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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1235話:美女と野獣

「とうちゃーく! 帝都進出できそうじゃん。よかったねえ」

「ユーラシアさんのおかげですよ。ありがとうございます」


 皆を送ったあと、最後にディオ君を連れてJYパークに帰ってきたのだ。

 結局『ケーニッヒバウム』との交渉は、セレシアさんがデザインを提供、対価として純利益の一割をもらえることになった。

 時々あたしが中継してセレシアさんを『ケーニッヒバウム』へ連れていくことになるかな。


「姉上は残念そうでしたが」

「でも輸出も直接帝都に出店するのもちょっとムリがあるぞ? ディオ君もホッとしたでしょ?」

「それはまあ」


 アハハと笑い合う。

 デザイン料を受け取るだけで生産に関わらないなら、セレシアさんが暴走する余地はないのだ。

 『ケーニッヒバウム』のフーゴーさんやピット君も心得てたみたい。

 阿吽の呼吸でデザイン提供に決まったようで、まことに重畳。


「考えてみりゃ、レイノスに店出してからまだ四ヶ月でしょ?」

「はい」

「ドーラだって国が大きくなるんだから、こっちで着実に地力をつけるのが先だよ」

「仰る通りですね」


 あたしも大概せっかちな方だけど、セレシアさんを見てると不安になるのだ。

 あたしにブレーキかけさせるなんて大したもんですよ。


「店長候補を育てないとねえ」

「ええ。姉上はデザイナーとして動ける体制じゃないといけないですからね」

「とゆーか、セレシアさんにそう思わせとかないといけない」


 再びの笑い。

 経営と感性は別だよ。

 セレシアさんはデザインの方に一〇〇%力を注いでもらいたいのだ。

 ペペさんにも同じことが言えるけど、天才肌の人が才能を十分に発揮する環境を整えるのは、周りにいる人間の役割の気がするな。

 だから逆に天才は生産体制の確立に口出すな。


「『ケーニッヒバウム』にデザインを運ぶ段になったら教えてね」

「わかりました」

「今日これから移民が来るはずなんだよね。明日開拓地にお肉持っていくんだ」

「自分もお手伝いしますよ」

「ありがとう、助かるなー。じゃ、またねー」

「ユーラシアさんも身体を休めてくださいよ。働き過ぎじゃないですか?」

「あたしは大丈夫だよ。動いてないと退屈でかなわないの」


 笑ってるけどマジなんだってばよ。

 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ギルドにやって来た。


「あっ、ユーラシアさん、いいところに!」

「えっ、何事?」


 ポロックさんが『チャーミング』って言ってくれないと調子が出ないんだけど。


「バルバロスさんが来てるんだ」

「バルバロスさんが?」


 西域のクマ男バルバロスさん。

 こんなところまで足を運ぶの珍しいな。

 何の用だろ?


「バルバロスさんには挨拶してこよーっと」

「それからソールさんもユーラシアさんに会いたがってる」

「ソル君の用は見当つくけど」


 魔王関係だろう。

 トラブルじゃなきゃいいが。


「ポロックさん、じゃーねー」


 ギルド内部へ。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 あんたは可愛いのう。

 ぎゅっとしてやる。


「うーん、美女と野獣」

「ガハハ。そう言うな、精霊使いユーラシアよ」


 バルバロスさんは依頼受付所のおっぱいさんのところにいた。


「バルバロスさん、久しぶり」

「ああ、相変わらず元気だな」

「ガハハ笑いする人、今日二人目だなー。で、バルバロスさんどうしたの?」


 おっぱいさんが説明してくれる。


「先ほど依頼をいただいたのです」

「バルバロスさんが依頼? どんなの?」


 えーと、よく効く魔物除けの札一〇〇枚六〇〇〇ゴールド?


「以前試してくれともらった魔物除けの札があっただろう? まことに成績が良いのだ。従来型の魔物除けの札は西域の魔物にはさほど効果がなかったのだが、新型を用いればおそらく魔物による被害を一〇分の一以下に抑えられそうだ」

「そーなの? やったあ!」


 ボニーも欲しがってたから、効果あるんだろうとは思っていた。

 でもハッキリ実績を教えてもらえると嬉しいもんだ。

 新型の魔物除けの札は、西域開発の大きな力になりそう。


「あの新型をまとまった数が欲しいのだ。ドリフターズギルドなら販売してるかと思ったら、そうではないんだな?」

「新しい魔物除けはカラーズでしか売ってないんだよ。ごめんね」

「うむ、今知ったところでな。仕方がないので依頼受付所に頼んだのだ。確実に手に入ると思ったからな」

「さらにごめんよ、この依頼内容じゃ手に入んない」

「ど、どうしてだ?」


 驚くようなことじゃないんだが。


「魔物除けの札の値段が上がっちゃったんだ。今一枚一〇〇ゴールドなの」

「何だ、価格の問題か。あれほどの効果だものな。販売中止でなくてよかったぞ」

「よかったぬ!」


 ホッとするバルバロスさん。

 よしよし、ヴィルいい子。


「どうしようか? 依頼はキャンセルしてもらって、新たにあたしが一〇〇枚買ってきてもいいけど? サクラさん、いいかな?」

「結構ですよ。申し訳ありませんが、キャンセル料が五〇〇ゴールド発生してしまいます。よろしいですか?」

「うむ、かまわんぞ」


 おっぱいさんはしっかりキャンセル料を取るなあ。

 しかしおっぱいさんの揺れるおっぱいに大いに満足してそうなバルバロスさん。

 鼻の下が伸びてますよ。


「すぐ買ってくるから待ってて」


 黒の民のショップで魔物除けの札一〇〇枚を買い、特急で戻る。


「ただいまー」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 再び飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 バルバロスさんが面白そうだ。


「ハグは何度でもやるんだな?」

「何度でもやるんだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 魔物除けの札一〇〇枚を渡し、一万ゴールドを受け取った。


「西域で魔物が多いのって、カトマスと塔の村の真ん中辺り?」

「街道沿いだとそうだな。真に魔物に苦しんでるのは、街道から離れた集落だが」


 街道から離れた集落って今後メッチャ厳しいな。

 ドーラの発展から取り残されそう。

 しかし不便なところに集落を作るからには、特別な利点もあるんだろう。


「今後魔物除けの札が欲しかったら、塔の村のデス爺に頼むといいよ」


 バルバロスさんはカラーズには行ったことないだろう。

 デス爺は時々転移でカラーズにも顔出してるからね。


「うむ、助かったぞ、ユーラシアよ」

「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 バルバロスさんが去って行く。

 さて、ソル君達は食堂かな?

ドーラの発展のためには、西域開発も大きなテーマだ。

西域は魔物さえいなきゃいいんだけど、マッドオーロックスはおいしいからなあ。

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