「あたしがいれば平気だぞ? ルーネもお上品なところばかりじゃつまんないだろうし」


 あたしがこう言いだすことがわかってたから、近衛兵長さんも治安どうこうの話を始めたんだろうけど。

 ルーネにもいろんな経験をさせたいからね。

 お父ちゃん閣下はタルガを自由で闊達な雰囲気の町で好きだって言ってたけど、多分護衛がたくさんいたからだ。

 護衛が少ないともっと勉強になるぞニヤニヤ。


「何日かあとで都合つけてタルガ行くことにするからね」

「わかりました。あの、今日はラグランドへ行くんですよね?」


 うっかり公爵一行がラグランドに到着する日だ。

 もちろんラグランドへ遊びに行く手もあるんだが……。


「帝国の皇子と婚約したオードリー姫の帰還じゃん? 結構な騒ぎになってると思うんだ。リキニウスちゃんのお母ちゃんも疲れちゃうと思うから、明日行こうよ」

「あっ、そうですね。考えが足りませんでした」


 あたし達が行くと焦点がぼやけるかもしれない。

 せっかくだからオードリー帰還の住民インパクトが大きい方がいい。

 そのオードリーがお爺様と慕ううっかり公爵の印象もよくなり、反帝国感情がちょっとでも薄れることを期待する。


「だから今日は違う方の公爵んとこ行こう」


 首をかしげるルーネ。


「違う方の公爵、と言いますと?」

「フリードリヒ公爵だよ。領地のパッフェルから、帝都に戻ってるんだ。午前中に。ルーネ連れて遊びに行くねって言ってあるから、歓迎してくれると思う」

「ありがとうございます! 楽しみです!」

「じゃ、行こうか」

「行ってくるぬ!」


          ◇


「ルキウス叔父様が結婚ですか? 聞いています。お相手はフリードリヒ公爵長女のパウリーネ様とか」


 アーベントロート公爵家邸はすぐ近くだ。

 ヴィルを肩車し、軽くおしゃべりしながら行く。


「そうそう。結婚式と披露のパレード。今月の半ばだって言ってたけど、詳しい日付知らないんだよね」

「一七日ぬよ?」

「そうなんだ? ありがとう、ヴィル。でもあたしよりヴィルの方が詳しいってどういうことだ」


 もちろんヴィルが悪魔にも拘わらずキューピッド活動をしているからだ。

 ヴィル偉い。


「あれ? でもここんとこパウリーネさん移動中だったじゃん」

「だから一日一往復だけ、手紙をやり取りしてたんだぬ」

「ははあ、移動中なのにヴィルは御苦労だったね」


 まったくラブラブなんだからニヤニヤ。


「ルーネはフリードリヒ公爵やパウリーネさんと会ったことはあるんだったっけ?」

「もちろん存じておりますが、実は正式の場でお目もじしたことはないと思います」

「非公式の場で少しだけってことか。デビュー前の立場って、案外不便だね」


 いかに箱入りとは言っても、有力貴族には正式に顔見せくらいしときゃいいのにな?

 嫁に出すことも含みにして。

 お父ちゃん閣下は、次期皇帝を狙うにしては詰めが甘いとゆーか、それだけルーネラブなんだろうけど。


「でも社交界デビューを許してもらいましたから」

「ごめんよ。本当はお父ちゃん閣下の方から公爵に紹介してもらうべきだったのにねえ」

「いえ、デビューの練習として、ユーラシアさんの連れていって下さる有力者の方々とは顔を繋いでおきなさいと、父に言われているんです」

「なるほど?」


 ムダな人間と付き合うほど、あたしが非合理じゃないと考えてるからだな?

 閣下だって自派閥以外の人と会ってる時間は取りづらいだろうし、ルーネで伝手ができると万歳ってことか。

 なかなかやるなあ。


「さて、着いた。こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

今んとこ魔物退治以外は大体どこへルーネを連れていってもよさそーな感じになってきた。

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