第7話 タッグを組んでみました その1
「本当にリンの発想は自由というか、何というか……
私のほうが教えられてるみたいです」
「ステラに教えられることなんて何もないよ~。
むしろ、たくさん教えてもらってる側だし」
この日、リンとステラは2人でミッドガルドにやってきた。
まだ入り口の平原だが、すでに作戦の準備段階に入っている。
「もう一度聞きますけど……沼に行くんですよね?」
「そう、沼!
スピノサウルスをやっつけて仲間にすれば、★3レアカードが手に入るでしょ?
なんだか、ドロップも美味しいみたいだし」
「簡単に言いますね……でも、作戦としては面白いと思います。
私としても、やってみたいです」
「じゃあ、まずはこっちのユニットを出すね。
力を貸して! 【アルテミス】!」
リンは1枚のカードを取り出し、ミッドガルドを夜へと反転させる。
煌々と輝く満月から降りてきたのは、神話に名高き【アルテミス】。
月の女神が地上に到達すると、世界は彼女の血族である太陽神の光で塗り替えられていく。
「いつ見ても派手な演出ですね~」
「なんか、こう……気合が入るよね。呼び出すほうも」
かっこいい召喚ポーズは目下練習中で、まだまだ未完成という感じだ。
いっそ、ステラのようにアイテムでも使えれば良いのにと、リンはあれこれ画策し始めている。
「では、私も行きます……
この作戦は、これが成功するかどうかに懸かっていますね。
ユニット召喚、【ダークネス・ゲンガー】!」
Cards―――――――――――――
【 ダークネス・ゲンガー 】
クラス:レア★★★ タイプ:X
攻撃X/防御X
効果:召喚するときに相手プレイヤーのフィールドにいるユニット1体を指定し、そのユニットと同じタイプ・基礎ステータス・効果を得る。
スタックバースト【バーストキャプチャー】:特殊:上記の効果の対象になったユニットと同じスタックバーストを発動する。
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続いて、ステラが杖をかざし、魔法陣から黒い煙のようなユニットを召喚した。
【ダークネス・ゲンガー】は実体もステータスもなく、相手プレイヤーのユニットをコピーすることで姿を得る。
そして、この場でコピーできるユニットは、ただ1体のみ。
「擬態する目標は【月機武神アルテミス】!」
ステラが指示すると、黒い煙は渦を巻いて人型へと変形していった。
ラヴィアンローズの世界において、非常にまれなケースになるであろう★4スーパーレアへの擬態。
その希少かつ高貴なユニットですら、魔女のしもべは見事に模倣してみせた。
そうして、ミッドガルドに月の女神が2人並ぶ。
容姿はオリジナルとそっくりだが、【ダークネス・ゲンガー】のほうは肌が褐色になり、髪に淡い赤紫の色がついていた。
サイバーな服は大部分が黒く染まり、白を基調にしたオリジナルと対をなす。
おそれ多くも、擬態によって得たタイプは【神】――まさしく、神を複製したのである。
「やったぁ~! 大成功だよ、ステラ!」
「やってしまいました……★4スーパーレアのコピー。
まさか、ミッドガルドでもできるなんて」
「こっちの【アルテミス】は黒くてかっこいいね。
元のほうが満月なら、こっちは新月っていう感じ」
「闇夜の女神、ですか。
ふふっ、そっちのほうが魔女らしいかもしれません」
もしかしたら、【アルテミス】をコピーできるかもしれない。
そんなリンの発案を聞かされたステラだが、実際にやってみるまでは半信半疑だった。
『相手プレイヤーのフィールドにいるユニット1体を指定』という条件を、このミッドガルドでも満たせると思っていなかったのだ。
結果的に実験は成功。
コピーとはいえ【アルテミス】を手に入れたことで、ステラはリンと同じく、ユニットカードを大量に装備させることができる。
「じゃあ、ここからは作戦どおり。
リンクカードをいっぱいくっつけて、タンクにしちゃおう!」
「分かりました。それじゃあ、ユニット召喚!
出ておいで、【土星猫】!」
「ニャ~オ」
「へ……?」
友人が取った予想外な行動に、リンは表情が固まる。
もはや、言葉にする必要もない。
この魔女がネコを呼び出した後は、何が起こるか決まっているのだ。
「ちょ、ちょっと、ステラ!」
「慌てなくても大丈夫です。
この子はユニットカードなので、装備品とは違う扱いなんですよ。
スピノサウルスに壊される心配はありません」
「いや、そういう心配じゃなくて!」
「【土星猫】、【ダークネス・ゲンガー】と融合!」
「うわぁああああーーーーっ!!」
リンの叫びもむなしく、ネコは闇夜の女神に飛びつくと、その体にズブズブと潜っていってしまった。




