第21話 炎熱の試練 その6
【 クラウディア 】 ライフ:3412
ダイダロス(ゴリアテと合体)
攻撃2300/防御6000
【 ラヴァ・ディノス 】×2
攻撃6000/HP9000
バトル前、最大HPと等しいダメージを相手ユニットに与える。
バースト効果が発動すると軽減、無効化が不可。
「ここからは頭を使うことになるし、失敗も許されないけれど……
シミュレーションどおりにやるわよ。ユニット召喚!」
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【 EMPドローン 】
クラス:コモン★ タイプ:機械
攻撃200/防御200
効果:このユニットがいる限り、フィールド上の情報は所有プレイヤーに可視化される。
スタックバースト【バーストジャマー】:瞬間:2ターンの間、このユニット以外のスタックバーストは全て無効化される。
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以前、洞窟探検で使ったことがあるドローン型のユニット。
周囲の情報が可視化されるため、暗闇に隠れ潜むようなモンスターでも察知できる。
それ以上に有用なのが、全方位に効果を及ぼすスタックバースト。
「もしかして、【バーストジャマー】を使うのです?
そんなことをしたら……」
「そう、【ゴリアテ】の軽減効果も消されてしまうわ。
だから頭を使うのよね。プロジェクトカード発動! 【チューニング】!」
Cards―――――――――――――
【 チューニング 】
クラス:コモン★ プロジェクトカード
効果:永続効果。【タイプ:機械】のユニット全てに攻撃+200、防御+200。
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各タイプに用意されている永続的な強化プロジェクト。
【ラヴァ・ディノス】は自身のステータスを高めてこないため、これで【ゴリアテ】の軽減効果が消失しても通常攻撃には耐えられる。
「続いてプロジェクトカード、【波動転換】!」
Cards―――――――――――――
【 波動転換 】
クラス:コモン★ プロジェクトカード
効果:永続効果。全てのダメージはバトルで発生したものに変換される。
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クラウディアが次々と繰り出していく★1コモン。
このカードは特に使いどころが限られ、バトル以外のダメージを変換するものの、軽減や無効化をするわけではない。
そもそも防御が整っているデッキでもない限り、採用するメリットが少ないプロジェクトだ。
「ダメージの変換……?」
「ラヴィアンローズのカードは、大半がバトルを行うことを想定して作られているの。
つまり、バトルダメージの軽減カードはとても豊富。
プロジェクトカード、【決死の防衛戦線】!」
Cards―――――――――――――
【 決死の防衛戦線 】
クラス:アンコモン★★ プロジェクトカード
効果:使用者のライフが4000以下の場合のみ使用可。
自プレイヤーが所有するユニット1体を指定して発動。永続効果。
対象のユニットがバトルでダメージを受けた場合、使用者のライフに等しい被ダメージ軽減効果を得る。
この効果を受けたユニットが破棄されたとき、使用者は敗北する。
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ここで防御効果にクラウディア自身のライフが乗る。
プレイヤーとユニットが一蓮托生で戦うような熱いカードだが、この場所では1秒ごとに効果が減ってしまう。
「おお~、これで9000のダメージにも耐えられるのです!」
「ライフを守り切ることを信条にしている私には、発動させる機会が少ないカードだけど、ここでは自動的に条件が満たされるわ。
あと2枚使うわよ! 【EMPドローン】にリンクカードを装備!
【オルガナイズ・プログラム】!」
Cards―――――――――――――
【 オルガナイズ・プログラム 】
クラス:レア★★★ リンクカード
効果:【タイプ:機械】のユニットにのみ装備可能。
装備したユニットは攻撃宣言できなくなり、自プレイヤーが所有する【タイプ:機械】のユニットが代わりに攻撃を行う。
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「これで準備は整ったわ――【ダイダロス】、攻撃宣言!
そして、カウンターカード! 【千年帝国の圧政】!」
Cards―――――――――――――
【 千年帝国の圧政 】
クラス:レア★★★ カウンターカード
効果:ターン終了まで、全てのユニットは★1つにつき攻撃+300を得る。
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そして、仕上げとばかりに温存しておいた★3レアを2枚。
ありったけのカードを注ぎ込むようなクラウディアの猛襲。
★4スーパーレアである【ダイダロス】は攻撃力が1200上昇。さらに【チューニング】が乗って1400。
合計3700まで強化され、【オルガナイズ・プログラム】の効果で2回攻撃を行う。
「進撃! 閃撃! 総攻撃!」
「ウゴァアアアアアアーーーーーーーッ!!」
クラウディアの号令のもと、砲撃形態の要塞戦車が主砲を向ける。
しかし、攻撃の直前に強烈な熱波が発生し、膨大な火炎流がユニットに襲いかかった。
超高温の装甲に覆われた【ラヴァ・ディノス】から、9000に及ぶ熱のダメージが放出されたのだ。
「【EMPドローン】のスタックバースト発動、【バーストジャマー】!」
このタイミングでジャミングを発動。熱波の軽減が可能になり、さらに【波動転換】によってバトルダメージへと変更。
そして、【決死の防衛戦線】で大幅に軽減される。
要塞戦車は装甲が赤熱するほどの火炎流を浴びたが、主砲から戦艦並みの大口径徹甲弾を発射。
【ラヴァ・ディノス】の片方に当って爆裂し、地底溶岩湖に悲鳴を轟かせる。
「攻撃が……届いた!」
「まだまだ、最初の1発が当たっただけよ。次弾装填!
