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第1522話:新『アトラスの冒険者』の準備が始動する

 フイィィーンシュパパパッ。

 エメリッヒさんに使ってもらう魔力吸い上げ用の黒曜石を灰の民の村に置き、塔の村にやって来た。

 魔力吸い上げだけに使うなら、加工しなくたっていいだろうから。


「さーて、デス爺はどこかな?」

「あそこだぬ! ハゲ散らかしてるぬ!」

「ハゲ散らかしてるって。奇麗に髪の毛が処分対象になってるから、散らかってはいなくない? いや、究極的にハゲ散らかしてるってことなのかな?」


 アハハ、どっちでもいいや。

 レイカパーティーもいるじゃん。

 ちょうどいい。

 これ以上考えられないくらいハゲ散らかしてるデス爺のところへ。


「おーい、じっちゃーん! レイカ!」

「ユーラシアじゃないか!」

「やれやれ、いつも騒々しいのう」

「ドワーフに頼んでた転移の玉ができ上ってきたんだ」

「ふむ。見せてみよ」


 二つの転移の玉をデス爺に渡す。

 表面に掘りつけられた文様をじっと見つめている。

 ドキドキ。


「……ふむ。問題なく機能するの」

「やたっ! レイカ、一個あげる」


 何困惑してるのよ?


「ありがたいが……これはエルが持ってる転移装置と同じものなのだろう?」

「大体。エルのと違って、こっちは塔の村と『アトラスの冒険者』のドリフターズギルドの二ヶ所を転移先に設定してあるよ」

「貴重なものじゃないか。もらってしまっていいのか?」


 遠慮するんじゃないよ。

 内緒話モード発動。


「実は『アトラスの冒険者』が廃止されるんだ」

「「「えっ?」」」


 ジンが聞いてくる。


「本当ですか?」

「リリーにはチラッと話してあるんだけど……あっ、リリー!」


 タイミングバッチリ。

 まあリリーがそろそろ起きてくるからこの時間に来ているのだが。


「ユーラシア、どうしたのだ?」

「塔の村とギルドに飛べる転移の玉が完成したんだよ。リリーの分ね」

「おお、すまんな……『アトラスの冒険者』廃止の件か?」

「ちょうどその話してたんだ。リリーも混ざって」

「うむ」


 リリーと黒服の顔が引き締まる。


「今年の飽魚の月末で『アトラスの冒険者』は廃止される。あと四ヶ月だね。このことは『アトラスの冒険者』の職員は知ってるんだけど、まだ冒険者は誰も知らないんだ。言わないでね」


 全員が頷く。


「代替組織を作るという話であったな。だからユーラシアが動いておるのじゃろ?」

「働き者でしょ? 新『アトラスの冒険者』を組織する。現在の『アトラスの冒険者』職員は皆協力してくれるって。冒険者メンバーも参加してくれるに決まってるから、転移と運転資金の問題がクリアできればいいんだ」

「この転移の玉は?」


 新『アトラスの冒険者』の肝の部分だよ。


「要するにじっちゃんの設計で転移の玉と転移網を作りたいんだ。黒妖石の工作は器用なドワーフに任せるんだけど、仕事っぷりがわかんないから、試しに作ってもらうことにしたの。じっちゃんの合格が出たから使ってみてね」

「我やレイカも新『アトラスの冒険者』に参加せいということだな?」

「そゆこと。『アトラスの冒険者』は、ドーラの犯罪に対処する権限を与えられているの。でもこれからドーラの人口はどんどん増えていくのに、今の『アトラスの冒険者』メンバーじゃ少ないからさ。ぜひ協力して欲しいんだ」

「ユーラシアにどう礼をすればいいんだ?」

「あたしの勝手でやってることだからいらないよ」


 タダで力を貸せって言ってるんだから、本来あたしはお願いする側だわ。

 レイカも乗り気になってきたね。


「何をすればいいんだ? 現在でも『アトラスの冒険者』の行動規範のマニュアルがあるんだろう?」

「えっ? 行動規範のマニュアル?」


 聞き慣れないワードですね。


「犯罪者取締りの任務にも当たっているんだろう? ああした場合にこう罰せよとか。基準がないはずがない」

「……知らない。言われてみると、あたし実際に罰したことないな? 魔法の葉青汁飲ませるぞードラゴンのエサにするぞーで解決しちゃう」

「何だ、ドラゴンのエサって」


 デス爺がふうとため息を吐く。


「ユーラシアが規範なぞ気にしているわけがないじゃろ」

「そうだな」「そうですね」「そうだぬ!」

「ええ? ひどいなー」


 皆に不審げな目を向けられた。

 実際に知らなかったから何も言えんけど。


「素行の悪い者に睨みを利かせていればいいのだろ? それ以外は特に、今までの冒険者生活と変わることはない」

「うん。塔の村近辺に睨み利かせてくれれば十分。塔のダンジョン以外で手に入れたアイテムは、ギルドを通して売却してくれると新『アトラスの冒険者』の運営の助けにはなるかな」


 まあ塔の村の経営もあるから、こっちの冒険者が入手したアイテムは塔の村で売ればいいのだ。


「アバウトでいいのだな?」

「うん、適当でいい。リリーの得意なやつ」

「何だとお!」


 怒るな。

 リリーあんた『冷静』持ちだろ。


「エルはどうするんだ?」

「もちろんエル含め、信頼できる冒険者には参加してもらいたい。ただ優先順位ってものがあるじゃん? 現在の『アトラスの冒険者』が使ってる転移の玉は、全て使えなくなるんだ。そっちのフォローが先で、とにかく新組織を立ち上げないとね。既に転移の玉を持ってるエルはどうしても後回しになる」

「転移の玉はいくつ必要じゃ?」

「えーと冒険者、職員、嘱託の店主、ギルド指定工房その他で……四〇個強かな。五〇個あれば当面は十分足りる」

「ふむ、五〇個か。予想通りの数じゃな。自分のホームとギルドに転移できればいいのじゃな?」

「うん。設計お願いしまーす」


 プロトタイプは両方とも塔の村とギルドに飛べるという、同じものが二つだった。

 しかしこれからの転移の玉は、それぞれのホーム用ビーコンに転移先が別々に設定されていなければならない。

 つまり転移の玉とビーコンを一組として五〇枚の設計書が必要だ。


「五日後には書き終わる」

「随分早いね?」

「数が数じゃ。石工の方にどれだけ時間が取られるかわからぬからの。転移石碑もカラーズ、レイノス、カトマス、塔の村行きの基本設計は既にある。時間があったらアレクとエメリッヒ殿を寄越してくれ」

「わかった。伝えとくね」


 デス爺がやる気になってくれている。

 ありがたいな。

 よし、あとはドワーフ次第だわ。


「じゃ、あたし帰る。バーイ!」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

あたしは未来への投資は惜しまないタイプだ。

何故ならあたしの望む世界を作るためだから。

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