表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/297

第6話 ダンジョンにクリスタルを求めて その3

 水晶洞窟の中間地点となる青のエリア。

 美しい地底湖が広がる名所だが、ここを通るときには可能な限り物音を立ててはいけない。

 このホールは天井が高くなっており、そこに点々と黒い物体がぶら下がっている。


 その正体は翼長3mほどもある大型の吸血コウモリ【デスモドゥス】。

 青のエリアは彼らの縄張りで、しかも聴覚が非常に鋭い。

 少しでも大きな音を立ててしまったが最後、天井から大量のコウモリが押し寄せてくるのだ。


「わ……わわわわわわ、どどど、どうしよう!?

 これって、あたしのせい?」


「ヘビが来たのは誰のせいでもありません。

 それにしても、この数……逃げるのは厳しそうですね」


「太陽が当たってないだけでステータス2倍って、ほんと反則だよな」


「そうだ! 兄貴、アレ持ってるでしょ、アレ!

 フィールドをジャングルに変えるカード」


「無茶言うなっつーの!

 ミッドガルドの地形を変えるなんて、できるわけねえだろ!」


 そんな話をしている間にも、コウモリたちは威嚇の声を発しながら高度を下げてきた。

 壮絶な乱戦が始まるのは、もはや時間の問題だ。


「私がなんとかするわ!

 全員離れないで、背中を向けあって円形陣!」


「クラウディア! あれをなんとかする方法があるの?」


「この私が何の対策もなしに来ると思った?

 さっきから飛ばしてるドローンを、よく見てみなさい」


 そう言われたのでドローンを調べてみると、コンソールに情報が表示される。

 リンは探索用の便利アイテムかと思っていたのだが、実際にはしっかりとステータスを備えたユニットだった。


Cards―――――――――――――

【 EMPドローン 】

 クラス:コモン★ タイプ:機械

 攻撃200/防御200

 効果:このユニットがいる限り、フィールド上の情報は所有プレイヤーに可視化される。

 スタックバースト【バーストジャマー】:瞬間:2ターンの間、このユニット以外のスタックバーストは全て無効化される。

――――――――――――――――――


「バーストジャマー! そんなものがあるの!?」


 数値的には、まったく戦いに向いていないドローン。

 しかし、このユニットを召喚したプレイヤーの目には、あらゆる情報が視覚的に表示される。

 プレイヤーの周囲をスキャンし、肉眼では見えないものまで感知する効果。

 擬態する【水晶ヤモリ】や、音もなく這い寄るクモなども、クラウディアには全て”見えて”いたのだ。


 そして、切り札となるのがスタックバースト。

 対人戦で使われても脅威だが、この場においては比類なき逆転の一手。


「効果範囲を選べないから、ユニット全部が影響を受けるのよね。

 この中でスタックバーストを使いたい人は?」


「大丈夫です。ドローンの効果が切れてから使います」


「俺も【ヘビーナイト】の補強は済ませた。大丈夫だ、やってくれ!」


「じゃあ、私が支援するから、みんなで敵を蹴散らしましょう」


「ク……クラウディア! 今、すっごく輝いてるよ~!」


 リンは思わず、頼れるリーダーに抱きつきたくなった。

 もちろんクラウディア自身も参戦するらしく、戦闘用のユニットを召喚する。


「ユニット召喚、【ガトリング・タレット】!」


Cards―――――――――――――

【 ガトリング・タレット 】

 クラス:アンコモン★★ タイプ:機械

 攻撃2400/防御700

 効果:このユニットはステータスの強化と弱体を受けない。

 スタックバースト【再設置】:瞬間:このユニットがフィールド上から破棄されたときに発動可能。即座に新しい同一個体として復活する。

――――――――――――――――――


 ウィイイン、ジャキ、ジャキ、ガション、と。

 軽快な機械音を立てて重火器のユニットが現れる。

 2400を誇る攻撃力は【好戦的なエルフ】と同じくアンコモン最高値。

 自動的に敵を認識して撃つ機械らしく、銃口を上下左右に動かしながら狙いを定めていた。


「ギキィイイイーーーーーーッ!」


「来るわよ! 全員、迎撃用意!

