表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1246/2453

第1246話:ダークホース?

「悪魔については十分な話を聞けたよ。……ユーラシア君がルキウス様に入れ込むのは何故だ?」


 ふっと表情を緩めて続けるフリードリヒさん。


「以前ハッキリした答えがもらえなかった気がしてね。いや、僕もルキウス様の実務能力、特に調整力を認めてはいるよ。しかし皇帝としては、カリスマというか牽引力に欠けているんじゃないか?」

「自分の領地に帰ってくるとズバッと言うなあ」


 『皇帝』という言葉にピクっと反応するヘルムート君とパスカル君。

 でもプリンスにカリスマが欠けてるなんてことはないでしょ。

 高レベル『威厳』持ちなんだから。

 あっ?


「ひょっとしてフリードリヒさん、第一皇子のお葬式でプリンスルキウスが帝都に来てた時会ってないんだ?」

「遠目でチラッと会釈した程度かな。陛下の病が篤いと噂されている中、特定の皇子と目立つ接触を持つのは、アーベントロート公爵家当主の取る道じゃないね」

「だからわかんないんだよ。今のプリンスルキウスはすごいよ。『威厳』っていう自分よりレベルの低い人を恐れ入らせる固有能力持ちで、しかも今レベル五〇あるから、大概のことは顔出すだけで収まるよ」


 驚くフリードリヒさん。


「レベル五〇? ルキウス様が? どうして?」

「プリンスが在ドーラ大使として赴任してきた時、随員一人も連れてこなかったんだよ。だから……」


 帝国政府のプリンスに対する扱いを知ったドーラ政府は表向きノータッチで、扱いはあたしに任された。

 自分で身を守ってもらうために魔境レベリングがどうこう。


「……とゆーわけなのでした。レベリング後のプリンスルキウス見て、リリーもウルピウス殿下もビックリしてたから相当だよ」

「ふうむ。ルキウス様フィーバーにはそういう背景があったのか。軽視してたな……」

「目立たない地味な実力者が、今や圧倒的な存在感を備えてるんだってば」

「パウリーネから聞いてはいたが、ハート形のフィルターを通しているからと思い込んでいたよ」

「おおう、ごもっとも」


 ハハッ、ムリからぬ理由だった。


「第二皇子もすごいやつで、皇帝に相応しい実力があるとは思うよ。しかも現在の帝国の実質トップっていうアドバンテージはあるんだけどさ。戦争したがる人は推せないんだよね。あたしはプリンスルキウスがいいな」

「ユーラシア君の考え方だと、皇位継承権は高くても実力のないセウェルス様はないな。フロリアヌス様やウルピウス様を推さないのは何故だ? 君に近いし、将来性もあるだろう?」

「あたしとドーラに都合がいいかどうかが問題であって、仲がいい悪いは関係ないな。フロリアヌス殿下は若いし武官なんでしょ? 皇帝の才幹はあるかもしれないけど、時間がかかるよ。陛下の崩御に間に合わない。これは第二皇子も同意見だよ」


 再び驚くフリードリヒさん。


「君そんなことドミティウス様と話してるのか?」

「うん、まあ。ぶっちゃけないと通じないことはあるからね。あ、ウルピウス殿下は多分次の辺境侯爵だよ」

「決定なのかい?」

「ほぼ。メルヒオールさんの甥にザムエルって人がいるんだけど、その人が補佐役兼弟妹系親族の抑えっていうポジションになりそう」

「となるとゼムリヤはどうなるかな?」

「統治の難しい地であることは間違いないけど、ウ殿下が治めるのが一番問題が少ないと思うよ。メルヒオールさんもザムエルのおっちゃんも納得してたし」


 あっ、商売人の顔になってる。

 ゼムリヤとの取り引き増やすのかもな。

 フリードリヒさんが悪い顔になる。


「リリー様をどう思う?」

「どう、とは?」


 それだけじゃわかんないよ。

 ろくでもないこと考えてるんだな、くらいしか。


「……リリー様は、カル皇帝家にとってオールマイティーな存在だ。どうあるべきか、ユーラシア君の思うところを聞きたいね」


 三人の視線が集中する。

 いやん。


「回りくどい言い方するなあ。まー皇室の求心力が落ちたら、リリーの人気に頼らざるを得ないでしょ」

「逆に言うとリリー様が自由にしている内は、皇帝家は安泰という見解か」

「そゆこと。フリードリヒさんはどう思うのよ?」

「全く同感だね」


 笑いながら頷いてら。

 情報関係の仕事をしていたというメキスさんは、次期皇帝として最適なのはリリーだと言っていた。

 年齢性別皇位継承順位を無視するならばだ。

 でも実際のところ、いかに人気と素質があるからって、皇位継承順位を無視して年若の女帝を担ぐなんて末期だろ。

 つまりリリーは好き勝手しているのが平和の証なのだ。


「この前の貴公子けちょんけちょんイベントの三人の中では、ヘルムート君が一番リリーとの相性がいいんだ。これはお世辞じゃないぞ?」

「ふむ?」


 満更でもないヘルムート君。

 リリーもヘルムート君のことを一番気にしてたみたいだしな。

 あ、ヴィルがヘルムート君のとこ行った。


「でも僅差だぞ? とっととガータンで経営手腕と甲斐性を見せつけて欲しい」


 フリードリヒさんが聞いてくる。


「ちなみにユーラシア君が考える、領地経営で最も大切なものって何だい?」

「領民の数かなー」

「なるほどね。だからユーラシア君は市民権どうこうっていう、斬新な発想が出てくるのか」


 ヘルムート君から聞いてるらしいな。


「食べられるものと売れるものがあって山賊がいなけりゃ、自然と発展するでしょ」

「ハハッ、真理だな。ヘルムート、覚えておきなさい」

「はっ」


 鈴を鳴らし、使用人を招き入れるフリードリヒさん。


「アレを持ってきてくれ」


 アレって何だろ?

 苗?


「アーベントロート公爵領から外へ出したことのない、甘く大粒のイチゴの品種『パウリーネ』だ。礼としてもらってよ」

「ありがとう!」


 娘の名前をつけるくらいだ、自慢の品種に違いない。

 木じゃなくて草のイチゴだと、カカシ管理下ならばこれからの季節、二ヶ月もすれば実がなるんじゃないの?

 即戦力だよ、嬉しいなあ。


「それともう一つ。不確実な情報だが、次期皇帝候補にダークホースが名乗りを上げるかもしれない」

「えっ?」


 ノーマークの皇子ってことか?

 フリードリヒさんが軽く手を振る。


「何とも言えない話なんだ。可能性があるとだけ覚えておいてよ」

「うん、ありがとう」

「お昼食べていくかい?」

「いただきまーす」


 ダークホースの次期皇帝候補か。

 気にはなるが?

今次期皇帝候補と見てるのは、皇位継承権一位の第三皇子セウェルス殿下。

同二位で現在のカレンシー皇妃の長子フロリアヌス殿下。

主席執政官として現在の帝国政権を切り盛りする第二皇子ドミティウス殿下。

そして前次席執政官でレベル五〇『威厳』の力を見せつけ、赤丸急上昇中のプリンスルキウスの四人だ。

それ以外の皇位継承権保持者が有力視される?

フリードリヒさんの言い方だとリリーではないんだろうし……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