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第1519話:フワフワした結論

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「今日のメインのお仕事は午前中で終わったんだ。ちょっと時間がいつまでかかるかわかんなかったから、午後は予定入れてなかったの」

『変わった入りだな。ということは、午後トラブルがあったわけか』

「ないよ! そーしょっちゅうトラブルに巻き込まれてたまるか!」


 いやでも割とトラブルには遭遇する気がするな?

 あたしの人生を彩る愉快なエンターテインメントに対して、トラブルは失礼か。


「結局午後は魔境に行ってきたんだ」

『いつも通りだね。結構だけれども』

「他にやるべきこともあったんだけどさ。うちの子達とのふれあいも大事じゃん?」

『ふれあいで魔境というのが全くわからない』


 最近鋭くなってきたかと思えば、肝心なところを理解していないサイナスさん。

 あたしの行動範囲が広くなってる分、うちの子達と遊べる機会が魔境くらいになっちゃってるのだよ。


「今日ラグランドの王女オードリーとうっかり公爵達が、帝国からラグランドに向けて旅立ってるの。あたしは行かなかったんだけど」

『使者ではないんだろう? 公的な仕事とは関係がない?』

「うん。ただのバカンス」

『じゃあ付き合わなくてもいいじゃないか』

「まーね。でもうっかり公爵はあたしが認めるほどのトラブルメーカーなんだよ。面白いこともありそうだから、完全スルーはできないとゆーか」

『でも魔境を優先した。つまりユーラシアの面白センサーに引っかかってこないから、今日はスルーしたんだな?』

「あたしの感性を的確に説明してくれるなあ。大した根拠もなく決めたことにガッチリ理由付けしてくれると、今夜も安心して眠れるよ」

『君の安眠にオレの言葉が全く影響しないことは知っている』


 アハハと笑い合う。

 サイナスさんもこういうやり取りは楽しいだろ。


「船旅も二日目は退屈しそうだからね。明日は様子見に行ってこようかと。塔の村にも行きたかったんだけど、これも明日だな」

『今日の午前中は何してたんだい?』

「ガリアの外務大臣を帝国の施政館に連れていってたんだ」

『えっ? ああ、昨日の話の続きか。大仕事じゃないか』

「一応今日までは秘密にしといた方がよさそーだったから、昨日は言えなかったけど」

『帝国の植民地タルガとガリアの子分サラセニアとの間で貿易するという話だな? 君昨日そう言ってたじゃないか』

「昨日の段階ではただのあたしのアイデアだもん。今日タルガ~サラセニア間の直接貿易が実現することが決まったってこと。帝国とガリアがあたしのアイデアに乗っかってきたんだよ」


 こんなドーラの田舎で言った言わないのけじめはどうでもいい気はするが。


『ええ? ユーラシアが世界を動かしてるみたいだな』

「本当にねえ。美少女の掌で踊る世界。躍らせるあたし」

『珍しく詩的だね』

「そお?」

『君なら美少女パワーでやりたい放題ゴリ押す世界とか言いそうだから』

「……あれっ? そっちの世界の方があたし好みだな」


 こういうとこサイナスさんはさすが。


『テテュス内海情勢はどういう展開が予想されるんだ? 帝国&ガリアVSアンヘルモーセンの対決になるのか?』

「単純にそーゆー図式にはなんないな。帝国はガリアと直接貿易を始めるけど、天使国アンヘルモーセンと手を切るわけじゃないんだ。しれっと今まで通りの関係を続けようとすると思う」

『ほう?』


 帝国とタルガにとっては、貿易相手がアンヘルモーセンとサラセニアの二ヶ国になった方が得だから。


「一方でサラセニアは天使国に貿易制限をチラつかせられてる手前、ガリア&サラセニアが今まで通り天使国と付き合うことはないな」

『帝国&タルガとの貿易に偏る?』

「多分。でも長い目で見ればあちこちと付き合った方が得じゃん? 天使国が詫び入れてくるなら、許して貿易再開でいいと思うけど……」

『懸念材料があると?』

「そもそも何で天使国がサラセニアを標的にするのか、肝心の部分がわかんない」

『現状だと、サラセニアは経済的にガリアよりもアンヘルモーセンに頼らざるを得ないんだろう? サラセニアが標的にされてると言うより、アンヘルモーセンベッタリの方が自然だからなんじゃないか?』

「むーん?」


 サイナスさんの言うことは一理ある。

 アンヘルモーセンは全方向アタックしている?

 他の国にも同じように?


 でもバアルやガルちゃんの言い方だと、サラセニアがピンポイントで狙われてるようだしな。

 アンヘルモーセンが内海の覇者だと言っても、人口で他国にそう勝ってるわけじゃない。

 攻略するんでも常識で考えて一国ずつが基本だろ。


 じゃあ、たまたまサラセニアがターゲットにしやすい環境だったからに過ぎないのか?

 でもサラセニアのバックに大国ガリアがいることなんかわかりきってるし。

 年若のガリア王が舐められてるから?

 いやいや、一目見れば王様はやるやつだってわかるだろ。

 商業国なのに人を見る目がないわきゃない。

 とすると……。


「……どーもサラセニアにはあたしの知らない、てゆーか天使国以外には知られていない重大な事実がありそう。だから狙われるんだと見た」

『またとりあえずフラグを立てておく作戦か』

「作戦ではないとゆーのに。あたしの灰色の脳細胞が導き出したフワフワした結論だとゆーのに」

『自分でフワフワしたって言ってるからな?』


 ほぼカンなのはしょうがない。

 わかんないことが多過ぎるもんな。


「カラーズと開拓地はどう? 変わったことあった?」

『エメリッヒ氏が地中から魔力を集める技術に興味があるらしくてな。転移石碑を見て頷いていたが、自分でも欲しいらしい』

「自由に使える魔力は、エメリッヒさん欲しがるだろうな。気持ち良く研究進めてもらわないといけない。黒妖石のでかいやつはあるから、明日中にそっち持ってくよ。でも『スライムスキン』の手持ちがないや」

『アレクが『スライムスキン』はあると言っていたぞ?』


 ならバッチリだな。

 エメリッヒさんにも『スライムスキン』の折り方覚えてもらお。


「じゃ、サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は天使っぽい悪魔レダをギルドに紹介か。

よーするにあたしの優れた洞察力とカンが、アンヘルモーセンは怪しいと告げている。

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