 私がカードを発動させるまで引きつけて!」


 1体が雄叫びを上げた直後、コウモリの群れは一斉に降下。

 リンたちはユニットと共に身構え、突っ込んでくる大コウモリの威圧に耐える。

 接敵するまで、あと5m、4m、3m――


「スタックバースト発動、【バーストジャマー】!」


 クラウディアが手札を使用した瞬間、ドローンは全方位に電流を放射した。

 それ自体にダメージはなく、辺り一帯にプラズマフィールドが形成されて光の『もや』が漂う。

 効果の範囲内にいるユニットは全てスタックバーストが使えなくなり、コウモリたちのステータスは一気に半減した。


「私も支援します! 音波撹乱(ソニック・ブラスト)!」


Cards―――――――――――――

【 音波撹乱(ソニック・ブラスト) 】

 クラス:アンコモン★★ カウンターカード

 効果:ターン終了まで、【タイプ:動物】のユニット全ては攻撃宣言ができなくなる。

――――――――――――――――――


 ステラがカードが発動すると、彼女を中心にキイイイィンと高音が拡散される。

 リンの近くにいたコボルドが慌てて耳をふさぎ、コウモリたちも大混乱を起こしていた。

 このカードは超音波を発生させることで、一時的に動物ユニットの聴覚を狂わせる。


「おお~っ、上手い!」


「そっか! こっちには【動物】がいないんだ!」


 機転の利いたアシストに感嘆する真宮兄妹。

 思わず耳を押さえたコボルドは、犬のように見えるが実は【悪魔】タイプ。

 【土星猫(サタンキャット)】は融合しているため効果を受けず、他のユニットは動物ではない。


 よって、このターン。

 4人はコウモリに向かって一方的に攻撃できるのだ。


「いくわよ、全員攻撃! 撃て(ファイエル)!」


 クラウディアの号令のもと、4人はそれぞれのユニットで一斉に攻撃宣言。

 月の女神と地獄の悪魔が共に矢を放ち、うろたえるコウモリたちを正確に射抜く。

 筋肉エルフは跳躍しながらアッパーで攻撃、設置された重火器タレットも弾丸の雨を降らせた。


 4人が扱うユニットは見た目もタイプもバラバラだ。

 しかし、今まさにチームとして結束し、コウモリの群れを蹴散らしていく。

 【バーストジャマー】の効果が切れる頃には、ほぼ勝敗が決してしまっていた。


「ドローンの効果がなくなりましたね。

 【レライエ】、スタックバースト解禁です! 【2本撃ち】!」


「ヒャハハハハハーーーーーッ!!」


 ステラの指示に従い、2体の目標に向かって攻撃する【レライエ】。

 実際には腕が増えたので2本どころか4本撃ちなのだが、飛び回るコウモリたちを次々と撃ち落とす。

 最後の断末魔が響いたとき、飛ぶ力のある敵はいなくなっていた。


「よぉーし、勝ったぁー!」


「いぇ~い、お疲れ!」


 勝利を分かちあう4人の声が、お互いの健闘をたたえる。

 大ピンチを乗り越えたメンバーたちだったが、大量の敵を倒したことによってチームの意識は高まった。

 そして、戦闘後のフィールドには消えずに残っている【デスモドゥス】が1体。


「あ、コウモリが気絶してるわよ!」


「おお~! って、俺じゃないな。

 誰が倒したやつだ?」


「私みたいです! やりました!

 もらっていいですか?」


「もちろん! っていうか、ステラ以外はカードにできないよね」


 気絶したモンスターを獲得する権利は、倒した本人にしか与えられない。

 十分な活躍を見せたステラが戦利品を得ることに異論などなく、メンバーからは『おめでとう』の声が贈られる。

 そうしてブランクカードに収められたコウモリは、かなり効果が変更されていた。


Cards―――――――――――――

【 デスモドゥス 】

 クラス:アンコモン★★ タイプ:動物

 攻撃1300/防御1100

 効果:このユニットが相手プレイヤーにダメージを与えたとき、2ターンの間、そのポイントと同数の攻撃・防御強化を受ける。

 この効果は重ねがけ不可であり、更新された場合は新しい数値に上書きされる。

 スタックバースト【闇の徘徊者】:永続:このユニットが他のカードの影響を受けていない場合、攻撃と防御が2倍になる。

――――――――――――――――――


「【デスモドゥス】、捕獲(インプリント)完了です!」


「わあ~、ほんとにおめでとう!」


「かっこいいカードじゃないか、うらやましいぜ!

 ユニットになると太陽の影響を受けなくなるんだな」


「さすがに決闘(デュエル)では条件が難しいですからね。

 でも、前からこの子が欲しかったんです。

 これでまた一歩、魔女らしくなりました」


「たしかに魔女らしいユニットだけど……

 ステラはいったい、何を目指してるのかしら」


 戦利品を得て、さらにワイワイと盛り上がるメンバーたち。

 笑顔が交わされる中、リンはまた新たな喜びを見出(みいだ)していた。


「(そっか……これが”みんなで戦う”ってことなんだ)」


 対人戦のカード勝負も面白いが、ペットを飼ったり、ミッドガルドを探検したりと、ラヴィアンローズには色々な楽しさが詰まっている。

 今回は初めて行ったチームバトル。

 仲間と共に勝利を掴み、その成果を喜びあう。


 実体のない仮想空間での冒険だが、友人たちの笑顔は間違いなく本物なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