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第1303話:本日天気晴朗なれども波高し

 ――――――――――二一八日目。


 運命の分岐点となる日。


          ◇


「よーし、いい天気! 今日も元気だ空気がうまーい!」


 美少女精霊使いの爽やかな目覚めだ。

 ソロモコもいい天気だろうか?

 帝国艦隊は堂々たる姿を現しているだろうか?


「ユー様の寝起きがいいのは珍しいです」

「やっぱり今日は特別な日だからかなー。ツェーザル中将と初デートの日」


 アハハ。

 まあどうせ司令官のツェーザル中将とも会うことになるんだろ。

 

「ナニカが起きるね」

「おいこらダンテ。変なフラグ立てるのやめろ。今日の首尾は世界の平和がかかっているんだぞ?」


 ソロモコに関しては、あたしのコントロール内でのエンターテインメントを求めているのだ。

 ハプニングはいらん。

 アトムが首をかしげる。


「朝に来るんじゃないんでやすかね?」

「それな?」


 ヴィルからの連絡がない。

 てっきり帝国艦隊がレイノスを囲んだ時のように、朝からソロモコの住民を威圧してくるものと思っていたが。


「ヴィル、聞こえる?」

『……』

「テステス。本日は晴天なり、本日は晴天なり」

『……』

「本日天気晴朗なれども波高し、本日天気晴朗なれども波高し」

『……』

「何でやすか、今のは」

「おかしいな。赤プレートに反応がないんだよ。ヴィルと話ができない」


 こんなこと初めてだぞ?

 ヴィルに何かあったか?


「ワッツ? ボスのトラブルね?」

「あたしのせいにすんな。どっちかと言うと、ダンテがフラグ立てたせい」

「どうしたんでしょう。ユー様何かわかりますか?」

「んー? でもプレートからヤバそーな気配は感じられないな」


 赤プレートはヴィルの分身みたいなものだから、ヴィルに異変があれば何らかの変化があってもおかしくないのだが。


「とりあえずヴィルが危険というわけではなさそう」

「通信障害じゃないでやすか?」

「こういうこともあるんだな。覚えとこ」


 トラブルっちゃトラブルだ。

 でもまあ今日はやること決まってるから。


「ヴィルのことはとりあえず後回し。御飯食べたらソロモコ行くよ」

「「「了解!」」」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ソロモコにやって来た。


「いい風だけど、何となくざわざわした空気だな」

「既に艦隊が到着していて、住民が騒いでいるのかもしれません」

「集落へゴーね」


 しばらく行くと、フクちゃんが先導して住民が丘へ避難して来るのが見えた。

 フクちゃんじゃ言葉通じないから、そう見えるだけだろうけど。


「おーい、フクちゃーん!」

「あっ、お待ちしていましたですホー」


 明らかにホーとした、もといホッとした表情のフクちゃん。

 ハハッ、可愛いやつめ。


「沖に帝国艦隊が現れましたですホー」

「こっちから見えないんだよね。集落の反対側の海かな?」

「そーですホー」


 単に集落の位置を知らないからか、それとも密かに上陸する作戦か?

 いずれにせよ大して広くもない島のこと、どこから来ようが大して違いはないが。


「ヴィルと連絡がつかないのでどうしようかと……」

「あたしもヴィルと連絡取れないんだよ。今までこんなことなかったのに」


 フクちゃんに赤プレートを見せる。

 フクちゃんだとわかることがあるかな?


「ヴィルのプレートは赤いのですか」

「うん。これって悪魔ごとに色が違うんだ?」

「はい。ボクのプレートは黄色です。魔王様に渡してありますですホー」


 なるほど、尊敬の感情はプレートを通して魔王に送っているのか。

 赤プレートを見たフクちゃんが言う。


「……ヴィルの意識がないようです。しかし、身体的に傷つけられているとかではありませんですホー」

「ヴィルに危機が迫ってるとかじゃなきゃいいんだ。帝国艦隊様の御用聞きが先だ」


 ヴィルのことも気がかりではあるが、優先順位を間違っちゃいけない。

 住民とともに丘の上へ。


「おーよく見える!」


 かなり距離あるはずなのに三艦の軍艦が見える。

 よしよし、予定通りだな。


「帝国の軍艦はマジででっかいなー。向こうから使者は来た?」

「まだ来ないですホー」


 ソロモコの住民にコモンズが通じないことは知ってるはず。

 だから使者を送ることの重要性を感じてないんだな?

 十分不安を煽ってからアクションを起こすつもりだろう。

 そーはいくか。

 ソロモコの救世主たるあたしの催すイベントに、強制的に付き合ってもらう。


「ダンテ。この距離じゃ『デトネートストライク』でも当たんないよね?」

「ドントリーチね」

「合図したら艦隊の斜め上空くらいに撃って。脅しっていうより、ショーとして向こうさんにも御観覧いただくくらいのつもりでいいからね」

「オーケー、ボス」


 クララがユー様悪い顔してるって目で見てるが、そう悪い顔ってゆーな。

 単に楽しみなだけだとゆーのに。


「皆、注目!」


 不安げな顔をしているソロモコの住民達に声をかける。


「帝国から艦隊がやって来ました!」

「す、すごらしぷら」

「そうだね。単に船がデカいだけじゃなくて、最新の強力な兵器を積んでますので、あれとまともにケンカしようと思っちゃダメです。いいかな?」

「わから」

「どぐらまぐら?」

「あたしはソロモコを救うために来たんだよ。救世主たるあたしが、この仮面にかけてソロモコを守ることを誓おう!」

「「「「「「「「すごらおめらー!」」」」」」」」

「「「「「「「「ちぇけらー!」」」」」」」」


 ハッハッハッ。

 すげー盛り上がる。

 気分がいいなあ。


「ダンテ、いっちゃってください!」

「イエス、ボス!」


 ダンテの手の上で膨れ上がる魔力に皆が驚きの目を向けている。

 凝縮され、撃ち出され、青き空を切り裂くように飛び、炸裂した。

 ゴワババババババーーーーーーンンンンン!


「な、何ですか、あれは?」

「フクちゃんビビってる? あれは個人が使えるものでは世界最大最強の魔法だよ」

「あの魔法を当てれば艦隊は全滅なのでは?」

「いや、多分魔道結界張ってるんだよね。それにあたしは帝国と戦いたいわけじゃないから」


 たとえ対魔法結界を張っていても、上から撃てば衝撃を逃がせなくて潰れちゃうような気はする。

 ただしその場合もれなく津波がついてくるので、ソロモコにも被害が及ぶ。

 もちろんやんないけれども。

 ダンテを回復させてと。


「じゃ、行ってくる! クララ、お願い」

「はい、フライ!」

「「「「「「「「うんばー!」」」」」」」」


 びゅーんと艦隊上空へ。

ヴィルと連絡が取れないとゆー予想外の事態ではある。

されどここまで問題なし。

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