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第1509話:ライナー君も連れて

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」


 ドワーフの集落で完成した転移の玉とお肉を交換したあと、皇宮へやって来た。

 ルーネをドワーフに会わせることもチラッと考えてはいた。

 が、結局帝国人に転移の玉を自由に作れるってことを知らせるのはまだ早いと判断したのだ。

 ごめんよ、ルーネ。


 サボリ土魔法使い近衛兵が言う。


「ルーネロッテ様がはしゃいでいるんだ。今からガリアへ行くんだって?」

「うん、行く」


 おいこらルーネ。

 ガリアへ行くのは一応秘密の任務だとゆーのに。

 しょうがないなあ。

 まーあたし達がガリアに行くのはいつも遊びだから、誰も何とも思わないだろうけれども。


「ちょっと変わった魔物肉狩ってきたんだ。ガリアの王様と食べようかと思って。近衛兵さん達にもあげるね」

「へえ。何の肉だい?」

「キメラだよ。お昼に食べてみたけど、なかなかおいしかった。魔王島に生息しているんだ」

「魔王島」


 目をパチクリさせても可愛くないわ。


「ドーラから見るとずっと西の洋上だね。魔王とその配下の高位魔族達が住んでるから、皆が魔王島って呼んでる。結構大きな島だよ。人間がつけてる名前もあるけど忘れちゃった」

「魔王と知り合いなのかい?」

「うん。白黒ハッキリっていう性格の、気持ちのいい子だよ」


 魔王は小ズルいことしてこないんじゃないかな。

 付き合いやすいとも言えるが、魔王強いからそもそもこっちを認めさせることが難しいか。


「ライナー様も詰め所に来ているんだ」

「ライナー君が? あれ、今日休みじゃないよね?」


 貴公子こてんぱんイベントのトリと言いながら不戦敗のライナー君は、天才剣士と評判の騎士だ。

 騎士は三勤一休のパターンだという話だったから、今日は出の日のはずだがな?


「休みを代わってくれと言われたらしいぞ? 騎士の休暇って融通が利くんだ」

「へー。勤めやすい職場だな」

「その分危険も神経をすり減らすこともあるけどな。さっきは君のことを話題にして、ルーネロッテ様と盛り上がってたぞ?」

「何であたし本人がいないところで話をしてるんだ。むず痒いわ。いるところで賛美しろ」

「賛美するぬ!」


 アハハと笑いながら近衛兵詰め所へ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシアさん!」「ユーラシア君」

「楽しそうだね」


 近衛兵にお土産の肉を渡して会話に混ざる。


「ライナー君ったら、せっかくの休みに何なの? ルーネを毒牙にかけようとして」

「違う! 人聞きが悪いな」

「ルーネも気をつけるんだよ? ライナー君はちょっと貴公子面してるからって、女の子にモテることを隠そうともしないんだ」

「モテるなんてことを公言してはいない!」

「応援してくれているファンの皆さんがいるみたいなこと言ってたじゃないか」

「単なる事実だ!」


 臆面もなく言うのがすげえ。

 ヤマタノオロチ退治の時、ライナー君はツッコミ属性だと思ったけど、きっとボケも天然で務まるな。


「まあライナー君が真面目なのはわかってる。からかうのもこの辺にしておくか、と御主人は思ってるぬ」

「おお? ヴィルにフォローされたぞ? 最近ヴィルがすごいなあ」

「御主人のおかげだぬ!」

「そーだったかー」


 ヴィルをぎゅっとしてやる。

 よしよし、いい子だね。


「掛け合いはここまでだ。今日はガリアの王様を遊んでやらなきゃいけないから、さっさとライナー君の用を片付けようじゃないか」

「用、というんじゃないんだが」


 ためらいがちなライナー君。

 用があるんじゃないの?

 じゃあ何しに近衛兵詰め所まで来たんだ?


「急に一日空いてしまってね。トレーニングを終えたらやることがなくなってしまったんだ。何となく君のことを思い出して詰め所を訪ねたら、ルーネロッテ様がおられて」

「何となくあたしを思い出したから来た、って言っちゃうのがモテ男の所以だな」


 あたしはライナー君が天然だってわかってるけど、他の女の子に言ったら勘違いされるぞ?


「つまり師匠のボクデンさんには、自分で考えて行動を決めろと言われてるんだね?」

「せ、正解だ。どうしたものかと……」


 ボクデンさんはライナー君の行く末に危機感を持っているらしい。

 騎士としてはいいだろうけど、伯爵として領主としてどうかって言われると問題あるからな?

 少し放置してみてどう動くかをボクデンさんは見定めたいんだろう。


 とはゆーものの、いきなりフリーハンドのライナー君もまた戸惑うわな。

 本来なら人脈を広げるべきだろうが……。


「ライナー君はモテるのに、社交とかパーティーとかにはあんまり参加しないんだ?」

「騎士だからね。パーティーの警護を依頼されることは多いが」

「勤務中に私語はよろしくないか」


 社交界は人脈広げる場だろうにな。

 だからボクデンさんは騎士を辞めさせようとしていたのか。


「大体わかった。聖女キャロの方はその後どうかな?」

「握手会を始めたぞ」

「握手会?」


 聖女と握手できます、お布施をどうぞというシステムらしい。

 うまいこと考えたなあ。


「ユーラシア君はいいと思うかい? 握手会を続けさせて」

「キャロの負担が大きいね。グッズ販売に移行すべきだけど、元手を稼ぐためと思えばいいんじゃないかな。ところでライナー君とルーネは知り合いだったんだ?」

「ライナー様は有名人ですから」

「護衛任務でお顔を拝見したことはあった。話すのは初めてかな」

「もーライナー君ったら、可愛い子の顔はすぐ覚えるんだから」


 アハハ、怒んない怒んない。


「ボクデンさんは経験しろ、人と会えって言ってるんだよ。今日この近衛兵詰め所に来たのはよかったね。ルーネの人物を知る機会を得た」

「ああ、その通りだ」

「フリードリヒ公爵にはライナー君のこと話しといたよ。ちょうど帝都に来るって言ってたんだ。四日後には到着するから、五日後以降で公爵邸行こう」

「海霧の月七日が休みだから、お願いしていいだろうか?」

「来月七日ね。フリードリヒさんに伝えとくよ。さて、ガリア行くぞお! ライナー君もついておいでよ」

「い、いいのかい?」

「構わないよ。でもちょっとした内緒事が混じるんだ。聞き知った内容は、ボクデンさん以外に他言無用だぞ?」

「わ、わかった」


 転移の玉を起動して一旦帰宅する。

色男がお供に加わった。

ライナー君も迷走しているからなあ。

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