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第1346話:サイナスさんにも報告

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


『聞かせてもらおうか。今日は帝国施政館にソロモコエンターテインメントの報告に行ったんだろう?』

「サイナスさんったら、ソロモコエンターテインメントだなんて本当のことを」


 エンタメには違いないのだ。

 おにくびみらー。


「第二皇子にバアルを会わせてきたんだ」

『えっ? それは……』

「バアルって第二皇子のとこに二〇年以上いたんだって。うちの子になったって知って、第二皇子寂しそうだった」

「理解できぬである」

「そお? 愛着があったんじゃないかな」

『待て。どうして主席執政官閣下にバアルを会わせたんだ?』


 うん、当然疑問に思うだろう。

 サイナスさんは、あたしのやってることが可憐な割に繊細だとは思っている。

 仮にエンタメを優先したとしても、あたしは自分が不利になることは絶対にしないと知っているから。


「あたしにも苦渋の決断があったんだよ」

「完全に予定通りであったである。吾も出番を待ちかねていたである」

『もう掛け合いはいいから!』

「ソロモコが魔王と繋がってるって話を証明するのは難しいじゃん? バアルの言うことなら信じてもらえると思ったから」


 バアルが必ずしも信頼できないことはわかっていても、ウソを吐かないということもまた知っていた。

 バアルと付き合いの長い第二皇子は理解していただろう。


『君、最初からバアルを切り札にする腹積もりだったのか?』

「バアルがうちの子になったことについては、早い内に話すつもりではあったんだ」

『まあ、いずれ調べはつくだろうしな』


 結構あちこちでバアルを披露してるし。

 内緒にしててもガルちゃんに嗅ぎつけられるだろうしな。

 ガルちゃんはわんちゃんなだけに鼻が利きそう。


「で、今第二皇子にくっついてる悪魔に会わせてもらったんだ」

『すかさず抉るなあ』

「吾が主の僕であるなら、当然『魔魅』持ちであることを主が知っているとドミティウスは考えるである。そこで現在ドミティウス付きの高位魔族について問わぬことは、却って不自然である」

『バアルの言う通りだな。ガルムだったか?』

「そうそう、ガルちゃん。狼頭って聞いてたから恐ろしげな子かと思ってたら子イヌだったわ。すげー可愛いの。あたしイヌ好きだからな」

『飼うのか?』

「いや、飼わないけど」


 ヴィルやバアルほど深い趣のある子ではないと見た。

 性格はふつーの悪魔。

 ああいう扱いやすい子が第二皇子の側にいると安心。


「普通の悪魔は負力だけで満足して御飯食べないけど、ガルちゃんは食べるっていう特徴があるんだよ。お肉好きだって言うから、時々食べさせてあげようかと思って」

『情報源を餌付けするんだな?』

「まあそう」

「しかし主の情報もドミティウスに筒抜けであるぞ?」

「品行方正で容姿端麗で順風満帆なあたしには、知られて恥ずかしいことなんてないし」


 今後は帝国とは協調路線で、敵対することはないのだ。

 第二皇子から得た情報を悪用する気もない。


「ほこら守りの村の占い師によると、第二皇子とは長い付き合いになる、ドーラに大きく関わるってことなんだよね。サービスしてやるつもり」

『幼女預言者だな? 主席執政官殿下が次の皇帝になって、ドーラといい関係を築くって意味かい?』

「さあ? そこまではわからない」


 マーシャは大吉って言ってたのだ。

 あちこちちょっかいかけたがる性格が改まるなら、第二皇子が皇帝でもいい気はする。

 しかし以前バアルは、好戦的な性格は変わらぬって断言してたしな?

 第二皇子が皇帝になるとドーラにとって大吉ではない気がするけど、皇帝にならないなら長い付き合いになる、ドーラに大きく関わるってのがわからない。


「とにかく今日施政館行った時はすげー機嫌の悪かった第二皇子が、最終的に喜んで昼御飯を食べさせてくれたのでした。ミッションコンプリート」

「交渉が悪魔的だからである」

「もー褒めたって何も出ないぞ? この大悪魔め」

「照れるである」


 バアルも実に面白い子だなあ。

 個人的にはもう解放してあげてもいいくらい、貢献してくれたと思うのだが。

 あたし預かりだから皆さんに許されてるとこあるしな?

 ちょっと機会を待とう。


『ちょこれえとはどうなった? 今日の主目的だったんだろう?』

「サイナスさんも気になっちゃう? メチャメチャおいしいわ。幸せを標準装備してる甘みとゆーか。ああいうものを帝国が独占してるのは許せないので、ぜひドーラでも食べられるようにしたい」

『ラグランドのカカオが必要なんだったか? ラグランドはどうなってるんだ?』

「明後日蜂起だよ」

『ラグランドに対する帝国政府の方針は?』

「軍は出せないだろうって。特別な権限を持たせた使者を急派することになるって」

『ユーラシアの考えてた通りじゃないか』


 うーん? でもなー。


『問題があるのかい?』

「使者になりそーなのが皇位継承権一位の第三皇子なんだよね。相当なトラブルメーカーみたい」

『君の同類か』

「おいこら」

「第三皇子セウェルスは酒ばかり飲んでいるくだらないやつであるぞ。身分の低い者の言うことは聞こうとしない、貴族思考の塊である」

「困ったなー。平民のあたしの言うことは聞かないってことじゃん。美少女の言うことは聞くっていうオプションない?」

「ないである」

『納得させるのが大変そうじゃないか?』

「酒で頭が濁っているである。まともな思考ができるとは思えぬである」

「むーん?」


 とはゆーものの、第三皇子は身分だけは高い。

 条件的には嵌り役なのだ。

 最初から違う人を使者に立てたりすると、ガタガタ言われるんだろうな。

 これ以上失点できない施政館としては、とりあえず第三皇子に使者を依頼せざるを得ない。

 第三皇子本人も当然依頼が来るだろうと考えてるってことか。


「間に立つあたしが苦労するパターンか。嫌だなあ」

『君、難物は得意じゃないか』

「ドラゴンは酒臭いエサ好きかなあ?」

『そのエサは国際関係上大問題だからな?』


 本気にするんじゃないよ。

 半分冗談だわ。

 もう半分?

 細けえことはいーんだよ。


「眠くなった。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はガータンとラグランド。

苦労は分かち合いたい。

違った、あたし以外の人が苦労して欲しい。

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