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第1214話:特級聖女勲章が欲しいなあ

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。

 心の潤いであり、連絡と報告の機会であり、考えを整理する時間でもある。


「今日の午前中はかなり忙しかったんだよ」

『話を聞く前に確認だが、今月の移民は明日レイノス港に到着だな?』

「長ったらしく自慢しようと思ったら、いきなり出鼻を挫かれたぞ?」

『自慢って。思っても口に出さないようにしような?』

「あたしは正直美少女だから」

『どこまでもエンタメ寄りの性格だなあ』


 アハハと笑い合う。


「明日レイノスに到着で各地に分宿、明後日午後にカラーズ到着になる予定だよ」

『了解だ』

「西域の自由開拓民集落で移民を引き受けたいってところがあったんだ。ちょっとだけ、東へ来る移民は少ないかも」

『ほう、そうなのか?』

「うん。例えばポーンっていう集落は、最大二〇人くらい受け入れられるって話だよ。もちろんポーンみたいにうまくいってる自由開拓民集落は多くないけど」


 おゼゼをかけて大量に移民を受け入れる掃討戦跡地とは違う。

 西域は自然に大きくなるのが望ましい。

 でも経営がうまくいってる自由開拓民集落は、どんどん申請して移民を受け入れて欲しいね。

 労働力を調達するチャンスだから。


『ユーラシアの方はどうだったんだい?』

「えーと、ヤマタノオロチ退治の褒美として、騎士爵と特級勇士勲章をもらった」

『勲章持ちの騎士様か。偉そうだなあ』

「合わせて年金一〇万ゴールドいただけるんだって」

『大金じゃないか。その割にはつまらなそうな声だが』

「特級聖女勲章になんないかって言ったけどならなかった」


 大笑いされたわ。


「その後リリーのお相手候補だった帝都一の大店の子と新聞記者を連れて、ドーラに戻ってきたんだ」

『ふうん、何の用だったんだ?』

「大店の子ピット君は、店主のフーゴーさんにドーラを見聞させてやってくれと頼まれたんだ。新聞記者はパラキアスさんに連れてこいって言われてたの。どうして帝国政府はいらん海外遠征なんかするんだーって世論にしたいみたい」

『なるほど。哀れなピット君は魔境ツアー強制参加者となったんだな?』

「わかる? でも哀れじゃないわ」


 サービス精神旺盛なウルトラチャーミングビューティーが、料金も徴収せずに慈悲をくれてやったんだわ。


「もう一人、レベルが上がれば天気を知ることができるっていう固有能力持ちの脱落『アトラスの冒険者』がいてさ。二人に魔境ツアーを少々楽しんでもらった」

『本当に楽しんでたか?』

「『神様ヘルプ神様ヘルプ神様ヘルプ』って、地母神ユーラシア信仰が篤くなってたから全く問題ないな」

『……』


 無言の疑惑。


「結局のところ二人ともレベル上がったことを喜んでたよ」

『結果は大事か』

「全てよしだったね」

『ピット君を連れていったのは魔境だけじゃないんだろう?』

「うん。あとセレシアさんの店と塔の村へ」

『商人の子を伴う場所としては至極妥当だな』


 魔境は妥当じゃなかったのだろうか?

 魔境こそ将来商売になりそーなものがたくさんあると思うんだが。


「セレシアさんのファッションは、まだドーラに来てる貿易商にも紹介してなかったんだ。ピット君に見せとくのはちょうどいいかと思って。でもなー」

『ん? 何か問題があったのかい?』

「セレシアさんが危なっかしいこと、ピット君にバレちゃった」

『ははあ?』

「セレシアさんは感性豊かなタイプの人だから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさ。こんなことで足元見られちゃったら嫌だなー」


 帝都進出が可能になりそうで踊り出してたもんな。

 商人が計算もなく感情を表に出すなとゆーのに。

 もっともその程度のことで取り引きが中止になることはないだろう。

 何故ならセレシアさんのファッションは魅力あるから。


「三日後がお店休みだって言うから、セレシアさん一行を帝都一の店『ケーニッヒバウム』へ連れてく。でもセレシアさんの手綱を握れる存在がいないとなると、マジで向こうに不安視されるかもしれないんだ。ディオ君にも同行してもらいたいから、そう伝えておいてくれる?」

『わかった。青の民の方針として、ニューファッションをセレシア族長が、定番品をディオゲネス族長代理がと、完全に分業にしたのではないんだな?』

「ないない。ディオ君も帝都に行きたいって言質は取ってるんだ。ただディオ君の都合がわかんないじゃん? ディオ君なしでセレシアさん連れてくのは不安でしょうがない」


 サイナスさんが苦笑しているのがわかる。

 完全に分業してニューファッションをセレシアさんの独断で操縦するなんて、おっかなくてかなわんわ。

 せっかくいい風が吹いてるので乗りたいが、セレシアさん任せではどこに飛ばされるかわからんのだ。


「塔の村ではおかしなことになった。リリーが塔のてっぺんの悪魔ウシ子に会うって言ってたから便乗させてもらったんだ。あたしみたいなウルトラチャーミングビューティー以外は、なかなか悪魔に会う機会がないじゃん?」

『ウルトラチャーミングビューティーの取ってつけた感がひどい』


 ここはスルー。


「そしたら魔王から召集かかってて、ウシ子がすげー慌ててるの」

『何故慌てるんだ? 魔王配下なんだろう?』

「ウシ子は我が儘な子なんだもん。魔王に呼び出されて戻るなんてゆー、面倒なことしたくないから」

『高位魔族の理由を当たり前みたいに押しつけられてもわからん。忠誠心はないのか?』

「悪魔にそんなものあるわけないだろ。上下損得だけの関係だぞ?」


 あたしには理解しやすい理屈だけどな。

 え、あたしは我が儘だからって?


「で、実力が足んなくて断れないって言うから、明日レベル上げてやるんだ」

『高位魔族のレベルを? 危険だろう』

「あたしの言うこと聞け、人間と敵対するなってのを条件にしたからいいの。もし間違って魔王と人間が戦争になっても、ウシ子は敵にならない理屈じゃん?」

『なるほど、面白半分かと思ったら考えてるんだな』


 基本的にウシ子は塔の村で役立ってくれる子だしな。


「もうちょっと話したいことあるんだけど眠くなっちゃった。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はウシ子。

誰かあたしを聖女と認めてくんないかなー。

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