表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1262/2453

第1262話:ハヤテもお供に

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」

「お姉さま、お待ちしておりました!」


 魔境にやって来た。

 やる気に満ちているエルマがドラゴンに初挑戦するというので、見届け人になるためだ。

 既にエルマはスタンバイしていたが。


「遅くなってごめんね。この子も連れてきたんだ」


 砂色で羽持ちの精霊を紹介する。

 オニオンさんはその精霊が何者か気付いたようだ。


「以前の迷子の精霊ですよね?」

「そうそう。疾風の精霊ハヤテだよ。緑の民の村の『精霊の森』に住んでるんだ」

「えっ? そうなのですか?」


 『精霊の森』に食獣植物が現われた際に、驚いて魔境にランダム転移してしまったらしいことを説明する。

 アレク及びケスにハヤテのレベリングを頼まれているのだ。

 三人で冒険者活動をしているのだが、ハヤテのレベルが低いから支障があるんだよな。


「……で、今は灰の民の村にしょっちゅう遊びに来るんだ」

「無事でよかったですよ」

「わたしにも縁のある精霊さんだったんですねえ」

「精霊だからエルマにはあんまり関わんないだろうけど、こういう子がいることは知っといてね」

「はい」


 うんうん、縁なんてどこにあるかわからないからね。


「ハヤテは二人の『精霊の友』とパーティーを組んで、塔の村で冒険者やってるんだ。でもその二人とレベル差があってうまくないから、三〇くらいまでレべリングしてくれって頼まれてさ。今度ドーラでスキルスクロールを量産したいんで、それへの協力と引き換えに引き受けた」

「本当にいろんなことをやってらっしゃる」


 様々なことに首を突っ込めるのは楽しい。

 見たところハヤテは中級冒険者に足を突っ込みかけってところだ。

 レベルアップの早い『早熟』の固有能力持ちではあるし、『豊穣祈念』かければすぐにレベル三〇いきそう。

 オニオンさんが言う。


「エルマさんがドラゴンに挑戦という話でしたが」

「そーなんだよ。アイスドラゴンに挑むみたいだよ。エルマのパワーカードの編成はどんな感じなの? オニオンさんにも相談したかったんだ」

「ワタクシも知りたいですねえ」


 オニオンさんもパワーカード好きだよな。

 何々?

 『ドラゴンキラー』『風林火山』『ファイアーフォース』『ハードボード』『武神の守護』×二『氷の護り』か。

 アイスドラゴンはおかしな状態異常攻撃を持っていないから、『武神の守護』のヒットポイント自動回復を重視するのはよさそう。

 これでも勝てるだろうけど……。


「オニオンさん。武器の属性が複数ついてる時、ダメージってより効果的な方が適用されるんだよね?」

「はい、その通りです。『ドラゴンキラー』の【対竜】と『ファイアーフォース』の【火】ならば、【対竜】の方が有効です」

「そうだったんですか……」

「でも攻撃力補正は『ファイアーフォース』の方が大きいよ。加えてエルマは『火の連続衝』か『風の連続衝』がメイン火力でしょ? 射程長いスキルだし武器の属性も乗らないから、『ドラゴンキラー』必要なくない?」

「対象をアイスドラゴンと決めているなら、『火の連続衝』の方が与えるダメージは大きいですね。しかしどうでしょうか? エルマさんは回復手段に『ドレインアタック』を考えておられるようです。『ドレインアタック』というスキル自体の射程は長くないので、射程を伸ばすパワーカードがないと危険ですよ」

「あ、そーか。じゃあ『ドラゴンキラー』か『スナイプ』のどっちかは必要だな。『風林火山』はどうなんだろ?」

「マジックポイント自動回復ですか? 迂遠でしょう。マジックウォーターで一気に回復するのがいいと思います」


 エルマが目を丸くしている。


「知らないことが多いです。自分の持ちスキルなのに……」

「スキルの特性は難しいですよね」

「『初心者の館』で聞くか、オニオンさんに教わるといいよ」

「ワタクシも『勇者の旋律』が人形系魔物に有効ということは、ユーラシアさんに伺うまで知りませんでしたよ」

「エルマは人形系レア対策に『ストライク五〇』があるから、人形系狩り目的で『勇者の旋律』使うことはないんだよなー」


 スキルって案外奥が深い。

 スキルを作った人の意向があるだろうし、全く意図していない効果が付属しちゃう場合もありそう。

 まあエルマは基本ソロなので、味方全員の攻撃ダメージを上げるスキルである『勇者の旋律』を使う機会はほとんどないと思われる。


「エルマにこれ貸したげる」

「パワーカードですか?」


 『暴虐海王』。

 攻撃力・防御力・魔法力・魔法防御・敏捷性弱体を付与するパワーカードだ。


「『風林火山』の代わりに装備してね」

「エルマさんの習得している単体攻撃スキルですと、『強撃』か『閃光撃』でしたら装備品の弱体化特性を乗せられますよ」

「初っ端に弱体化できたら、比較的楽に戦えると思う」


 オニオンさんが聞いてくる。


「『暴虐海王』は随分強烈なカードですね。ユーラシアさん、『暴虐海王』がヒットした時の弱体化有効は何ターンですか?」

「あ、わかんない」


 効果が切れるまで戦ってたことないな?

 初めてレッドドラゴンと戦った時、確か五ターンで倒したから、それ以上か。


「五ターンですよ」

「エルマはよく勉強してて偉いな」

「とても偉いぬ!」


 よしよし、ヴィルをぎゅっとしてやる。

 『暴虐海王』は超レア素材『大王結石』によって実現したパワーカードだ。

 『大王結石』を手に入れることがほぼ不可能に近いので、今後他の冒険者が手にする機会もないんじゃないかと思われる。

 でもアルアさんはどういうわけかこのカードをレギュラー化して、交換レート表の中に入れているんだよな。

 おそらくアルアさんの自信作であり、パワーカード使用者に欲しいと思わせるカードだからだろう。


 あれ、ハヤテも興味あるみたいだな?

 『暴虐海王』は格上の魔物とも戦えるようになるすごいパワーカードだからね。

 アルアさんを紹介してやってもいいが、精霊の友以外だとまともに喋れないんだろうし、コルム兄で我慢しなよ。

 もし『大王結石』を手に入れるようなことがあったら、アルアさんに口を利いてやるから。


「じゃ、行こうか」

「行ってらっしゃいませ」

「行ってくるぬ!」


 ユーラシア隊及び悪魔妹分精霊のトリオ出撃。

ソロでドラゴンを倒すなら、レベル七〇は欲しい。

でもエルマは『大器晩成』のおかげで十分なスキルを持ってるし、ステータスパラメーターの伸びもいい。

『暴虐海王』を装備してれば、レベル六二でもそう不安なく勝てるはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