第27話 だから今生は・・・
そして俺は今、転成した先で自分の描いていた物語の世界に入っている。
最初はそりゃ混乱したさ。自分が知っている物事通りに人生が進んでいってるんだから。でもこれは裏を返せば、前世のような失敗は絶対にしない道筋が途中までできあがっているって事だ。
結末が構想していたシナリオ以外分からないというのが難点だが、そう思えばこれを利用する手は無い。俺は書いていた物語通りに人生を進ませ、以前には無かった強さを手に入れた。
今だって、暗殺者からの攻撃を回避しきり、大量にいたそいつらを見事に返り討ちにして見せた。
「ハァ・・・ ハァ・・・ 流石にゴブリンとはレベルが違うな・・・」
『ま、明日のことが書かれている以上、ここで俺が死ぬわけは無いからな・・・』
「ウッ!・・・ ウゥ・・・」
俺はまだ意識を保っていた暗殺者に詰め寄り、服の襟を持ってそいつを引っ張り上げた。そしてドスのきいた声で質問をする。
「教えろ。あの王子はどこに行った?」
相手の方は恐怖に怯えた顔をしながら俺を見てくる。
「ヒッ! ヒィ!!ーーーーーーーーー!!! も、もういないんだ!! あの人は、結婚式の準備で・・・ 式場の方に・・・」
『この時点で移動していたのか!!・・・ 深夜の間に向かうか? いや、今でさえこの様だ。下手に勝手に動くと余計なダメージを負いそうだ・・・』
俺はその暗殺者を下ろし、今晩寝られる場所を探してその部屋を出て行った。その後でこの部屋では・・・
「クッ・・・ ええぃ・・・ おのれぇ・・・」
さっき俺が話した暗殺者が足を震わせながらゆっくりと立ち上がっていた。
「早く・・・ このことをウルゼ王子に・・・ 伝えなければ・・・」
暗殺者は事前にポケットに入れていた紙を取り出し、目を閉じてそこに力を入れた。するとその紙にジワァっと文字が浮き上がってきた。彼がウルゼ王子に伝えようとした内容だろう。
「ヘッヘッへ・・・ 覚えていろ。馬鹿め・・・ このままでは・・・ すまさんぞ・・・」
そしてその暗殺者は手紙を紙飛行機の形にして窓から飛ばそうとした。これがこの世界での伝達方法の一つなのだ。
え? なんで俺がこのことをここまで詳しく話せているかって? それは・・・
「何してんだ?」
「!!?・・・」
暗殺者が突然聞こえてきた声に振り返ると、さっき立ち去ったはずの俺がいた。そう、俺はなんとなく暗殺者が悪巧みを働くと予想して戻ってきたのだ。結果は予想通りだった。
暗殺者は紙飛行機を丸め、誤魔化そうとしてくる。
「ま! 待ってくださいよ!! 何でまたここに・・・」
暗殺者が焦っている中、俺は彼に近付く。
「いや、忘れてたことがあってな。」
「わ、忘れていたこと?」
そして俺は、そいつに一発拳をぶつけて気絶させた。
「グホッ!!・・・」
俺はそいつの持っていた紙を破り、今度こそ野宿先を探しに部屋を出た。
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瓜『とうとう二週目入っちゃいました・・・』
『魔王子フレンド~私と異世界の赤鬼さん~』もよろしくお願いします!!