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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1079話:『悪役令嬢のドーラ西域紀行珍道中(仮題)』

 結局フィフィとオト君のレベルは八、執事のレベルは一七となった。


「踊る人形にあんまり遭えなかったのは残念だったなー」

「ねえ、この魔宝玉はいくらくらいになるの?」

「フィフィはえらく金銭感覚が敏感になったなあ。いいぞいいぞ。ドーラでの売却価格は、墨珠が四〇〇ゴールド、黄珠が二〇〇ゴールドくらいだね」


 帝国ではもっと高いんだろうけどな。

 今日の収獲は『スライムスキン』以外の素材はあたし達がもらっているが、その他のアイテムはフィフィパーティーのものという取り決めだ。


「ふうん、そんなものなの」

「いえ、お嬢様。結構な収入になりましたよ」


 冒険者になりたての時は、一回の探索で五〇〇ゴールド分の売却益が出たら万々歳だと思うけどね。

 レベルが上がって探索時間が長くなったり、高い階層に行けるようになったりしたら、自然に収入は増えるよ。


「フィフィは欲張りだなあ。じゃあやる気の出る話をしてやろう」

「何ですの?」

「当然と言えば当然だけど、人形系レア魔物は強いやつほど素敵な魔宝玉をドロップするんだ。で、ドーラにはウィッカーマンってやつがいるんだけど……」


 驚く執事。


「ウィッカーマン? 絶対に倒せない魔物と聞きましたが……」

「かなり難しい。でも工夫次第で倒せなくはないんだ。でもあれ倒せるの、今のところまだうちのパーティーだけだな」


 『コピー』を使えるパワーカード『刷り込みの白』を手に入れることができないとしても、『アンリミテッド』『あやかし鏡』『前向きギャンブラー』を前衛二人が装備し、『アンリミテッド』の衝波属性の乗る強力なスキルを持っていれば、レベル次第でやっつけられる理屈だ。

 ま、相当難しいのは変わらないけれども。


「ウィッカーマンのレアドロップは鳳凰双眸珠なんだ」

「えっ!」

「何なの? マテウス、知識を披露してもよくってよ」

「鳳凰双眸珠は世界に一つだけ、皇室の宝物庫に保管されているものしかないと言われている魔宝玉です! 世界の至宝です!」

「と、言われているけど、ドーラには結構あるんだ。これだよ」


 その名の通り二つの目があるように見える魔宝玉を、ナップザックから取り出す。

 瞠目する執事。


「これはとても綺麗ね! いくらなの?」

「すぐ値段の話になるがっつき加減がひっじょーに冒険者的だね。いや、これ売ったことないんだ。買える人いなさそうだし、いっぺんに放出したら買い叩かれそうじゃん? 年一個くらい、帝国に売ってもいいかなって話してるの」


 しげしげと鳳凰双眸珠を眺めるフィフィパーティーの三人。

 魔宝玉は高ランクのやつほどすげえって、見ればわかるんだよな。


「……努力次第で国宝級の魔宝玉を手に入れられるってことね?」

「そゆこと! でも冒険者に拘らなくたっていいんだぞ?」

「えっ?」

「フィフィは生活を安定させるために冒険者になることを考えたんでしょ?」

「もちろんですわ」

「で、今日の探索を経験してみて、おゼゼを稼ぐことについては何とかなりそうな気はしてるんじゃないかな? 今後レベルが上がればより稼ぎやすくなるし」

「ええ……確かに」

「じゃあその次を考えたっていいでしょってこと」

「その次?」

「あんたが言ってたように、ドーラがビンボーなド田舎であることは事実なんだよ。何とかしたいじゃん?」


 ようやく鳳凰双眸珠から目を離し、こちらを見るフィフィ。


「いっくらお金を持っていても、ものが売ってなければ買えないんだよ」

「……当たり前なのですけれども、ドーラに来るまでは気付かないことでしたわ。帝都は何とものが溢れていたことか」

「人口も少ないしさ。フィフィもドーラには足りないもの多いと思うでしょ?」

「欲しいものを手に入れ得るならド田舎じゃないわ」

「おおう、名言風だね」


 でも確かにフィフィの言う通りだ。


「あたしはドーラをいい国にしたいんだよ。人口はどんどん増える。今年一年で一万人は移民が来るって話なんだ」


 執事が頷く。


「人口比からすると大変な規模ですね。食料事情が大変なのでは?」

「移民はほとんど東の開拓地で受け入れる予定だよ。水事情のいいでっかい平野があるの。デス爺も将来的にドーラ最大の都市になるって言ってるしね。あっちに集中的におゼゼ投入して、大耕作地にするんだ」

「ユーラシア様は政治家のようなことを仰る」

「それ、よく言われるけど、あたしはやりたいことやってるだけなんだよ。人口は時間で増えてくからさ。あとは輸出品を増やしてドーラを金持ちにしないと」

「ドーラの輸出品というと、まず魔宝玉、コショウくらいですか……」

「あっ、あのお茶?」

「そうそう、ドーラにだって帝国にない優れたものはあるから、どんどん掘り起こす。水魔法もかなり注文入ってるんだ。本来はお茶淹れる用だったんだけど、辺境開拓や軍務、航海に必須、旱魃にも有効だろってことで。こんなものも輸出するよ」


 画集と札取りゲームを見せる。


「これ貴方が表紙ね。あっ、リリー様の絵も?」

「なるほど、字を覚えさせるゲームですか。これは読み書き教育に有効でしょう」

「あたしはドーラを何でも手に入れられる国にしたいんだ。他所の国にあるいいものをどんどん取り入れていく。同時にドーラをお金持ちにしてガンガン輸入規模も拡大する。で、フィフィにも協力してもらいたい」

「……といっても、私には何もないけれど?」

「『悪役令嬢のドーラ西域紀行珍道中(仮題)』があるだろ」

「あっ、やったことを記録につけておけというのは……」


 まあリリーに土産話というのも、まるでフェイクというわけではないけれど。

 あたしも読みたいし。


「帝国に輸出したら、フィフィ自身の知名度もあってメチャクチャ売れちゃうな」

「笑い者になるのは嫌!」

「笑わせるんだぞ?」

「何が違うのっ!」

「笑われるのはバカにされちゃうことだけど、笑わせるのはあんたの掌の上で転がすことだぞ? 笑われたら負けだけど、笑わせるのは勝ち」

「……」


 納得いかないか。

 今日はまだ冒険者生活第一日目だから。


「考えといてよ。今日はあたし帰るけど、そろそろリリー起きてくると思うよ?」

「え? ええ。ありがとう」

「いいんだぞ? あんたが冒険者活動を一生懸命やることだって、ドーラの利益なんだから」


 転移の玉を起動し帰宅する。

まだまだドーラは小さい国だ。

逆に言えば、発展の余地がメッチャある。

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