表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/297

第22話 巫女さんと行く大渓谷の旅 その7

【 オボロカヅチ 】 残りHP:3700

 攻撃5100/HP7500


【 ソニア 】 ライフ:800

キラージョー

 攻撃1700/防御1500

 生命は皆、必ず死を迎える。

 決して逃れられぬ終焉を恐れ、不死を願って創造された伝説の数々。

 たとえ死しても灰から蘇り、永遠を生き続けるフェニックスの物語は、多くの者が耳にしているだろう。


 しかし、この仮想世界において炎から蘇ったのは、全身が金属で覆われた機械のサメ。

 ソニアは左目から火の粉を散らし、再び【キラージョー】を自陣に従えた。


Cards―――――――――――――

【 リザレクション 】

 クラス:レア★★★ カウンターカード

 効果:自プレイヤーの所有ユニットが破棄された直後に使用可能。

 対象のユニットを復活させ、再度フィールドに配置する。

 これは通常の召喚行為に含まれず、このカードはプレイヤー1人につき1回しか対戦中に使えない。

――――――――――――――――――


「ほぉ~、【リザレクション】とは、また渋いカードを使いよるなぁ」


「やられたユニットが生き返るなんて、すごいと思うけど……あれって渋いの?」


 リンが問いかけると、サクヤは苦笑しながら両腕を組む。

 それによって体の一部が圧迫されるため、女性でもつい目が行ってしまうのだが、リンは自重して先輩の言葉に集中する。


「このゲームはユニットが倒されにくいようになっとる。

 防御を固めて守ったり、そもそも相手の攻撃をなかったことにしたり。

 実際、ソニアちゃんも何回か(から)め手で切り抜けとったやろ?

 ユニットが倒された後のことを考えるより、どないな戦略で生き残らせるかを考えたほうが堅実なんや」


「なるほど……たしかにユニットが負けるっていうのは、滅多にないね」


「強いユニットになればなるほど、倒されるケースは限られてくる。

 デッキで一番強い虎の子がやられてしもたら、その時点でプレイヤーは万策尽きとるわけや。

 しかも、あの【リザレクション】。

 効果と演出はド派手やけど、かなり重大な難点を抱えとってな……あのサメをよ~う見てみい」


「んん~~……?」


 サクヤが言う難点とやらを探して、金属光沢で輝く【キラージョー】の姿を観察するリン。

 だが、どう見ても完全な姿で再誕し、ステータスの数値を見ても減っている部分はない。

 まさしく、フィールドから取り除かれたユニットを、もう一度召喚した直後のような――


「ああ~っ、分かった! 装備カードが消えちゃってるんだ!」


「正解なのです」


 リンたちに振り向きながら、ソニアも会話に混ざる。

 自分のターンを終えたためか、敵の【オボロカヅチ】が律儀に待っていてくれるのは、カードゲームの奇妙なところだ。


「わたしが使った【リザレクション】は、倒されたユニットを再召喚するカード。

 つまり、召喚した直後の(けが)れなき姿に戻ってしまうので、リンクカードなどの強化効果は失われるのです」


「う、う~ん……生き返るっていうのは、すごいんだけどなぁ」


 様々なカードゲームにおいて、倒されたユニットを蘇らせる効果のカードは高位のレアとされている。

 しかし、ラヴィアンローズはユニットの強化に力を注ぐゲームだ。

 選ばれし者だけが持つ★4の『マスター』であろうと、召喚したまま強化もせずに攻撃宣言することはない。


 装備品となるリンクカードを付け、色々な効果を上乗せして、時には5000を超えるような数値で上から殴る。

 そういう環境が主流のゲームで、何も強化されていない状態での復活というのは非常に苦しいのだ。


「せやけど、そのカードはソニアちゃんらしいと思うで。

 やられたはずのユニットが復活して再登場! 生きとったんかワレェ!

 みたいな展開、めっちゃかっこええやん」


「そう、かっこいいのです!

 わたしがこのカードを手に入れて真っ先にお姉さまに見せたときも、こう言ってくださいました。

 そのカードを決闘(デュエル)で活かすのもいいし、トレードで他のカードと交換してもいい。

 どちらにせよ、初めて巡り会ったレアカードなら、よく考えて大切に使いなさいと」


「いいお姉ちゃんじゃない!

 ウチのバカ兄貴なんて、あたしがワイバーン使うって言ったら、育つのにターンがかかるからとか、あーだこーだ偉そうに言っちゃってさ。

 ほんと、クラウディアの爪の垢でも飲ませてやりたいよ!」


「いや、それはわたしが飲むのです」


「ほんま、お姉ちゃん好きすぎやなぁ。

 ところで……あいつ、どないするん?」


「「あ……っ」」


 リンとソニアは、ほったらかしになっていた【オボロカヅチ】へと向き直る。

 全身に高圧電流をまとって対峙している相手は、残りHP3700。

 唯一の★3レアを使って、かっこよく復活した【キラージョー】だが、強化効果は何もなし。


「実際のところ、かなりキツイです……このターンで倒さないと、次は耐えられません」


「ソニアちゃん。サメのスタックバースト、もう1回できる?」


「できるのですが、仕留めるには攻撃力が500足りていないです。

 そして、恥ずかしながら我が手札には、それを解決する手段が――」


「手段なら、ここにあるよ。

 ミッドガルドのルールは勉強してきたからね。

 プロジェクトカード発動!」


Cards―――――――――――――

【 折れた剣の伝説(ダーム・デュラック) 】

 クラス:アンコモン★★ プロジェクトカード

 効果:破棄されたリンクカード1枚を指定し、破棄される前に装備していたユニットへ再装着させる。

――――――――――――――――――


 リンがカードを発動させると、先ほどまで燃えていた地面が水に飲まれ、美しい湖を作り出す。

 とある西洋の王が愛用していた剣を折ってしまった際、湖の精霊に直してもらったという伝説。

 それを再現するかのように、水中から失われたはずの【側面防御用シュルツェン】が浮かび上がって、再びサメの体に装着された。


「よ~し、できた!

