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第15話 侵略戦争ウォークライ その3

【 リン 】 ライフ:4000

ブリード・ワイバーン《成長0回》

 攻撃300/防御300


【 プロセルピナ 】 ライフ:4000

ケンタウロスナイト

 攻撃2000/防御2200

「じゃあ、あたしはこれでターンエンド」


「わたくしのターン、ドロー!

 2ターンも攻撃できないのは不服ですが……

 お互いに動けないというなら、それはそれで陣営を整えられますわ」


 たった1体のコモンユニットを出し、【平和的軍事条約】を2ターンに引き伸ばしたことで、どうにか落ち着くリン。

 それに対し、圧倒的な優位性を誇るプロセルピナは、順調に自陣を整えていく。


「ユニット召喚! 集え、戦士よ!」


 再び古戦場に角笛が鳴り響き、またしても【タイプ:人間】のユニットが追加された。

 今度は普通の人型で、甲冑を着込んだ騎士が大きな軍旗を(かか)げている。


Cards―――――――――――――

【 ジェネラル・ウォーリア 】

 クラス:レア★★★ タイプ:人間

 攻撃2000/防御1700

 効果:このユニットがフィールドにいる限り、全てのカウンターカードは使用不可となる。

 スタックバースト【前線指揮】:永続:自プレイヤーのフィールドにいる【タイプ:人間】のユニットに攻撃と防御+1000。

――――――――――――――――――


「(うっ、また★3レアカードが出てきた……!

