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第1211話:悪魔との付き合い方レクチャー

 塔最上階からの帰還後、リリーと黒服、ピット君、モジャ頭のチャラ男ケンと話し合う。


「チャラ男ありがとう。あんたの固有能力『外交官』には期待してる」

「オレ自身にも期待してくれよ、ウルトラチャーミングビューティー」

「両者に違いはあるんか?」


 どうせ『外交官』も、レベルが上がった方が効果の高い固有能力だろ。

 パッと見今のモジャ男は、中級冒険者にちょっと届かないくらいのレベルだ。

 あんまり真剣に冒険者活動はしないスタンスなんだろうが、特に心配はいらないな。

 面倒な亜人に会ったり、亜人との交易ステーションを作ったりしたら活躍してもらお。


「リリーと黒服さんは今から昼御飯なんでしょ?」

「うむ、そうだ」

「明日は『ザガムムのお守り』の効果がないって、なるべく多くの冒険者に知らせといてよ。チャラ男は探索出かけようとする人に注意してね」


 黒服が言う。


「ユーラシア様、よかったのですか? レベル上げの安請け合いをして」


 悪魔をレベル上げすることに関して不安を感じるのだろう。


「いいんだ。地下の魔物は強いじゃん? 『ザガムムのお守り』使ってもドラゴンクラスが相手となると、ちょっとウシ子のレベルじゃ足んないなと思ってたところだから。もっと言うと、たとえ魔王対人類の対立構図になっても、ウシ子は約束に縛られて動けない」

「「「「……」」」」


 全員が言葉を失う中、いち早く立ち直ったモジャ男が言う。


「……魔王対人類ってのはどういうことだい? そういう可能性があるのかい?」


 リリーと黒服は知ってることだが、魔王の尊敬の感情を集めるシステムと現在の魔王が人類と敵対していない理由、ソロモコの現状を話す。

 ピット君もよく聞いといてちょうだい。


「……ってわけで、ソロモコが帝国に占領されちゃったりすると、間違いなく魔王は怒っちゃう」

「大丈夫なんですか?」

「まーソロモコはあたしのクエストだし。帝国海軍がソロモコを占領することはないよ。そこまでは請け負うけど」

「実際に魔王がどうした対応を取るかはわからない、と?」

「魔王の直轄地たるソロモコに狙いを定めるとは何事だーみたいな沸点の低さだったりしたら、どうにもなんないじゃん?」


 魔王に会ったことないから、どんな子だかわかんないんだよな。

 ピット君とモジャ男が衝撃受けてるわ。

 リリーが言う。


「不確定の未来を考えても仕方ないであろ?」

「この話題飽きちゃった? リリーは大物だな」

「今日は朝早く起こされたから眠いのだ」

「朝早くの基準が大物だな」


 アハハと笑い合う。

 ん? ピット君どうした。


「悪魔との付き合い方についてですけれども」


 ふむ、不確定事項の多い魔王について考えるのはやめたらしい。

 ピット君は現実的だな。


「今のウシ子は問題ないよ。人間に認められることは気持ちいいってわかってる子だから。何かお土産持っていくと、確実に話聞いてくれる」

「初見の悪魔だとどうです?」

「難しい。好感情好きのヴィルみたいな例外を除いて、基本的に悪魔は悪感情を好むじゃん? だから初対面だと上から目線でバカにしてくると思う」


 まあでも高レベルのあたしをバカにすることはなかった。

 相手を選ばないほど脳足りんではないらしい。

 ……ウシ子は割と標準的な悪魔みたいだから、むしろウシ子に悪魔との付き合い方を聞いたら、報酬次第で教えてくれるかもしれない。


「そこで怒ったり恐れたりすると悪魔の思う壺だよ。悪感情を与えないように気をつけてね」

「悪感情が得られないとなるとどうなります?」

「拘る理由がなければどこか行っちゃうと思う。あんまり悪魔をどうにかしようと考えない方がいいよ。ヴィル以外の悪魔は、結局上下関係で判断しようとするからね」


 リリーが言う。


「ユーラシアは悪魔とうまく付き合っているではないか」


 レベルが高いから悪魔を実力で恐れ入らせることができるというのが大きい。


「あたしはどの子もそれなりに面白いから好きなんだもん。悪魔は悪感情よりも認められることの方が好みなんだ。ウシ子もそうでしょ? お助けキャラとしておだてられると気分がいいから、塔にいたいの」

「認めてやればいいのか?」

「初見の悪魔だとどーかな? こっちのレベルが低いんじゃ効果は小さいと思う。チャラ男の『外交官』みたいな特別な固有能力持ちなら別なんだろうけど」


 第二皇子の『魔魅』とかな。

 チャラ男が聞いてくる。


「さっきの『世界中にウシ子は約束も守れない最低の悪魔だって言いふらす』ってのは脅し文句なのかい? ザガムムは随分嫌がってたじゃないか」

「悪魔はプライドが高いんだ。他人を下に見ようとすることの裏返しだね。契約や誓約を守ってフェアな取り引きをすることがその矜持の表れで、当たり前のことすらできないってバカにされるのをものすごく嫌がるの。不名誉な事実が皆に知られちゃうということは、悪魔にとって恐怖でしかない」

「ははあ」


 納得する全員。

 黒服が聞いてくる。


「実際のところ、知らない悪魔が目の前に現れる状況というのはあるものですか?」


 さあ、これは正直わからんのだが。


「うちのヴィルは『パワーが強い』って言い方するけど、悪魔は実力者には興味があるんじゃないかな? 高レベルの人とか支配者階級の人のところには、ひょっこり姿を見せることがあるみたいだよ。例えばこの村の村長デス爺とかフリードリヒ公爵は、昔悪魔バアルに会ってたりする」


 リリーなんか影響力の強い皇女だしな。

 高位魔族が寄ってきてもおかしくないんじゃないか?

 もっとも悪魔個人の性格や嗜好にもよると思う。


「まあもし知らん悪魔が近付いてきたら、毅然とした態度取って相手にしなけりゃ間違いないよ。できればとっ捕まえてあたしに会わせて欲しいけど」


 アハハと笑い合い、空気が軽くなる。


「ユーラシアはこれからどうするのだ? 昼食は塔の村で食べてゆくのか?」

「レストランドーラ行政府で食べることになってるんだ。そろそろ行かなきゃ」

「約束があるのか。では仕方ないの。ユーラシア、ピット殿、さらばだ」

「リリー様、再会を楽しみにしております。皆様もお元気で」

「じゃあまたね」


 転移の玉を起動し、一旦ホームに戻る。

 何故レストランに直接飛ばないのかって?

 うちの子達の昼食代を浮かすためだよ。

悪魔も損得で動いてるからな。

得もないのにまとわりついたりはしない。

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