第21話 入院
そうして俺がおばさんから事の顛末を聞いて一週間後、織姫の入院が決まった。俺はその日には見舞いに行った。病室に入ると、彼女の綺麗な髪が、開いた窓から吹き抜ける風によって浮き上がっているた。
俺はこんな状況なのに、入ってすぐそれに見とれていた。すると彼女の方が俺に気付いたようで、こっちに顔を向けて笑顔で声をかけてきた。
「あ、牛尾! 来てくれたの?」
俺は彼女の声を聞いてハッと我に返り、見とれていたことを誤魔化すように動揺しながら話し出してしまった。
「あ、当たり前だろ!! 俺は、お前の友達なんだからな!!!」
「フフッ・・・ そうね。」
織姫はクスクスと笑って見せたが、幼い頃から彼女の表情を見慣れていた俺は、その笑顔が作り物だと言うことがすぐに分かった。
「ほらこれ、お見舞いの果物。いっぱい食ってはやく治せよ!!」
「わかってる。ありがとうね。」
そうして俺は彼女の近くに座り、たわいもない会話を楽しんだ。すると彼女は、その途中でこんなことを言い出した。
「そういえば今日はないの? 学校での話。」
「エッ!?・・・」
俺は聞かれたことの返答に戸惑う。実のところ、今日の学校は最悪だった。いつも書いていた物語が一部のクラスメイトに見つかり、更にそれを周囲に晒されたのだ。
「どうかした?」
「あ、いや・・・ 今日はとくになにもなくてな・・・」
「ウッソだ~・・・ 何かあったでしょ?」
彼女の察しのいい言葉に、俺は痛いところを突かれた気分になる。そこで俺は一部正直に話すことにした。
「その・・・ 趣味で物語を書いていたノートが、なくなっちまってな。」
「物語!? どんな!!?」
「たわいもない駄作だよ。はずいからあんまり聞かないでくれ・・・」
「えぇ~・・・ でも興味があるなぁ~・・・ 今度来たときに見せてよ!!」
「おいおい・・・ からかうなよ。それになくしちまったって言ったろ。」
「あ・・・ そうだったね。」
俺はそこから話の内容を変え、しばらくして病室から出た後、自分も作っていた笑顔を崩して、本音を示す沈んだ顔になった。
以前からおばさんにから聞いていたことだったとはいえ、いざ目の前に起こるとやっぱり落ち込んでしまうものだ。
織姫の病気は、端的に言って『不治の病』って奴だった。幼少期のときから薬で延命してきた形だったのだが、とうとうそれも限界らしい。
彼女本人は当然俺なんかよりよっぽど辛いだろう。さっきの窓の風に当たっていたのも、そんな自分の気持ちを少しでも誤魔化すためのものなのだろう・・・
「・ ・ ・ よぉし!!」
それから俺は、毎日のようにお見舞いに行き、新しく書いた物語を見せるようになった。
魔王「面倒くさい・・・ 『ブックマーク』と『評価』しとけ!!」
イグル「めんどくさがるなよ!!」
『魔王子フレンド~私と異世界の赤鬼さん~』もよろしくお願いします!!