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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1363話:ドーラ南部に行ってみたい

『おう、精霊使いか。面白いことだな?』

「間髪入れずがっついてくるなあ」


 昼食後に帰宅し、イシュトバーンさんに連絡だ。


「イシュトバーンさんにどこまで話してるんだったかな?」

『遠慮せずに全部話せよ。ソロモコの件を施政館に報告することは問題なかったんだろ?』

「それはもう。バアルを第二皇子に会わせて、今第二皇子付きになってる悪魔にも会わせてもらった』

『あんたのやってることは相変わらず見境がねえな』


 これはしょうがないのだ。

 あたしがやってることの正当性を証明するためには、主席執政官閣下にバアルを会わせるしかなかった。

 一方であたしも施政館にヴィルで連絡を取るためには、閣下付きの悪魔に会っておく必要があったから。

 

「第二皇子付きになってる子は御飯食べる子なんだ。いずれイシュトバーンさんにも紹介したいと思ってる」

『楽しみにしてるぜ』


 イシュトバーンさん家なら、ガルちゃんを招いてやっても問題なさそう。

 閣下に筒抜けになることを考慮して、話題に気をつける必要はあるけど。


「あたしもイシュトバーンさんに聞きたいことがあるんだ。でも面白い話の方から行こうか。今日ラグランド蜂起だったんだよ」

『あんたの基準だと、蜂起は面白いことのカテゴリーなんだな?』

「そんな混沌の女神みたいなこと言われても」


 揉め事をクエストとして振られるだけだ。

 楽しいけど。


『蜂起が広がらねえ方に持ってくんだろ?』

「うん。今んとこ蜂起の規模のコントロールは成功してて、都のウォルビスでも蜂起が起きてるのか起きてないのかわからんくらい」

『問題なしか。で?』

「ラグランド人側も施政館も、大袈裟にしたくない立場は一緒なんだよね。帝国からは艦隊を派遣しないで、全権特使送ることに決まった。今後蜂起が大きくなっちゃうと方針変わるかもしれないけど、多分そんなことないな」


 何故ならラグランド人にとって、蜂起よりも食べることの方が重要だから。

 畑守るモードになっちゃえば蜂起に人員を割けない。


『あんたの思惑通りじゃねえか』

「まーそう。でも軍事制圧したい人もいるんだよね」

『軍強硬派か? いや、ラグランド総督だな?』


 惜しい。


「ラグランド総督は融和派なんだ。でもその周りを固めてる衛兵達がね。総督が裏切ったって報告を施政館に上げてんの」

『ははあ。融和派の総督を排除しようって魂胆か。ありがちな勢力争いだな』

「だよねえ。それで第二皇子のとこにヴィルを飛ばして、『誰だ? くだらぬ報告を寄越した無能は』って叱ってもらって」

『じゃあもう問題ねえな?』

「うん。あとは帝国から来る特使にお任せ」


 と思ってたけど、クエストが終了にならない。

 まだあたしの仕事があるっぽい。


「第二皇子は特使に皇位継承権一位のセウェルス第三皇子を送ろうとしてたみたいだけど、その案はおじゃんになった」

『あんた何やらかした?』


 何であたしが絡んでるってわかるんだよ。

 主人公体質だからか?


「第三皇子が特使を引き受ける条件として、あたしに会わせろって言ってきたの」

『ハハッ、あんたに会いたいってのはよおくわかるぜ』

「そお? えらいおかしなことになったんだ。何と第三皇子は『強奪』持ちでさ。あたしの固有能力盗もうとしてくんの」

『スリリングじゃねえか。どうなった?』

「あたしの『強奪』で皇子の『強奪』を抜き取った」


 数瞬の沈黙。

 イシュトバーンさんの丸い目がさらに丸くなっているんじゃないかな。


『……『強奪』対『強奪』か』

「対決としては地味だったわ。周りで見てた人も何が起こったかわかってないし、元々おかしかった第三皇子が本格的におかしくなっちゃったし」

『予想もできねえことが起きるもんだな。あんたの固有能力に変化なし。皇子の『強奪』が失われたってことだな?』

「結果としてはね。特使の人選については白紙なんだけど、今日中に決めるから明日の午前中に来てくれって、第二皇子に言われた」

『随分と第二皇子に食い込んでるじゃねえか』

「あたしを味方にしといた方が得だってことは、第二皇子も当然理解してるから」


 つかラグランド問題については、あたしなしで早期の円満解決はムリだもん。

 何たってあたしはラグランド人首脳と腹を割って話せて、かつ転移とヴィルですぐに連絡取れるんだから。


『ところであんたがオレに聞きたいことってのは何だ? スリーサイズか?』

「いやん。今までの話とは全然関係ないことなんだけどさ。ポポマチっていう自由開拓民集落知らない? 地図に載ってないみたいなんだよね」

『ドーラ南部の暖地だぜ。ちょっと前の地図ならネマチって名になってると思う』

「あ、ネマチならあるわ。名前が変わった集落だったのか。ありがとう」


 イシュトバーンさんは、商人引退してからも情報収集はしてるんだなあ。


『ポポマチに何の用だ? コショウか?』

「いや、『マップ』持ちの脱落した『アトラスの冒険者』が、ポポマチ出身なんだよね。『マップ』ってかなり広い範囲で地形や集落の位置がわかる有用な固有能力なんだけど、ある程度レベルが上がんないと使い物にならないんだって」

『つまりそいつをレベル上げして役立てようと?』

「ドーラのために役立つ人材になってくれると嬉しいね。向こうの都合もあるから、とりあえず会ってみたいかな」


 消息不明ってこともあり得るしな。


「南部の集落群ってどうやって行き来してるのかな? 道なくない?」

『ねえな。ドーラ南部の集落は西域に街道ができる前、海に沿って移住した人々が作ったと言われているぜ』

「え? 今も道はないんだ?」

『今もコショウの売買は、海沿いに行き来している南部人に頼ってるはずだぜ』

「マジかよ。危なくない? 波とか崖とか」

『危ないな。しかし街道まで出ようとすると魔物が危険だ。海沿い歩きに慣れた者にとっては魔物よりマシなんだろうよ』


 南部の集落群から最短で西域街道まで来ようと思うと、ボニーのホームであるクルクルの近くになる。

 あの辺魔物多いしなあ。

 西域街道と南部を繋ぐ道が欲しい。


『ただ、南部はいいところだぜ』

「そうなんだ?」

『ああ。冬でも寒くねえしな。食い物も独特だ』

「ありがとう、行ってくるよ」

『おう、じゃあな』

「ヴィル、ありがとうね。こっち戻ってくれる?」

『はいだぬ!』

落ち着きがない?

いや、ちょっと時間が余ったから。

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