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第1502話:ゲレゲレさん一家団欒

 ウサギの獣人ゲレゲレさんの一家が振り返る。


「おお、ユーラシア君ぴょんか。久しぶりだぴょん」

「こんにちはー。こちらは帝国の主席執政官の娘ルーネだよ」

「そうでしたか。初めましてぴょん」

「こちらこそ初めまして」


 ふむ、ルーネのワクワク感が伝わってくる。

 亜人に会ったのは初めてのようだ。

 でも特に抵抗ないみたいだな。

 いいことだね。


「ゲレゲレさんは、あたしが『アトラスの冒険者』になってから初めて会った、現役の先輩なんだ」

「まあ、ユーラシアさんの先輩?」

「駆け出しで何していいかわからなかった時に、随分アドバイスもらったの。ゲレゲレさんがいなかったら、あたしも冒険者続けられなかったかもしれない。尊敬する大先輩だよ」


 ゲレゲレさんって天を仰ぐようにメッチャ胸反らすのな。

 得意のポーズのようだ。


「ユーラシア君こそ、活躍は聞いてるぴょん。身どもも耳が長いぴょん」

「んー? 鼻が高いってこと?」


 ウサギさんジョークだ。

 アハハと笑い合う。


「今日は御家族で観光なのかな?」

「その通りだぴょん。身どもはノヴォリベツへの転送魔法陣を持っているのでな。たまに来るんだぴょん」

「いいねえ」


 ゲレゲレさんには、ノーマル人にあまり関わらないクエストが振られてるんじゃないかって話だったけどな。

 まあそんなクエストばっかり集められないか。

 ノヴォリベツは西域の端だし、亜人に関係するクエストってことだったのかも。

 位置的に亜人に対して差別もないんだろう。


「赤ちゃん、いつの間にか歩けるようになってたんだねえ」

「息子達を連れてきたのは初めてなんだぴょん」


 ハハッ、ヴィルが獣人幼児に抱きつかれて困ってるぞ?

 すげー可愛いな。


「ユーラシア君も観光で?」

「あたし自身は観光だな。一度温泉とゆーものに浸かってみたかったんだ」

「気持ち良かったぴょん?」

「いや、これからなの。温泉とは別に、絵師に今度出版する本の表紙絵を描いてもらうっていう目的もあって。今大浴場ロビーで描いてもらってるんだ」

「また何か仕掛けぴょんね? 楽しみにしているぴょんよ」

「あはは、じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 さて、そろそろ時間だから戻るか。

 ゲレゲレさんも帰るところだったみたいだな。

 ルーネが聞いてくる。


「ドーラに亜人の方は多いのですか?」

「あたしに関わりがあるのは、獣人以外だとドワーフ、森エルフ、魚人、赤眼族だな。他にも色々いるらしいけど、絶対数で言えばノーマル人ほど多くないよ」

「争うことはないのですか?」

「ノーマル人と? あるかもしれないけど、得がないことは好きじゃないなあ。あ、伝統的にエルフとドワーフは仲良くないって聞いた」


 聞き分けがないやつらだとどうしようもないけど、赤眼族だってわかってくれるしな。

 利害が対立してたって、脳みそが働いていれば話くらいはできるぞ?


「ただ港町レイノスはノーマル人至上主義がある町なんだよね。今でも亜人が歩いてると文句言われると思う」

「もったいないですね」

「だよねえ。植民地時代に帝国に直接税金払ってる者が偉い、移民してきたドーラ人は下、土着の亜人はもっと下っていう価値観ができちゃったみたいでさ」


 帝国人のルーネが特に亜人に対して忌避感がないのに、おかしなことだと思う。


「亜人はあたし達にない知識や技術を持っているんだよ。積極的に交流したいの。全体で発展できるじゃん?」

「面白いですねえ!」

「わかってくれると嬉しいな」


 ルーネは素質ある。

 マジで冒険者やればいいと思う。

 生き生きしてるじゃん。

 さて、絵の方はどうなってるかな?


「ただいまー」

「おう、ん? 木刀持ってるじゃねえか」

「うちのアトムが欲しがったから買っちゃったんだよ。ところがどういうわけか、木刀持ってると心が落ち着くの。何でだろ? 実に不思議だな」

「ハハッ、土産物屋に木刀置いとけってのはオレのアイデアなんだぜ」

「マジか」


 イシュトバーンさん謎の閃きだったでござる。

 イシュトバーンさんも若い頃、ノヴォリベツには思い入れがあったのかもしれないな。

 混浴だし。


「灰色の脳細胞が生み出した知恵なんだぜ」

「何が灰色の脳細胞だ。桃色の脳細胞の間違いだろ」


 えっちなことばかり考えてるクセに。


「ところでフィフィの絵はどう? あ、もうちょっとだね」

「まあまあだろ?」

「うん、さすが」


 フィフィの魅力を余すところなく表現しつつ、えっちさを封印したような絵だ。

 いつもの絵とどこがどう違うって言われるとわからんところが謎だな?


「これが表紙の絵になるの?」

「そのつもりだぜ」

「つかイシュトバーンさんこーゆー絵も描けるんじゃん」

「素晴らしいです!」

「中を見たいっていう引きのための絵だぜ。画集の表紙もそうだったろう?」

「あたしの絵?」


 美人絵画集の表紙のあたしの絵も格好いい系だった。

 意識して描き分けてるんだな。

 どこをどう描き分けてるのかわからんところが、ほんとに謎。


「よし、できたぜ」

「見せてくださいまし!」


 お、フィフィも気になってたみたいだな。

 ガン見やんけ。

 気に入ったらしい。


「風呂入ろうぜ」

「うん」

「も、もう少し見させてください」

「フィフィ、まだ完成じゃないんだぞ? ここからイシュトバーンさんが家で手を入れて、完成になるの。まだ一日くらいかかる」

「そうなのですね?」

「明日の昼前には完成だぜ。早めにヘリオスのとこ持っていくんだろう? 見にくりゃいいじゃねえか」

「本が刷り上ってからのお楽しみでよくない?」

「とても楽しみですわね」


 ん? ルーネも完成の絵が見たいって?

 我慢してなよ。

 あんまり先のことじゃないからね。


「えーと小仕切りのところで身体を洗って湯浴み着に着替えるんだったな」


 温泉を汚さない工夫だな。

 ごしごしごし、むーん? 泡立ちが悪いぞ?

 石けんの質が悪いのか、水質のせいかもしれないな。

 エメリッヒさんに研究してもらいたいテーマだ。

 あたし髪はあんまり長くないけど、借りた温泉セットの中に髪留めがあるから、一応括っとくか。

 準備ができたので小仕切りから出る。


「あれ、イシュトバーンさん早いね?」

「若い女が出てくるところを見たいからな」

「いい趣味だこと」


 笑ってる内にうちの子達も出てきた。

 あ、クララには少し湯浴み着が大きいね。

 でも大丈夫だって?

帝国には亜人がいないのかな?

少なくともすぐに会えるようなところには住んでないんだろう。

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