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第1213話:赤眼天使の不審な行動

 フイィィーンシュパパパッ。


「アリス、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あら、御機嫌よう」


 ピット君と新聞記者トリオを帝都に送ったあと、本の世界にやって来た。


「今日もコブタマン狩りなの?」

「もちろん。お肉こそ力、お肉こそ命の源、お肉こそ我がお腹の欲するところのものなり!」


 アハハと笑い合う。

 アリスは動くわけじゃないんだけど、笑ってるのはわかるんだよなー。

 可愛いやつめ。


「そろそろなんだよなー」

「何がですの?」

「来月の頭に、帝国の第一皇子の一ヶ月の喪が明けるじゃん? 帝国艦隊が出撃してどこか攻めるはずなんだ。アリス何か知らない?」

「来月草笛の月三日に三艦からなる艦隊が進発の予定。遠征先はソロモコね」

「やっぱソロモコかー。司令官はツェーザル中将であってる?」

「そうよ」


 ハッキリした答えだ。

 これは第一皇子逝去前から決まっていた作戦行動で、喪中にも作戦の変更はなされなかったということだろう。

 予定通りではある。

 遠征を取りやめてくれりゃ楽できるのに。


「ソロモコ遠征とは別の話だけど、カル帝国の海外植民地ラグランドが、圧政に耐えかねて蜂起するわ。日は決まっていないですが、来月の半ばよ」

「えっ?」


 予定外のイベント来たぞ?

 ラグランドってどこだっけ?

 地図で確認するとドーラから南東、ソロモコよりもっと東に行ったところだ。

 大体ドーラからは帝国と同じくらいの距離だな。

 あたしには関係なさそうだが……。


「ソロモコの方はあたしの担当なんだ。丸く収まる予定だけど、ラグランド蜂起が長引くと景気が悪くなっちゃうかなあ?」

「ラグランドは、カル帝国の海外植民地の中では最大の人口を誇るわ」

「マジか。じゃあ簡単に鎮圧できそうにないよねえ」


 不安要素が増えてしまった。

 知らん場所だし、これは誰かに伝えておくべきだな。


「考えても仕方ないな。お肉狩ってくる!」

「行ってらっしゃい」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 チュートリアルルームに来た。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃい、ユーちゃん」

「待ちかねてたと思うけどお肉お土産だよ」

「待ちかね福来たる!」


 小躍りするバエちゃん。

 お肉をエサに針つけといたら釣れる気がする。

 魚釣りを一度やってみたいもんだ。


「明日御飯食べに来ていいかな?」

「じゃあカレーにするね」

「楽しみだなあ」


 かれえいつ以来だったっけ?

 ミサイルと食べに来た時が最後だったか。


「最近ユーちゃん、あまり来てくれないのね」

「世界的なVIPになっちゃったからさ。なかなか時間が取れないんだよ」

「そうなの?」

「そうそう。今日あたし帝国で騎士爵授かったんだ。貴族扱いだって」

「えっ? 帝国ってちょっと前戦争してたところでしょう?」

「うん。人生はわかんないもんだねえ。『アトラスの冒険者』になってから、本当にいろんなことを経験させてもらってるよ」


 これは心から思うことだ。

 目で見える成果としては、帝国といい関係を築けていることが素晴らしい。

 まだ独立からさほど時間も経ってないのに、ドーラ人であるあたしが騎士爵をもらえるくらいだもんな。


「ところでこの前の脱走事件どうなったかな? 結果がわかんないと割と気になっちゃうんだけど」


 精霊使いエルを追っていると判明した一件だ。

 赤眼天使はどう動いている?


「こちらには連絡ないわ。あれっきりよ」

「何だ、そっか」


 指摘すべきか?

 藪蛇か?


「エンジェルさんは『アトラスの冒険者』の本部で、どれくらい偉い人なの?」


 聞けなかった。

 脱走犯はエンジェルさんの身内なのかと聞きたかったんだが。

 ……まず間違いなく、赤眼天使とエルは親子だ。


 あたしのカンでは、この件は尻すぼみフェードアウトにならない。

 必ず赤眼天使とエルが絡む展開になる。

 情報を得ておきたいが、バエちゃんが知ってる可能性は低いので自重したのだ。

 どう考えてもエルに聞く方が先だしな。


「所長なのよ。『アトラスの冒険者』事業の」

「所長って、運営本部のトップってこと? 一番偉い人?」

「そお」

「ちょっと待ってよ。何で『アトラスの冒険者』事業のトップが警察のマネごとしてるのよ?」

「えっ? 知らないわ」

「知らないんだぬ!」


 逃げたエルが肉親だからです。

 いや、赤眼天使の不審な行動はひとまず置くとして、バエちゃんの反応に不自然なところはないな。

 やはりバエちゃんは何も知らされてない。


「脱走事件が『アトラスの冒険者』に関係あるってことはないんだよね?」

「ないと思う。あればもっと具体的な指示があるはずだから」

「もっともだねえ。じゃあエンジェルさんは『アトラスの冒険者』事業を疎かにしてるのか? どういうことだよもー。所長って暇なん?」

「暇ってことはないわよ? 関係機関との折衝や予算の確保、職員の人事や新人の選定まで全てに関わっているんだから」

「じゃあ何でだ? 現場を舐めていやがるのか?」


 バエちゃん困ったような顔してるけど、あたしは怒ったフリしてるだけだぞ?

 どういう経緯があったか知らんけど、旧王族である赤眼族の監視を行う目的の『アトラスの冒険者』のトップが、旧王族の子を産んでるのは結構なスキャンダルなんだろう。

 他の人員を動かしにくいから自分が動いてるに違いない。


 ってことは、赤眼天使と脱走犯エルが親子だと気付いている者は、今のところあたしだけなのか?

 いや、向こうの世界で誰かが感付いたから、慌てて赤眼天使が動いてるってこともあり得るか。


「……ふーん、面白いかも」

「えっ? 何が?」

「いや、もう一度エンジェルさんに会うことがあったら、もっとダイレクトにおっぱいを攻撃してやろうと思って」

「シスター・エンジェルが無乳を気にしているのは公然の秘密なのよ?」

「『アトラスの冒険者』を舐めてるやつは報いを受けるのだ。徹底的にだ」

「徹底的だぬ!」

「アハハ、ヴィルはいい子だね」


 こう宣言しておけば赤眼天使はあたしを恐れて、エルがこっちの世界にいる決定的な証拠を掴むまでコンタクトを取ろうとしないだろう。

 つまり時間を稼ぐことができる。

 しかし得られた時間で、バエちゃんから情報を得るくらいしかやれることがないな?


「ま、いーか。帰るね。明日楽しみにしてるよ」

「うん。またね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

ようやくソロモコ外征が動き始める上に、ラグランドという新要素が追加。

赤眼天使ことエンジェル所長の動向も気になります。

複雑にするのは筆者の趣味です(笑)。

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[良い点] 「いや、もう一度エンジェルさんに会うことがあったら、もっとダイレクトにおっぱいを攻撃してやろうと思って」 「シスター・エンジェルが無乳を気にしているのは公然の秘密なのよ?」 →親子かもっ…
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