第２２話 キング・オブ・スカーレット その２
※今回はステータス差で先手を取れるバトルなため、敏捷の記述は省きます。
リンの思いつきで決行されたネームド討伐も、洞窟の中を進むうちに自然と決意が湧いてきた。
初心者向けの上層エリア、危険な吸血コウモリなどが棲む地底湖エリアを抜け、赤い水晶が生えた最下層へ。
道中の野生モンスターは予定どおりユウたちが担当してくれたため、主力部隊は全く消耗せずに現地まで辿り着く。
巨大生物が通れるほど広いトンネルに出た一行は、クラウディアの指揮のもと、警戒しながら赤晶竜を待ち構える。
「今のところ敵の反応はないわ。ここで準備をしましょう。
事前にお願いしていたけれど、特別な事情がない限り、初手のユニットはひとりにつき１体まで。
あまり多いと戦況が分かりにくいし、私が守りきれなくなりそうだから」
「は～い、特別な事情がありま～す」
「リンについては把握済みよ。他にはいないわね？
あとは緊急離脱用に、それぞれ１枚ずつ【エスケープ・スモッグ】の準備。
持ってくるのを忘れた人はいないかしら？」
しっかりと事前確認を取るクラウディアに、メンバーたちは全幅の信頼を寄せていた。
その様子を見て、新入りのメイドもリーダーの手腕を知る。
「（ドローンを飛ばして索敵しながら安全確保……全体的な戦術の指揮まで、全てひとりで……
なるほど、これが【鉄血の翼】の頭脳ですか）」
「それじゃあ、作戦開始――ユニット召喚！」
「ユニット召喚！」
ここで主力部隊のリンと、防壁を務めるクラウディアが自陣を展開。
希少な★４スーパーレアが２体も同時に出現し、それぞれ攻撃と防御の中核となる。
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 月機武神アルテミス 】
クラス：スーパーレア★★★★ タイプ：神
攻撃２６００／防御２６００
効果：リンクカードを何枚でも装備できる。
スタックバースト【超次元射撃】：永続：装備されているリンクカードを１枚破棄するたびに攻撃宣言を追加で１回行う。
――――――――――――――――――
深い洞窟の最下層であろうと降りてくる、月と狩猟の女神。
さらにリンは【パワード・スピノサウルス】を召喚し、２回スタックバースト。
女神【アルテミス】には【ストームブリンガー】を始めとしたリンクカードを４枚装備させ、さらに仕上げの２枚。
「【ネレイス】ちゃんを媒体にして【エクシード・ユニオン】を装備！
さらに【ヴァリアブル・ウェポン】！」
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 ヴァリアブル・ウェポン 】
クラス：アンコモン★★ リンクカード
効果：装備されているユニットが強化効果を受けている場合、その数値を２倍にする。
１回でもバトルを行うと、その後、このカードは破棄される。
――――――――――――――――――
水棲タイプを付与された【アルテミス】は、透き通るような水属性を帯びる。
さらに黒魔術の要素が加わり、輝きながらも闇が入り混じった姿へ。
例えるなら、それは夜の海を照らす満月。静かに光を湛えながらも深く、美しさと水底への畏れをあわせ持つ。
「最後に【ネレイス】ちゃんをスタックバーストして、パワーを親分に上乗せ！
これで準備完了っ！」
■ リンの陣営 ■――――――――――――
ユニット
【パワード・スピノサウルス】（２回バースト） 攻撃２３４００／防御１１２００
【アルテミス】 攻撃１９４００／防御７２００
リンクカード（全てアルテミスに装備）
【破滅の剣『ストームブリンガー』】 攻撃＋４０００
【エクシード・ユニオン】（媒体は【ネレイス】） 攻撃・防御＋２３００
その他リンクカード３枚 攻撃＋２１００
【ヴァリアブル・ウェポン】 強化効果２倍
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これがミッドガルドでの集大成。
攻撃ステータス１９４００という圧倒的な火力を誇りながらも、月の女神は動くことがない。
装備されている【ネレイス】を経由してスピノサウルスにパワーが送られ、水辺の王者がバトルを担当する。
「ふぅ～、ここまでかぁ……ミッドガルドには同じカードを持ち込めないからね。
【ヴァリアブル・ウェポン】がもう１枚あったら、親分は５００００くらいのダメージを出せたんだけど」
「お前、ほんとに何と戦うつもりなんだよ……」
「攻撃力２３４００って……この時点で★４モンスターでも一撃ですよね。