こちらのカードが尽きる前に押し切るわ!」
ここまで来てしまえば、あとは消耗戦。
クラウディアが大量に用意してきたダメージ軽減カードを駆使し、火炎流を耐えながら砲撃を繰り返す。
片方の【ラヴァ・ディノス】が倒れると敵のスタックバーストが消失。
さらにクラウディアは【決死の防衛戦線】を維持するために、回復カードでライフを維持した。
Cards―――――――――――――
【 マンドラゴラ・ポーション 】
クラス:アンコモン★★ プロジェクトカード
効果:自プレイヤーのライフを1000ポイント回復させる。4000以上にはならない。
このカードは1ゲームに1回しか使えず、相手プレイヤーよりもライフが多い場合は発動できない。
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どう考えても絶望的なモンスターにも関わらず、知略を尽くして追い込んでいく若き鬼才。
世界最高の姉が戦う姿に、ソニアは両手を握りしめながら興奮しきっている。
「これがお姉さまの戦い……もはや、わたしの想像など及びもしない高みにいるのです!」
「本当に手こずらせてくれたけど、最後のターン!
こんな溶岩の奥で眠らせておくには惜しい戦力だわ。とっておきのアイテムを使わせてもらうわよ」
「えっ? そのブランクカードは!」
クラウディアが取り出したのは、金色に輝くブランクカード。
★3モンスターを確実に捕獲できるアイテムだが、それを入手するためには野生の★4と戦ってドロップしなければいけない。
「いつの間に用意していたのです!?」
「私はね、平等主義なの。
サクヤだけ★4討伐ができていなかったから、こっそり誘ったのよ」
自由で破天荒な性格のサクヤだが、後輩の面倒見が良いため年下にはゆずりがちだ。
リンとソニアは高山で、【鉄血の翼】の面々もゴリラの群れと戦って★4撃破を達成していたが、サクヤだけが未達成のまま。
それはクラウディアも把握していたので、こっそりと誘って2人で狩りに行き、金のブランクカードを入手していたのだ。
「お姉さま……わたしの知らないところで、メンバーのためにそんな気配りを!
ああ、やはりお姉さまこそ史上最高にして無双のリーダー! 上司にしたい女子中学生No.1であります!」
「聞こえはいいけれど、結局は私もブランクカードが欲しかったのよね。
それじゃあ、最後の攻撃――撃て!」
「ゴォオオオァアアアアアアーーーーーーーッ!!」
【ラヴァ・ディノス】は火炎流を放って最後まで抵抗したが、その体に砲撃を受けてHPが尽きた。
巨体がゆっくりと傾いていき、大量の溶岩を噴き上げながらマグマの海へと倒れ込む。
その体は粒子化することなく、カードとなってクラウディアの手元へと移動する。
Cards―――――――――――――
【 ラヴァ・ディノス 】
クラス:レア★★★ タイプ:マテリアル
攻撃2000/防御3000/敏捷70
効果:ガード宣言時に発動。このユニットの【基礎防御力】と同値のダメージを、攻撃宣言した相手に与える。
この効果でプレイヤーへの貫通ダメージは発生しない。
スタックバースト【超炎熱放射】:永続:上記の効果で発生するダメージは、軽減や無効化ができない。
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紅蓮の溶岩ドームを背景に立ち、咆哮する怪獣の姿が描かれた★3ユニットカード。
ダメージの発生源は【基礎防御力】に置き換えられたが、それ以外は野生のものと変わっていない。
「ふふふ……ようやく手に入れたわ。
さんざん苦労させられたんだから、役に立ってもらうわよ」
「うぉおおおおーーーーっ、めちゃくちゃかっこよくて強いカード!
これがあれば、ジュニアカップでも大活躍は間違いなし!」
「だから、あなたも同じ大会に出て、戦うことになるかもしれないって言ってるでしょう?
まあ、上位を目指すためには最善を尽くすべきよね。私は明日からもここを周回するわ」
「ええっ!? この地獄みたいなアスレチックを?」
「勝てると分かったんだし、ここでは確実に★3が2体出てくるのよ。
バーストできてこそ、この子は真価が発揮できる。妥協は一切しないわ」
天才と謳われるクラウディアだが、生まれ持った才能だけで強者になったわけではない。
見えぬところで努力するタイプであり、自分に対してはストイックな性格だ。
こんな高難易度ダンジョンを周回して、次は得られるかどうか分からない★3に挑み続けるという信念。
元から最高値だったソニアの好感度は、尊敬のあまり8回ほど限界突破したのだった。




