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 聞こえる鳴き声は、通常の馬ではなくペガサス。魔側で育った、羽を持った馬だ。

 窓の外は案の定、空である。下に民家だろう灯りがあり、幻想的である。


 ただ、それよりも逆隣にいるレイドの方が素敵だ。


 膝の上で拳を握り、背筋を伸ばして緊張している。衝動のままに、その頭を撫でた。

 毛艶はあまり良くない。国に帰ったら、念入りにケアするよう侍女に言おう。


「る、るる、るるるるる、ルルーミネ様!? お手、お手が、汚れてしまいます!」

「ルミ」

「ふぇえ!」

「ルミ」


 丁度いいタイミングだ。愛称を繰り返しながら撫で続ければ、少し葛藤した後、恐る恐るレイドが口を開いた。





「る…………ルミ、様…………………!」





 上目遣いで照れ顔。強い衝撃を心臓に感じ、思わずそこを押さえた。慌てて心配する声が降ってきて、それが更に追い討ちである。


「ハハッ。妬けるな、我が最愛」

「もお、リューくんったらぁ〜」


 ルルーミネ達を見て、対面に座るリュシオンとメランコリーもいちゃつき始めた。

 自分達の方が仲良くしているのに、何が妬けるのだか。

 冷静を取り戻したルルーミネが大きく息をつく。レイドを見たいが、見たらまたトキメキが止まらなくなる。

 なんというジレンマだ。


「あの、リュシオン皇太子殿下。恐れながら、聞きたいことが」

「うーん。堅っ苦しい話し方だなぁ? ルルのお気に入り認定だ、是非ともお義兄様と呼んでくれ! もちろん、義兄上や義兄さん、お義兄ちゃまとかもOKだ!」

「恐れ多いです! そもそも、ルルー……ルミ様とメランコリー様が取り換え子だとして、()()()()()()()()()()()のですか?」

「……ほう。そう考えた根拠は?」

「ルミ様の悪い噂は、平民の俺にも届いていました。取り換え子の事実を言えば、直ぐに沈静化したはずです。それをしなかったのは、ルミ様とドクマール魔帝国という強大な繋がりを悪用されない為かと……先程も、約束付きの婚約と仰っていましたので」


 当たっている。賢い横顔も素敵だ。手元にカメラがない事が悔やまれる。

 見事に的中させたレイドの発言に、リュシオンはニコニコと拍手を送った。


「いい推理力だ! おおよそ、その通りだよ! ルミの真実を知るのは、向こうの国王夫婦と義父上、教会のお偉いさん達だけさ」

「やはり、エイダン殿下やジェナス様はご存知なかったのですね……」

「約束では、口が固く信頼できる人なら告げていいと言っていたよ? そこに値しない愚者だと、さっき思いっきり 示していたからね」

「普通の剣で首チョンパしてもぉ、ドクマールの王族には効かないからねぇ。だってぇ、ドラキュラの血が強めだもん。ルルちゃんは()()()()()()()()()けどぉ、ただの物理では死なないよねぇ?」

「そうだな! オレに至っては、心臓に杭を打たねば死なないというのに! しかし、血は飲まないぞ? 普通の食事を我が最愛と取れば十分さ!」


 メランコリーの腰に手を回し、密着してリュシオンは事実を述べていく。

 新たな情報を吟味して考え込むレイド。口を手で隠しているが、小声でブツブツと呟いている様はルルーミネからはしかと目に入る。

 心臓がうるさいが、見ない方が損である。

 ルルーミネの熱い眼差しにすぐに気づき、レイドはまた顔を赤らめた。また考え込み出したが、耳まで赤みが残っている。

 可愛いことこの上ない。


「ええと…………取り替えは早い内に気づかれましたよね? 妹君であるメランコリー様と婚姻されておりますから」

「その通り! 何せ、我が最愛は聖女だ。教会のお偉いさん達はすぐに気づいて、駆けつけてみればいたのはルル。ちなみに、オレ達側はすぐに気づいたよ」

「取り換え子、チェンジリングは妖精の仕業と存じています。犯人は、魔側ですか?」

「それもそう! 父上に横恋慕していた妖精がやったらしい。ただ、拷問による自白では、聖側に協力者がいたとかなんとか。そいつが交換する赤子を連れてきたらしいぞ? 詳しくは知らんが」

「なるほど……取り換え子をそのままにするメリットが魔帝国側にはありませんが、犯人の処遇を突かれたのですね」


 頭の回転がよすぎる。レイドはいいとこ取りして産まれたようだ。それの代償が今までの環境だろう。

 生まれの地位しか取り柄がないエイダンとは雲泥の差がある。ジェナスも同様だ。


「そこもあるが、一番はオレが我が最愛を手放したくなかったからだ!」

「え、え!?」

「一目惚れだ! オレの隣を歩くのはコリーしかいないと思った矢先に、なかなか会えない場所で育てる!? 絶・対・反・対!」

「その時の大暴れで、城が三割ほど破損したのよね」

「正確にはぁ、ほぼ四割に近いのぉ」


 きゃっと頬を赤らめるメランコリー。その反応に愛おしそうに見つめるリュシオン。また二人の世界に浸ったようなので無視して、レイドの手を握って落ち着かせる。

 破損の事実に青くなった顔色が、ルルーミネの手で赤に戻る。自分への恋心が勝っていると、嬉しくなった。


 当時、リュシオンはまだ五つだった事はまだ言うべきではないだろう。卒倒してしまいそうだ。

 寝顔もきっと可愛いだろうが、今はレイドと話がしたい。

 そもそも、ルルーミネは恥ずべき事に、先程までレイドを知らなかったのだ。知りたい情報は山ほどある。


「レイド様。私、貴方の事が知りたいの。教えてくださる?」

「ももっ、勿論です!」


 身体を密着させると、熱くなった体温が衣類越しに伝わってくる。

 互いに心臓の音も聞こえそうだと思いつつ、ルルーミネはレイドの顔を凝視し続けた。


デレが増え始めた所で、次回より場面が変わります


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