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第1523話:魔境にて、新『アトラスの冒険者』の話をする

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 昼食後に魔境へやって来た。

 腹ごなしであり、心の洗濯であり、おゼゼ稼ぎでもある。

 魔境はいいところだ。

 あんまり他人が来ない場所でもあるので、内緒で職員に知ってもらいたい話はオニオンさんに話しとくのがいい。

 他の職員にも伝えてくれるし。


「新『アトラスの冒険者』の件、少し話が進んだよ。お試しでドワーフに仕事出してみるって言ってたじゃん?」

「ええ」

「新『アトラスの冒険者』用転移の玉プロトタイプができ上ってきてさ。デス爺の合格も出た」

「ドワーフの仕事に信頼性があるということですね?」

「そゆこと。で、転移の玉とホーム用のビーコン五〇セットを作ってもらおうぜってことになった。デス爺も張り切ってくれてるんだ。五日後までに設計図書くって言ってる」

「順調ですねえ」

「実にありがたいことだねえ。転移の玉プロトタイプは塔の村の冒険者、皇女リリーと火魔法使いレイカに渡してあるよ。ギルドで誰かと仲良くなったら魔境にも来るかもしれない。もし来るようならよろしくね」

「わかりました。楽しみにしております」


 エル、レイカ、リリーはレベルも四〇近い。

 パーティーならオーガ帯で十分通用する。

 塔のダンジョンより、回復魔法陣のあるここ魔境トレーニングエリアの方がレベルを上げやすいとは思う。


 もっともあたしは塔のダンジョンの事情をよく知らんからな?

 地下の探索を優先したいかもしれない。

 まあ新『アトラスの冒険者』に賛同してもらうことが重要なので、個々の活動はやりたいことやってりゃいいと思うけれども。


 オニオンさんが言う。


「飽魚の月末、『アトラスの冒険者』の廃止までには間に合う見込みですか?」

「転移の玉も転移石碑も必要数が多いからどうだろうな? ドワーフも気分屋っぽいところがあるんだよね。最初から全員に転移の玉が行き渡るかは微妙だけど、かなりのところまではやれると思ってる」

「安心しました」


 あれ、あんまり安心できる内容じゃなかったと思うけど?

 お肉だぞーって発破かければ、ドワーフは一生懸命仕事してくれるだろうとは思っている。

 しかしオニオンさんがニコニコしているな?

 とゆーことは?


「……オニオンさん、新居の方はどーなってるかな?」

「はい。ギルドからややレイノス寄りの位置に決めまして。大工さんにも依頼しました」

「よかったねえ。新居が完成し次第引っ越しかな?」

「そうなりますね」


 うんうん、こっちもスムーズに進んでいるようだニヤニヤ。


「庭は広めに確保しといた方がいいと思うよ」

「えっ? 何故です?」

「レイノスは将来拡張されると思うんだよね」


 現在のレイノスは歪だ。

 初期の植民地時代の港町をずっと引きずっていて、東西に設けられた壁と門をそのままに、壁のなかった北に住宅地が広がった形になっている。


「現在のレイノスの人口が約五万人といったところですか」

「ドーラを帝国と肩を並べる大国にしたいんだ。首都レイノスの人口が五万ではね」


 何だかんだで人口は重要なのだ。

 将来首都はアルハーン平原に置かれるかもしれないけど、レイノスも人口数十万人の規模になって欲しい。


「大体ドーラが移民でどんどん大きくなるのに、レイノスが昔のままっておかしいよ。事務局も美術館も作れやしない」

「事務局? 美術館?」

「あ、それはこっちの話。あたしの夢」


 統一通貨の国際組織の事務局とバアル美術館だ。

 レイノスに置きたいけど今のままでは場所がない。


「レイノスが大きくなるとすると、東西になんだよね」

「現在のギルドの位置くらいまではレイノスに含まれることになると?」

「十分にありそうな話じゃない? 西はギルドや今魚人と海産物の取り引きしてる天然の港、あの辺まではレイノスである方が、安全で便利なんだよね」

「ユーラシアさんの構想には夢がありますねえ」

「オニオンさんの新居の敷地だって、不当に広いとかじゃなければまんま拡張レイノスで認められると思うからさ。しっかり囲っておきなよ」

「なるほど、わかりました」


 レイノスは土地代高いって言うから。

 とゆーかレイノスの拡張とその土地を売って政府資産に組み入れることは、オルムスさんあたりが密かに考えてそう。


「ユーラシアさんはいつも活動的ですねえ」

「働き者だからね。でもどーゆーわけか、働いてるとおゼゼが少なくなっちゃうんだよ。おゼゼを稼ぐために魔境へ遊びに来るって何でだろ?」


 仕事と遊びの境界線がおかしい。


「サクラさんがユーラシアさんの話をする時は、とても楽しそうなんです」

「知らないところで話題になってるよ。人気者だからかな?」

「羨ましいそうで」

「あたしが?」


 リリーにも羨ましいみたいなこと言われたな。

 あたしだってリリーの身分やおっぱいさんのおっぱいは羨ましいんだが。

 自分のもってないものを欲しくなっちゃうだけじゃないかな。


「サクラさんは元々冒険者になりたかったそうなんですよ」

「冒険者? おっぱいのムダ使いじゃん」

「ムダなおっぱいだぬ!」


 笑い。

 おっぱいはムダじゃないわ。

 むしろ一番重要だわ。

 しかしおっぱいさんが冒険者になりたかったというのは初耳だ。

 いや、冒険者に縁のあるカトマス出身だし、弟のモズ君も冒険者志望だったし、さして意外でもないのか?


「自分は冒険者向きではなかったけれど、縁のある仕事ということで、ドリフターズギルドの職員への就職を選んだそうですよ」

「へー。でもピッタリだよねえ」


 仕事が的確なのもあるけど、おっぱいさんが依頼受付所にいると華があるしな。


「ユーラシアさんには自分の夢を重ねているんだそうです。世界に羽ばたく冒険者になってもらいたいので、なるべく海外のクエストを回していると言っていました」

「あたしが感謝してるって言っといてよ。すごく楽しめてるんだ」


 やっぱあたしんとこへ面白いクエストが振られるのは、おっぱいさんの考えがあったんだな。

 廃止まであと四ヶ月になっちゃったけど、また外国のクエストを振ってくれるんだろうか?


「さーて、行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びふよふよいい子出撃。

おっぱい冒険者(笑)。

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