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第1323話:ワサビ醤油はお肉にも合う

 フイィィーンシュパパパッ。

 『サナリーズキッチン』で買い物してから、海の王国にやって来た。


「相変わらず素晴らしいねえ、この銅鑼は」

「見るだけで心が躍りやすぜ」

「銅鑼が鳴るなり放流時」

「あはは、何を放流するんですか」


 ジャンケンの結果、ダンテが栄えある銅鑼叩きの栄誉を担うことになった。


「おめでとうダンテ! いっちゃってください!」

「オーケー、ボス!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」

「紛うことなき肉かっ!」

「紛うことなき肉だぞー!」

「やほーい!」


 転げ出てきてからすぐに喜びの舞に移行する女王の見事なこと。

 これが雅か。

 完成された芸だなあ。


「今日はいつもと違う趣向があるんだよ」

「む? 醤油か。焼き肉のタレか?」

「違くて。醤油をワサビっていう辛い調味料とペアで使うの。帝国では生魚食べる時の手法らしいんだけど、ドーラは生魚食べる習慣がないから、最近まで知らなかったんだ」

「ふむ? では生魚を用意させるかの?」


 そーゆー手ももちろん有力だとわかっているんだが。

 生魚&ワサビ醤油は食べたことあるから知ってるし。

 もーあたしの頭の中がお肉食べるモードになっちゃってるからな?


「これ焼き肉でも美味いんじゃないかって話になってさ。せっかくだから女王と試食することにしたんだ」

「おお、そうじゃったか。つまり焼き肉をワサビ醤油で食べる試みということじゃな?」

「うん。あたし達もまだ試したことないから楽しみで。新しい味の探求だ!」

「面白い! これ、調理場へ運んでたもれ」

「ヴィルカモン!」


 衛兵達がコブタマンを運んでいく間にヴィルを呼ぶ。

 どうでもいいけど、ここの衛兵はコブタマンの運搬以外に仕事してるのかなあ?


「もう一つお土産。寒天スイーツね」

「寒天も最近地上からの注文が増えているのじゃ」

「どんどん増産して構わないよ。地上ではこういうふうに利用されてるんだ」


 『サナリーズキッチン』で購入した寒天スイーツを見せる。


「なかなか綺麗じゃの。おいしそうじゃ」

「でしょ? 地上では甘味は最後っていう習慣があるんだ。お肉のあとに食べようよ」

「うむ!」

「御主人に呼ばれてヴィル参上ぬ!」

「よーし、ヴィルいい子!」

「ヴィル、よう来たの」

「お邪魔しますぬ!」

「席についてたもれ」


          ◇


「ごちそーさまっ! もー入んない!」

「入んないぬ!」


 結論から言うとワサビ醤油はお肉に合う。

 女王がのたうち回って床をテカテカにする程度には美味い。

 フルコンブ塩の完全な至高でも焼き肉のタレの有無を言わさぬ暴力でもなく、落ち着いた上品な美味さといったイメージだ。


「食欲のない時でも入っちゃいそう」

「わらわは食欲のない時なぞ、ありはせんのじゃが」

「お腹一杯食べちゃっても、本能がもう少しお肉を要求することがあるじゃん? そーゆー時だよ」

「おお、なるほど! おんしは賢いの」


 うちの子達が、何が賢いのかって顔してるけど。

 あたしは問答無用で可愛いわ。

 違った、あたしは問答無用で賢いわ。


「でもこれはお肉を薄切りのがおいしかったかもねえ」

「賛成じゃ。次は薄切りにしようぞ」

「あ、ごめん。次は先になりそう」


 移民の食料をどーにかせにゃならんこと。

 まだ醤油が普及してないので、ワサビはさらに先になることを説明。


「ふむ、残念じゃの。新しい味覚を導入できるかと思ったのじゃが」

「ごめんね。二、三年中には何とか流通させるように努力する」

「ワサビは魚醤にも合いそうじゃ」

「あっ、なるほど」


 女王はワサビ欲しそうだな。

 開拓地の移民は魚食に抵抗ないから、あっちで作ってもらおうか。

 水路が通っているところならイケるはず。


「寒天スイーツも美味ではないか」

「基本はぷるぷる寒天の中に砂糖と果汁が入ってるだけだから、作るのはメッチャ簡単だよ」


 交易で砂糖と果物を買えば、海底でも問題なく作れるのだ。

 甘みは癒しなので、海の王国でもスイーツ文化が広がって欲しい。

 ドーラでの砂糖増産に繋がる。

 砂糖は帝国にもガンガン輸出したいし、西域のどこかで大量生産できないものかなあ。


 表情は変わらないが、女王の声のトーンが真剣味を帯びる。


「ソロモコの情勢はどうなったのじゃ?」

「一昨日無事に終わったよ。帝国艦隊にはお帰りいただいたから、もう心配ない」

「魔王が出しゃばることもなく、争いは避けられたということじゃな?」

「うん。しばらくはソロモコに用はないな」


 たまに遊びに行って、おにくびみらーしたいけど。


「次のクエストが出ておるのじゃの?」

「ラグランドってところなんだ」

「また外国じゃな?」

「最近外国のクエストが多いんだよね。カル帝国の植民地で一番人口の多いところだって」


 ナップザックから地図を取り出し、女王に見せる。


「……遠いの。ドーラと直接関係はあるのかや?」

「ないな。四日後に反帝国の蜂起が起きるから何とかしろってクエストみたい。でもソロモコみたいに放っとくとドーラが迷惑を被るなんてこともなさそうだから、テンションを上げにくいんだよね」

「ふうむ。『アトラスの冒険者』も難儀なクエストを配するものだの」

「でも現地を知ってみりゃいい人達もいるんだ。それにラグランドには特産品が多いみたい。欲しいものもあるから、積極的に関わってみようかと思って」

「おんしの欲しいものか。食べ物か?」

「おっ、女王カンがいいね。スイーツの材料になるものだよ」


 イシュトバーンさんによると、カカオがないと再現できないスイーツがあるらしい。

 代用が利かないほど斬新なものなのだろう。


「ラグランドの特産品は全て帝国に流れちゃってるみたいなんだ。おいしいものはドーラにも導入したいじゃん?」

「まったくだの。独占させるのは口惜しい」

「どうにかして手に入れるルートを作りたいなー」


 ラグランドとも貿易できればいいのだ。

 今は帝国の植民地だからムリか。

 独立となると先が長そうし……。

 他国とも貿易可能にすることを条件に盛り込んで、蜂起を終息させればいい?


「……ちょっと考えがまとまってきたな」

「ほ、そうかの?」

「今日は帰るね。新スイーツ手に入ったら、お土産に持ってくるよ」

「楽しみにしておるぞ。もちろん肉も楽しみじゃぞ!」

「バイバイぬ!」


 女王必死だな。

 わかってるってば。

 転移の玉を起動し帰宅する。

とにかく味変だ。

香辛料でも調味料でもハーブでも、味変材料がないと調理法が発達しない。

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