 ユニット以外なら、ギルドの仲間が使ったカードを対象にできる!

 みんなで洞窟探検して、勉強した甲斐があったよ~」


「リン殿……これは!」


「えへへ……ソニアちゃんは1人じゃないよ。

 こうして力を貸したら、サクヤ先輩に怒られるかもしれないけど――

 あたしたちは仲間だもん、困ったときには助けあってもいいと思う!」


「いやいや、力を貸したら怒るとか、それは誤解やわ~。

 困っとる仲間を助けたらあかんなんて、一言もいうてへんよ?」


「は……?」


「うちが手ぇ出したらあかんやろな~て勝手に思うとるだけや。

 慣れたもんが関わったら、勝てて当たり前になってまうやろ?

 せやけど、初心者同士で助けおうて一緒に成長できるなら、それでええやん」


「ん、んん~~~……サクヤ先輩が言ってること、ちょっと分かんない」


「初心者が理解できて、たまるかっちゅーねん!

 ま、いずれ2人にも分かるはずや、いずれな」


 後方で腕を組みながら、相変わらず飄々(ひょうひょう)とした物言いをするサクヤ。

 実はゲームにおいて、ものすごく良いことを言っている先輩なのだが、始めて1ヶ月のリンには難しい言葉だった。


「リン殿、感謝の極みであります!

 国士無双なお姉さまにとっての”めーゆー”であるならば、わたしにとっても”めーゆー”!

 仲間の援護を受けたこの一手、絶対に外しはしません!

 【キラージョー】、攻撃宣言! そして、スタックバースト発動!」


「ギキィイイイーーーーーッ!」


 咆哮し、全身を砲塔へと変えていく機械のサメ。前のターンで見せた最大火力の再来。

 もはや、ソニアに迷いはなかった。

 左目の炎はとっくに消えていたが、胸に宿る闘志は燃え盛ったまま。


「知るがいい、このサメが2度咆えることを!

 【シャーク・カノン】――撃て(ファイエル)!」


 リンが修復した【側面防御用シュルツェン】の効果が乗り、攻撃力は計3800。

 戦いを終焉へと導く一撃が、瑠璃色(ウルトラマリン)のレーザー光線となって放たれる。


「オオオオオオーーーーー……ッ」


 直撃した光線は実体が不確かな【オボロカヅチ】の中央を貫き、その姿を光の粒子へと変えていく。

 それと同時に(ただよ)っていたドライアイスのような”もや”も消え、滝の奥にある岩場は静けさを取り戻していった。


「よぉおおお~し、我らの勝利なのです!」


「やったね、ソニアちゃん!

 あ、さっきまで燃えてた目が元に戻ってるけど、大丈夫?」


「これは『属性ヲ開眼セシ者ノ左目』というカラーコンタクトのシリーズです。

 わたしが【リザレクション】を自分のデッキに入れて使うと決めたとき、なけなしのポイントを()ぎ込んで買ったものでして」


「あれ? ってことは、それを付けてないと……」


「両方とも、世界に名高きシルフィード家の証である碧眼!

 絶対無敵なお姉さまと同じ青なのです!」


 そう言いながらポーズを取り、左目の装飾品を解除してみせるソニア。

 現れた本当の左目は、たしかに右と同じ色をしていた。


「へぇ~、カラコンもあるんだね。

 しかも、炎が出て燃えるなんて……」


「炎の赤だけではなく、いろいろな属性がありますよ!

 リン殿もいかがですか、闇が宿りし紫などが似合いそうなのですが」


「あ~、それはステラに言ってあげて」


「せやな、あの子にぴったりや!」


 片目に闇を宿した魔女。しかも、扱うユニットは例の宇宙怪獣たち。

 あまりにも似合いすぎている姿を想像し、リンたちはひとしきり笑いあった。


「さて、今回は残念ながら★3は捕獲ならず。

 せやけど、ここに来る方法も、どんなモンスターがおるかも分かったな?」


「うんっ! 本当にありがとう、サクヤ先輩!」


「絶対にあの【オボロカヅチ】を我が軍団に加えるのです!」


「そうと決まったら明日から周回や。

 うちもヒマなときには、ついてきてやるさかいにな」


「え~、ついてくるだけじゃなくて手伝ってよ~!」


 目標が定まり、リンとソニアのモチベーションも高まる。

 結局、サクヤがどんなカードを使うのか1枚も見ることはなかったが、しっかりとアドバイスしてくれる良い先輩なのはたしかだ。


 クラウディアが率いる『鉄血の翼』に加わった新メンバーの2人。

 その両方と共に冒険したことで、リンはまたひとつ、仲間との絆が増えたことを実感したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「ソニアに言ってあげて」のところ、ステラでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