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第1344話:パラキアスさんの行動原理

「おいしいですねえ」

「マジで美味いよね」

「甘みはパワーが出やすぜ」

「ベリーグッドね! スーパーデリシャスね!」


 うちの子達にも大好評、特にクララとダンテが大喜びだ。

 クララがちっちゃな目をしぱしぱさせてるのは珍しいなあ。

 相当気に入ったみたい。

 やはりちょこれえとはドーラでも販売されるべき。


「よし、ドーラでちょこれえとを製造販売するぞミッションを発動しまーす。何とかしてカカオを手に入れなきゃいけないね」


 カカオさえ手に入れば、イシュトバーンさんとこに帝国のスイーツ料理人がいる。

 あるいはちょこれえとの作り方をよく知ってる人を紹介してもらえばいい。

 全てはカカオの入手からだ。


「どうにかなりやすか?」

「ドーラで育てるのは絶対にムリ?」


 クララが難しそうな顔をする。


「枯らさずに育てることは、コショウを栽培できる南部なら可能だと思います。でも実を得るために商業的に栽培するのは……」

「ただ育てるだけじゃ意味ないもんな」


 やはりラグランドから輸入しなきゃいけないか。

 交渉の段階で、ラグランド~ドーラ間の貿易が可能になる条項をねじ込めばいいが……。


「ディフィカルトね?」

「いや、貿易相手が帝国だけってのが、ラグランドの問題を根深くしてる原因の一つなんだよね」


 ドーラは帝国の友好国という建て前だ。

 かつ帝国から独立を果たしたということで、ラグランドにもウケがいい。

 ドーラがラグランドの貿易相手になることに、特に反対意見は出そうじゃないがな。

 あたしが仲介するから、報酬としてラグランド貿易に咬ませろって感じに持っていけば、さほど難しくなさそーではある。


「でも帝国側の使者になるだろうセウェルス第三皇子が問題児っぽい」


 話の通じないやつだとマジで困る。

 第三皇子に邪魔されると、ドーラとゆーかあたしの言い分が潰されそう。

 それどころか、対ラグランド交渉が全てオシャカになる可能性もある。


「どの程度ですか?」

「話を聞く限り、迷いなくドラゴンのエサにしていいくらい」

「実際にやっちゃダメでやすぜ?」

「やるわけないだろ。あたしだって分別はあるわ。ちょっとは」


 こらダンテ。

 ふーって顔するな。

 ヤレヤレポーズも取るな。


「まだ見えてないことも多いからここまでだね」

「これからどうします? ラグランドですか?」


 ラグランドへ行く手もあるが。


「塔の村行ってくるよ。そろそろリリーも戻ってる頃だと思うし。夜までには帰ってくるね」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 塔の村にやって来た。


「さて、デス爺はどこかな?」

「あそこだぬ! 光り輝くハゲだぬ!」

「ヴィルの言い方はストレートだなあ」


 正直だからだな。

 笑えてきちゃうわ。


「おーい、じっちゃーん!」

「何じゃ、ユーラシアか。騒々しい」

「デス爺はいつもそー言いながら、あたしに会うとニコニコしている。多分あたしが可愛いから」

「声に出さずともよい!」

「口に出ちゃった。あたしも正直だからだな」


 アハハと笑い合う。


「プリンスルキウスと帝国本土の公爵令嬢との婚約が決まったんだよ」

「うむ、パラキアス殿が知らせてくれた」

「あ、パラキアスさん来たのか。じゃ、当然リリーにも?」

「無論伝えてある。行政府に連れていき、ルキウス殿下に挨拶もしてきたぞ」

「ありがとう。あたしがやるべきだったのに」

「お主が報告に来ぬのは、元婚約者フィフィリア嬢に遠慮しているからだと思うていたが、違ったのか?」

「単に忙しくて忘れてただけなんだ。リリーに謝っとかないと」


 しかし?


「……パラキアスさんが来たってのは違和感あるな」

「どういうことじゃ?」

「パラキアスさん、ドーラの重要事では動くけど、プリンスの婚約をじっちゃんに伝えにわざわざ来るっておかしいじゃん。どーもパラキアスさんの行動原理と違う気がする。塔の村はどうせあたしが来ると思ってただろうし」

「……言われてみるともっともじゃな。すると?」

「他に用があったんだと思う。じっちゃん何も言われてないんだ?」

「うむ、特には」


 となるとエルのことか。

 パラキアスさんは、デス爺がどこぞからエルを呼んだことは知っている。

 エルの異質な存在感から、当然異世界からであることも感付いてるはず。

 あたしが『アトラスの冒険者』が廃止になるかもということを伝えたことにより、異世界関係のゴタゴタがこっちの世界に波及する可能性を考えたか?


「業務連絡だな。パラキアスさんのスパイのモジャ髪いるじゃん?」

「ケンじゃな?」

「うん。エルのマークを怠るなってことを言いに来たんだと思う」

「お主、パラキアス殿にエルの事情を話したのか?」

「全部は話してないし、少々のことじゃパラキアスさんは行動起こさないだろうけど」


 まあいい。

 デス爺には話しておけ。


「エルの母ちゃんがエルの追っ手なんだ。同時に『アトラスの冒険者』のトップでもある」

「わからぬ。順を追って話せ」

「ポカッポカッと情報抜けてるから、あたしの推測で補完するよ? 向こうの世界は宗教国家みたいな統治をしてて、現政権と旧王族信奉者は現在でもすごく対立してるんだ。エルの母ちゃんは旧王族である赤眼族を監視するための『アトラスの冒険者』を統括する立場にありながら、旧王族の血に連なるエルを産んでしまったというスキャンダルを抱えている」

「だからエルの行方を追っているということか……」

「エルの母ちゃん関係で、一方で赤眼族の危険性が向こうの世界にとって低下してるということもあって、『アトラスの冒険者』が廃止されるかもしれないの。パラキアスさんには廃止の可能性は伝えてあるんだ。そこから異世界の混乱を予想し、関係のあるエルをチェックしとけってモジャ髪に言いに来たんじゃないかな」

「相変わらずパラキアス殿の洞察力は優れているの」

「パラキアスさんはマジヤバい」

「お主も相当じゃぞ?」

「いやまあ。そんなことあるよ」


 アハハと笑い合う。


「塔の村に異世界人が直接干渉してくることもないとは言えないんだ。もしおかしな兆候があったら、あたしにも教えてよ」

「うむ、わかった」

「あたしはモジャ髪に釘刺しとかないとな。そーだ、『経穴砕き』のスクロール六本ちょうだい。掃討戦跡地の移民いるでしょ? 魔物退治に関わってるメンバーがいるからあげたいんだ」

いろんな事情が別個に動くと、頭がぷしゅーってなっちゃう。

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― 新着の感想 ―
[一言] >頭がぷしゅーってなっちゃう そしておもむろにユーちゃん蒸気機関が始動して ものすごい勢いで物事が進むんですねわかります
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