プロローグ
「いや、本当に見たんだって!」
その日、ミッドガルドの平原に数名のプレイヤーが集まっていた。
とんでもなく強いユニットを百鬼夜行のように引き連れ、沼へと歩いていく少女たちの目撃談は、相変わらず尾ひれがついた都市伝説になっている。
普通のプレイヤーなら1匹倒すだけでも大変な苦労をするスピノサウルスを乱獲し、手駒にして連れ歩く中学生くらいの少女。
そんなウワサを聞きつけ、いつも彼女たちが通るという街道付近に数名のプレイヤーが待機していた。
「信じられないな、沼のスピノサウルスだろ?
俺も何回か挑んだが、複数で来られたら終わるぞアレは」
「恐竜好きな人が専用の対策デッキを組んで、数ヶ月かけて手に入れたっていう話は聞くけどさ」
「乱獲っていうのは、さすがに大げさよね」
「しかも、狩りに使ってるユニットが★4の【アルテミス】2体って……なあ?」
「そう思うだろ?
俺も自分の目で見るまでは信じられなかった」
「あれはウワサ話なんていう可愛いものじゃない。
いや、女の子たちは可愛いんだが」
実際に見なければ信じられないという未見の者と、その目で見てしまったがゆえに、間違いなく真実だと主張する者たち。
双方が言葉を交わしているうちに、入り口の方角から地鳴りのような音が響いてくる。
「おい、来たぞ!
これがスピノサウルスの足音だ!」
「ん? そうなのか?」
「なんだか、ちょっと違うみたいよ。
この音と揺れかたは、たぶん……」
例の子たちがやってきたぞ誰かが騒ぎ始め、街道を凝視するプレイヤーの集団。
そんな彼らの目に映ったのは、沼の主と恐れられるスピノサウルス――
ではなく、金属の装甲で覆われた超重量の陸戦兵器。
前方に突き出た砲塔と、回転しながら大地を踏み進む重厚なキャタピラ。
「「「「戦車じゃねーか!!!」」」」
やってきたのは、キュラキュラと音を立てて進む大型戦車。
キャタピラで大地を揺らし、その上に4人の少年少女を乗せた近代兵器が通り過ぎていく。
「今、乗ってたよな……例の子たち」
「ああ……今度は戦車か……」
あっという間に過ぎ去ってしまった都市伝説の発生源を、プレイヤーたちは唖然とした顔で見送るしかなかった。