 効果はスピノ親分に似てるけど、こうも人間ユニットで固められると、きっついなぁ~)」


 と、そう思うのは初心者の反応だ。

 リンには分かっていなかったが、ある程度ラヴィアンローズをプレイしている者なら、出た瞬間に驚愕するレア中のレアカード。


 人間ユニットの中でも最高峰の人気と実用性を誇る1枚。

 このカードを引くために数百万円もの課金をした者が続出し、実際にそれだけの価値が備わっている。

 ★3としてはステータスが控えめなものの、その能力が極めて強力。

 場に存在しているだけで全てのカウンターカードが使えなくなり、スタックバーストで自陣を一気に強化させる。


 かつて、初代チャンピオンに輝いた【騎士王(ロード・オブ・ナイツ)】、ハインリヒが愛用した騎士デッキの中核。

 彼が王座に君臨したことで爆発的に人気が高まり、このカードは急速に高騰していった。


「ひとつ、言いたいことがあります。

 あなたは知らなそうだから教えてさしあげますが、ミッドガルドには【タイプ:人間】のモンスターがいません」


「まあ、たしかに人間を捕まえたら色々とまずそうだよね……

 ってことは、そっちに並んでるユニットは全部パックとかトレードで集めたってこと?」


「そのとおり、わたくしのデッキに入っているユニット全てが自前のもの。

 騎士デッキは人間ユニットが中心なので、ミッドガルドの野生生物では補えません。

 言っている意味が分かりますか?」


「いや……大変なんだな~ってことくらいしか……」


「はぁ~、これだから平凡なプレイヤーは。

 わたくしのギルド【エルダーズ】において唯一にして絶対のルール。

 それは月に1枚、必ずレアカードを入手すること。

 このルールを他の誰よりも厳守しているのは、ノルマを課した自分自身です。

 それも、ミッドガルドでは補えない騎士デッキを完璧に組んだ上で」


 そう主張するプロセルピナは、レアカードを収集する【エルダーズ】の中でも、群を抜いて最多の★3所有数を誇る。

 ギルドの中にはミッドガルドのモンスターを捕獲することで、どうにかノルマをこなしている者もいるが、それですら頂点に君臨する彼女にとっては『甘え』でしかない。


「わたくしがいる限り、【エルダーズ】が最強のギルドであることは揺るぎませんわ。

 【ジェネラル・ウォーリア】、スタックバースト!」


 途方もない人気と価値を誇るレアユニットを、惜しげもなく2枚重ね。

 最強ギルドのリーダーというのも伊達ではなく、こんなことができるプレイヤーは日本でも数えるほどしかいない。


 まさにトップランカーのデッキ。

 並べられた2体の人間ユニットにスタックバースト効果が適応され、攻防ともに飛躍的な強化を(ほどこ)される。


「ここに至るまで重ねてきた努力、時間、資金。

 凡人のあなたには、世界が違いすぎて分からないでしょうね。

 わたくしは、これでターンエンド」


「あたしのターン、ドロー!」


「グルルル……ゴガァアーーーーーーーーッ!」


 リンに2ターン目が回り、【ブリード・ワイバーン】は青年期まで成長。

 すさまじいレアカードが並ぶ敵陣に比べたら、攻防たった600の小さなユニット。

 しかし、リンにとってはゲームを始めた直後から信頼している仲間だ。


「よし、これで1段階目!

 そりゃ、たしかにあたしにはトップを走ってる人の苦労なんて分からないよ。

 ちなみにクラウディアと戦ったときも、この子を使ったんだけどさ」


「へえ……どんな反応でした?」


「あなたみたいに、バカにしたりはしなかった!

 そういう矜持(きょうじ)も必要だって認めてくれたよ。

 まあ……その後で、ワイバーンちゃんは倒されちゃったけど」


「ふふっ、結局やられてるじゃないですか」


「そうだね、この子は育たないと弱いし、レアカードに比べたら価値は低いかもしれない。

 でも、だからといって()めてもいい理由にはならない!

 プロジェクトカード、【物資取引(トランザクション)】!」


Cards―――――――――――――

【 物資取引(トランザクション) 】

 クラス:アンコモン★★ プロジェクトカード

 効果:手札を3枚までデッキに戻してシャッフルし、デッキから同数のカードをドローする。

――――――――――――――――――


「あたしは手札からデッキに2枚戻して、2枚ドローする!」


「なるほど、貧相なデッキにしては、なかなかいい動きですね。

 封じられたカウンターカードをデッキに戻しましたか」


「(うっわ~、完全に読まれてるし……)」


 【ジェネラル・ウォーリア】が相手のフィールドにいる限り、双方ともカウンターカードが使えなくなる。

 リンは手札を交換し、今の戦況に合わせて流れを切り替えた。

 思えば、クラウディアとの戦いでも【物資取引(トランザクション)】が大きな転機だったのだ。


 そして――愛情を込めて信頼し、可愛がってくれた主人に(こた)えるかのように。

 デッキの中で眠っていたカードたちが目を覚ます。


「【ブリード・ワイバーン】、スタックバースト!

 もう1回、スタックバースト!」


「まさか、今の手札交換で3枚そろったのですか……?」


 さすがに眉を動かすプロセルピナ。このターン、頼りなかったリンの陣営が一気に成長を遂げた。

 ワイバーンの体が2回り大きくなり、3本の首と尻尾を持つ竜種へと進化。

 頭部のそれぞれが意思を持ち、古戦場に咆哮を響かせる。


「ゴァアアアアアーーーッ!」

「ガアアアアアッ!」

「キシャーーーーッ!」


 召喚された当初の可愛らしさから一転、翼を広げた飛竜は強烈な存在感でプロセルピナに立ちはだかった。

 わずか600だったステータスは攻防2400まで上昇。

 しかも、まだ【平和的軍事条約】が継続しているため、次のターンには最終形態への成長も期待できる。


「あたしのターンは終わり!

 どう? これでも、まだ()めてかかる気?」


「そうですね……ワイバーンをしっかりと重ねたことには驚きましたが、その程度のステータスでは話になりません。

 次のターンで4800まで成長。そこからの巻き返しを(はか)っているのでしょう。

 なんとも(あわ)れなものです。

 しかも、その1体を作り出すために手札のほとんどを使い果たすなんて」


 言いながら、目を細めてリンの手を見るプロセルピナ。

 ワイバーンの成長にリソースを注いだ結果、残りの手札は1枚しかない。


「それでは、わたくしのターン。ドロー。

 これで、こちらのカードは4枚。

 ふふふ……茶番を終わらせるための完璧な手札ですわ」


 【平和的軍事条約】の効果で守られた最後のターン。

 女騎士は眼前の少女に絶望を与えるべく、ようやく育て上げたワイバーンを包囲するべく動き出す。

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