それじゃあ、リンの女神さまをお借りします。【ダークネス・ゲンガー】！」
続いて陣営を整えたのは魔女のステラ。
魔法陣の中から黒い煙のようなユニットが現れ、【アルテミス】の姿をコピーする。
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 ダークネス・ゲンガー 】
クラス：レア★★★ タイプ：Ｘ
攻撃Ｘ／防御Ｘ
効果：召喚するときに相手プレイヤーのフィールドにいるユニット１体を指定し、そのユニットと同じタイプ・基礎ステータス・効果を得る。
スタックバースト【バーストキャプチャー】：特殊：上記の効果の対象になったユニットと同じスタックバーストを発動する。
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一部の者しか所有していないはずの★４スーパーレアですら模写してしまう、究極の万能ユニット。
ただし、決闘のたびに戦略を練らなくてはいけないため、使う者にはセンスと熟練が要求される。
本来の【アルテミス】は銀髪で白い肌だが、こちらは薄い赤紫の髪に褐色の肌。
月の女神に対し、闇夜の女神というべき姿だ。
「普段なら【土星猫】を付けるところですけど、ネームドを相手に被ダメージ２倍はまずいですからね。
【魔導書『ネクロノミコン』】とリンクカードを９枚付けておきます」
■ ステラの陣営 ■―――――――――――
ユニット
【ダークネス・ゲンガー】（アルテミスをコピー） 攻撃１０４００／防御３８００
リンクカード
【魔導書『ネクロノミコン』】 攻撃＋２０００
その他リンクカード９枚 攻撃＋５８００ 防御＋１２００
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コピーした【アルテミス】の能力を活かし、デッキに詰め込んできた大量のリンクカードで武装させるステラ。
数値はリンの半分以下だが、彼女も火力担当として主力に加わる。
「タンクの準備もしておくわ。【ダイダロス】に続いて【ゴリアテ】を召喚！」
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 要塞巨兵ダイダロス 】
クラス：スーパーレア★★★★ タイプ：機械
攻撃８００／防御３４００
効果：ガードしたときのみ発動。このユニットの防御が相手ユニットの攻撃を上回っていた場合、差の数値をダメージに変換して相手プレイヤーに与える。
スタックバースト【惑星破壊砲】：瞬間：このユニットの攻撃に防御ステータスを加算する。
【 ゴリアテ ＭｋIII 】
クラス：レア★★★ タイプ：機械
攻撃１５００／防御２６００
効果：このユニットがガードしたとき、自プレイヤーへの貫通ダメージを無効化する。
スタックバースト【多重空間装甲】：永続：このユニットがガードしたとき、相手の攻撃力を半分にしてダメージ計算を行う。
――――――――――――――――――
防御を担当するクラウディアは、非常に硬い機械ユニットを２体用意した。
全高２０ｍの超巨大な機動要塞と、キャタピラで走行する戦車。
洞窟では狭すぎて召喚できず、このトンネルまで来てようやく出せる巨体である。
「プロジェクトカード、【ニューエイジ・マシン・フュージョン】！」
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 ニューエイジ・マシン・フュージョン 】
クラス：レア★★★ プロジェクトカード
効果：永続効果。【タイプ：機械】の自プレイヤー所有ユニット２体を合体させる。
合体後のユニットはリンクカードを装備できなくなるが、『基礎ステータス』は２体の合計となる。
カード名とクラスは任意で片側を引き継ぎ、効果は矛盾しない限り共有、スタックバーストも双方を発動可能。
――――――――――――――――――
これがクラウディアの真骨頂、機械ユニットの変形合体。
ガキィイイインと、ロボットアニメのような金属音を鳴らしながら形状を変え、トンネル内で２体のユニットがひとつになった。
砲撃形態に変形した【ダイダロス】は防御６０００を誇り、何者も通さない要塞戦車が完成する。
■ クラウディアの陣営 ■――――――――
ユニット
【ダイダロス】（ゴリアテと合体） 攻撃２３００／防御６０００
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これがギルドの中心メンバー。
