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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1389話:ナチュラルに魔境

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 早めにお昼をすませて魔境にやって来た。

 魔宝玉稼ぎも大事、そしてうちの子達との触れ合いも大事だからね。

 オニオンさんがニコニコしながら聞いてくる。


「ラグランド蜂起は、どんな塩梅ですか?」

「おっ、オニオンさんも気になっちゃう? 今のところ大筋は予定通りだな。帝国から軍を出動させて制圧することもなく。今朝帝国から特使を乗せた船が出発して、ラグランドに向かったよ」

「特使はやはり皇室の方が?」

「うーん、皇子は皇子なんだけど、子供なんだよね。亡くなったガレリウス第一皇子の息子さんで、リキニウスちゃん九歳」

「九歳の皇子が特使ですか? ……何らかの思惑の結果で?」


 トラブルと思惑なのだ。

 ああ、汚い政治は面白……嫌だ嫌だ。


「第二皇子主席執政官閣下は初め、セウェルス第三皇子を使者に立てるつもりだったんだ。皇位継承順位の高い皇族で、唯一暇してたから」

「ラグランド側に配慮するという意味なら、至極もっともな人選ですよね」

「でも第三皇子が精神的におかしくなっちゃっててさ。とても使者の任に堪えられないから、別の人ってことになった」

「別の人を送ることまではわかりますけど、どういうわけでリキニウス皇子に? ラグランドを軽視しているとも捉えられかねない人事だと思いますが」

「リキニウスちゃんも世が世なら皇帝なわけじゃん? 母方の祖父の公爵が舞い上がっちゃってたんだ。リキニウスちゃんを皇帝にしろみたいなこと言ってて。もちろん賛同者はいないんだけど」

「はあ」


 うっかり公爵はドーラ総督だったって言うから、オニオンさんなら名前くらいは知ってるだろうな。

 まーどうでもいいことだが。


「次期皇帝を狙う閣下は、リキニウスちゃんを皇帝みたいな話にはもちろん乗れない。かといって公爵ほどの大貴族を敵にも回せない。で、一見重要そうな役をリキニウスちゃんにあてがうってことみたい」

「聞こえのいい目立つ役ですか。なるほど。では実質的な交渉は政府高官が行うということですね?」

「うーん、プリンスルキウスなんだよねえ」

「え?」


 言葉を失うオニオンさん。

 閣下の人事は切れ味あるわ。


「あたしが転移で連れていけばいいだろ。一日くらい貸してくれってことで」

「人選がおかしくないですか?」

「閣下がプリンスをドーラに飛ばした経緯からして、プリンスの政治手腕を評価してることは確かなんだよね。その上あたしがラグランドの首脳と話せることも、プリンスとツーカーなのも知ってるじゃん? 誰を交渉担当にするって考えた時、プリンスって閃くのもわかんなくはないんだけど」

「普通は指名しないでしょう。在ドーラ大使ですよ?」

「だよねえ」


 職権の及ぶ範囲とか職責とか考えたら、常識ではあり得ないと思う。

 でも施政館の命令じゃ逆らえない。

 

「うまいことこなしたらプリンスの実績としてはプラスでしょ」

「でも正使ではないんでしょう?」

「それなー。閣下にうまく使われちゃった気がする。絶妙過ぎるわ。帝国の主席執政官を務めてるほどの皇子は、何だかんだですごい」


 プリンスの実務能力を政権安定のためにサービスしちゃう格好になる。

 まー閣下も悪いやつだから仕方ないか。

 しかしプリンスが交渉するなら、あたしもやりやすいのは事実なのだ。

 上手に話をまとめることに全力だな。

 ラグランドとコネができることは、プリンスにとって悪いことではないし。


「行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及び最近切れのいい子出撃。


          ◇


「この重い空気を全身に浴びると魔境に来たなあって気がする」

「ナチュラルね」


 うん、ナチュラルに感じられるほど、あたし達は魔境に馴染んでいる。


「姐御、今日はどうしやす?」

「久しぶりに思う存分稼ぎたい気分だなー。エルドラド行こう!」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」

「クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 びゅーんとエルドラドへ。


          ◇


「おお、ちょっと緑が目立ち始めてるね」

「グリーンエルドラドね」


 いいじゃないか、グリーンエルドラド。

 エメラルドエルドラドだとしつこい気がするし。

 今後気温が上がってくると、もっと緑が多くなってくるんだろう。


「ユー様」

「ん? どしたのクララ。いつもみたいに真面目な顔しちゃって」


 何だかんだでクララはうちのパーティーの頭脳なので、真面目な顔をしていると安心できる。


「盾の魔法『ファストシールド』についてですが」

「『ファストシールド』は、一ターンだけ相手のどんな攻撃もダメージ通らなくするという、ペペさん製のスキルだ。輸出用魔法第二弾として期待が大きい」

「ワッツ?」

「唐突に説明口調に変化するのはギャグになんないかなあ?」

「あっしは好きでやすぜ」


 新しい芸風の開発だって、いつも模索していかないといけないからね。

 で、クララどーした?


「盾の魔法は衝波攻撃に対しても有効なのでしょうか?」

「えっ?」


 ダメージ通らないって聞いてたから、まんま信用してたぞ?

 でも『ファストシールド』のダメージ無効化は、人形系レア魔物のそれに似てると思った。

 もし同じ仕組みであったなら、衝波属性の防御力無視攻撃を無効化することはできない?

 とゆーか理論上、衝波属性のダメージをカットすることなんて不可能なんだったか?


「……考えてみると衝波属性の攻撃まで無効にはできそうにないな。完全に思考のエアポケットだったのによく気付いたね。さすがクララ」

「えへへー」


 クララのフニャッとした笑顔は和むなあ。


「人形系レアに通る攻撃といやあ、姐御の『雑魚は往ね』もありやすね」

「『雑魚は往ね』はともかく、衝波攻撃を無効化できないなら要注意だわ。謎経験値君の自爆対策に盾の魔法買う人がいるかもしれないじゃん?」

「シルバークラウンね」


 ダンテは拘るなあ。


「今度ペペさんに会った時に確認しとかなきゃいけないな」


 全員が頷く。


「しかし何者であっても、我らが人形系レアハンターの行方を妨げることはできないのだ! おゼゼは大事! 稼ぐぞお!」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


 早速目の前に現れた新経験値君ことクレイジーパペット二体にレッツファイッ!

何にでも穴はあるもんだ。

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