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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1201/2453

第1201話:他人の失敗を笑うのは趣味が悪い

 ――――――――――二〇五日目。


 フイィィーンシュパパパッ。

 皇宮に着いた。


「おっはよー」

「やあ、精霊使い君。おはよう」


 いつものサボリ土魔法使いだ。

 いつ来てもこいついるなあ。


「皇宮近衛兵の勤務時間ってどうなってんの? あんた見てると不思議に思う」

「基本的には昼番、夕番、深夜番の三交代制だな。非常時にはその限りではないし、君が鑑定士を連れてきた時は全員招集だったが」

「へー。でもあんたはいつもここにいるじゃん」

「俺は最近ここ固定なんだよ。代わりに朝八時~夕方六時までの一〇時間勤務になっている」

「楽なんだか拘束時間が長くて大変なんだかよくわからん」


 美少女精霊使い番と思えば固定されてた方が面倒はないな。

 とゆーかマジであたし番なのでは?

 笑いながら近衛兵詰め所へ案内される。


          ◇


「おっはよーって、殿下も記者さん達も早いね?」


 今日も早よからウルピウス殿下と記者トリオがいる。

 何で?


「ユーラシアさん、『ケーニッヒバウム』へ行くと仰ってましたので」

「お供しようかと」

「仕事熱心だねえ」


 どこぞのサボリ土魔法使いと違って。

 ウケる記事ネタをゲットするために貪欲なのは評価できる。


「ユーラシア」

「何だろ?」


 ウ殿下が話しかけてくる。


「ヤマタノオロチ討伐の件でだな。結局ユーラシアには騎士爵と特級勇士勲章が与えられることになったのだ」

「ありがとう、もらう」

「予が授けるのではないからな?」


 アハハ。

 騎士爵って名前は知ってるけど正確によくわからんから、どういうものか教えてもらった。

 封地を持たない、原則として一代限りの貴族の称号だそうな。

 騎士団の正隊員や一定以上の位階の文官に相当し、民間人でも功績があると授与されるとのこと。


「妥当だよね。いきなり男爵で領地治めろってのはビビるわ」

「うむ。功績から言えば男爵は不当ではないが、今まで外国人が男爵とされた例などもちろんないしな。波風を立てないためにもよかったのかもしれん」


 あたしが男爵では国内の貴族の反発も予想されたということか。

 まー偏見はどうにでもなるけど、色眼鏡で見られてちゃ経営が軌道に乗るまで時間がかかることは事実だな。

 やはり領地経営で困ったあたしが、主席執政官に泣きつくところまでが想定されてたのだろう説が濃厚。


「じゃあ、施政館にお礼言いに行った方がいいね」

「というか、ドミティウス兄上から呼び出しがかかっているのだ」

「帝国施政館って何時から開いてるのかな?」

「九時からですよ。今から行くとちょうど開きます」

「じゃ、先に施政館行こうか」

「「「お供いたします!」」」


 記者トリオとともに施政館へゴー。


          ◇


「ユーラシアさんは聖女みたいな扱いなんですよ」

「あたしが聖女っぽいのは間違いないけど、どういうことだろ? 参考までにどの行いが聖女風味だったか教えてくれない?」

「牙の売却代金を全部寄付されたでしょう?」

「それかー。聖女の称号をおゼゼで買えてしまう世の中」


 アハハと笑い合う。

 記者トリオと話しながら施政館への道中だ。


「ヤマタノオロチ退治の顛末を、かなり細かく書かせていただいたんです」

「記者さんが実際に魔物退治の現場を見た記事ってのは、なかなかないかもしれないね。でもあれは失敗だった」


 マジでやり直したい。


「あたしも気が逸ってたのかもしれないよ。最初首落とすタイミングを遅らせてこっち向いたところで撃っていれば、首再生が揃ってたと思うんだよね。もうちょっと牙を取れたはず」

「いえ、その条が大変面白いと」

「ええ? 他人の失敗を笑うのは趣味が悪いなあ」


 十分に反省しているのだ。

 今度ヤマタノオロチが出たらもっとうまくできると思う。

 記者トリオが笑う。


「ヤマタノオロチほどでなくとも、大型魔物の討伐はたまにあります。記事は決まって討伐隊隊長のインタビューと成果報告です」

「わかる、当然そうなるよねえ」

「苦心談と自慢を語られても、聞く方読む方はつまらないわけですよ」

「死者何名と書くのもツラいです」


 軍が討伐するんじゃ足手まといの記者なんか同行させられないしな。


「今回は死者負傷者ゼロです!」

「我々を現地に連れていってもらえたので、臨場感のある記事になりましたよ」

「喜んでもらえたのは嬉しいけど、相手がヒドラの類ってわかってたからだぞ? ドラゴンじゃ危ないもん」


 ドラゴンは飛ぶし突っかかってくるし言うこと聞かないのだ。

 動きも素早いしな。


「でも魔物に対して軍が向かうってのは犠牲が大きくなるよね」

「ユーラシアさんもそう思われますか?」

「思う。大体現地行くまでに時間かかっちゃうじゃん。高レベルの人が数人いれば倒せるから、対大型魔物の特殊部隊が一つあればいいんだけど、帝国では難しいでしょ?」

「人員を高レベルにすることがですか?」

「ノウハウがないとレベリングは大変かもな。でもあたしが言ってるのは、高レベルの人達が国に逆らったら大変なことになっちゃうって意味だよ」


 意のままにできない強力な力の持ち主は、政権にとってみれば厄介な代物だろう。

 息を呑む記者トリオ。


「ゆ、ユーラシアさんでも警戒されたりするんですか?」

「あたしは警戒されないように、ちゃんと政府のお偉いさんとコミュニケーション取ってるだろーが。それにあたしは品行方正かつ容姿端麗かつ純情可憐だから、皆の得にならないことはやんないぞ?」


 皆ハッピーあたしもハッピーが原則なのだ。

 面倒なことが嫌いってのもある。

 ただ高レベル者が全員、あたしのように高潔な精神の所持者ってわけじゃないからな?

 『アトラスの冒険者』が道徳心を選定基準に入れてるのは正しい。


「あたしの冗談口だって、お偉いさんに警戒心を起こさせないための手段だぞ?」

「ええ? ユーラシアさんの口調は素ですよね?」

「バレたかー」


 アハハと笑い合う。


「昨日ドーラ行政府で、帝都の記者さん達を連れてこられないかって言われたんだ。記事ネタくれるんだと思うけど、あとで行く?」

「「「行きます!」」」

「じゃ、施政館行って『ケーニッヒバウム』寄ってドーラ行政府の順だな。多分お昼御飯食べさせてくれると思うから、そしたら戻ってこようか」

「「「はい!」」」


 今日の予定は決まったな。

 施政館にとうちゃーく。

 帰る頃には騎士様だぞー。

まー自慢話より失敗談の方が聞いてて楽しいもんだ。

やむなし。

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