リン、ステラ、クラウディア――【鉄血の翼】、始まりのＪＣ３人組。
それぞれが最強のユニットを並べている光景は圧巻そのもので、日本ワールドでも屈指の戦力を誇る。
「うはぁ～っ！ あまりにもお姉さまたちが輝きすぎていて、尊くて辛いのです！」
「つくづく思うねんけど、最近の中学生……やっぱおかしいわ」
「いや～、このギルドがおかしいだけだと思うぞ」
もはや苦笑するしかないユウたちだったが、彼らのユニットも相当なもの。
ここまで来るための護衛として活躍し、主力部隊を守り抜いてきた。
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 ナラシンハ 】
クラス：レア★★★ タイプ：神／動物／人間
攻撃２５００／防御２２００
効果：このユニットはリンクカードを装備している状態のとき、他のユニットカードの効果を受けない。
スタックバースト【神の豪腕】：永続：このユニットがバトルしたとき、相手のダメージ軽減や『ダメージを受けない』効果を無効化する。
【 バスタービートル 】
クラス：レア★★★ タイプ：昆虫
攻撃２２００／防御１８００
効果：バトルしたとき、【タイプ：植物】のユニットに対して攻撃力が２倍になる。
スタックバースト【グレートホーン】：瞬間：ターン終了まで、上記効果を全てのタイプに対して適用する。
【 オボロカヅチ 】
クラス：レア★★★ タイプ：飛行
攻撃１７００／防御２５００
効果：このユニットとバトルした瞬間、【タイプ：水棲】と【タイプ：飛行】のユニットは、ターン終了まで攻撃と防御が半分になる。
スタックバースト【朧雷鳴閃】：瞬間：このユニットは１回の攻撃宣言で、相手のユニット全てに攻撃できる。
――――――――――――――――――
ユウはカブトムシの【バスタービートル】、ソニアは雷の化身【オボロカヅチ】。
ここまでは普段の顔ぶれだったが、サクヤは半神半獣の【ナラシンハ】を連れていた。
以前、イベントの報酬としてもらった『★３確定ボックス』から引き当てたものだ。
「皆様、本当に錚々たる顔ぶれで萎縮してしまいますね。
足手まといにならないように、私も尽力いたします」
「まあ、そう固くならんでもええで」
「そうだな、セレスちゃんのユニットも立派なもんだ」
そう言われたセレスティナが連れているのは、リンに交換してもらった男性ユニット【ベオウルフ】。顔がいい。
鍛え抜かれた体の周囲を２枚の盾が浮遊しており、手にはドラゴン特効の大剣を握っている。
Ｃａｒｄｓ―――――――――――――
【 センチネル・シールド 】
クラス：レア★★★ リンクカード
効果：装備されているユニットに防御＋５００。
【タイプ：人間】が装備した場合は効果が２倍になり、もう１枚追加でリンクカードを装備できる。
【 ドラゴンスレイヤー 】
クラス：アンコモン★★ リンクカード
効果：装備されているユニットに攻撃＋６００。
【タイプ：竜】とバトルした場合、上記の効果が＋１５００に変更される。
――――――――――――――――――
英国最古のモンスターハンターと呼ばれる【ベオウルフ】を、余すところなく使うための構成。
今回は相手が竜だと分かっているので、特効に特効を重ねている。
リンやステラに比べたら控えめだが、竜と戦った場合は防御力がダメージに加算されるので、瞬間火力は６４００と馬鹿にならない。
■ セレスティナの陣営 ■――――――――
ユニット
【ベオウルフ】 攻撃２９００（３８００）／防御２６００
リンクカード
【センチネル・シールド】 防御＋１０００
【ドラゴンスレイヤー】 攻撃＋６００（竜特効時＋１５００）
―――――――――――――――――――――
以上が計７名、ユニット８体の大軍勢。
幸いにも今回戦う【ズユューナク】は敏捷が低いため、プレイヤー側が先手を取れる。
全員のユニットが整ったところでクラウディアはドローンを収納し、いつものように腕を組みながら不敵に笑った。
「このギルドも逞しくなったものね。
あとはもう、ターゲットが来るのを待つだけよ。
ここまでユニットを並べたことだし、どれだけやれるのか試してみましょう！」
「「「「「「おおーーーーっ！！」」」」」」
意気込んだ直後、メンバーたちを揺さぶる重い地響き。
それが何を意味するのか知っているが、今回は横穴に隠れたりしない。
やれる限り全力をぶつけてやるのだと、闘志に燃える７名の視線がトンネルの奥へと集中した。
2022/06/01 リンの陣営に計算ミスがあったので訂正
