第4話 ソロプレイ始めました その4
【 リン 】 ライフ:4000
アルルーナ
攻撃200(+1200)/防御400(+1200)
装備:エクシード・ユニオン(竜タイプ付与)
タイニーコボルド
攻撃400(+600)/防御200
装備:ミノタウロスの手斧(バトル相手の防御が200ずつ低下)
「キキィーーーーッ!」
鋭い角を振り上げ、森の中で魔獣が嘶く。
かつてリンがとてもお世話になった角ウサギ、【アルミラージ】が2体現れて立ちふさがった。
Enemy―――――――――――――
【 アルミラージ 】
クラス:アンコモン★★ タイプ:動物
攻撃3200/HP1800/敏捷70
効果:このモンスターは攻撃ステータスでガードすることができる。
スタックバースト【殺人兎】:永続:プレイヤーに貫通ダメージを与えるとき、攻撃ステータスの半分を加算する。
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森の入り口で待っていたNPCたちから課せられたミッションは、アイテムの採取。
そのへんの木の実を取るだけで終わったので、このぶんなら楽勝だと高をくくって、すぐさま次のクエストを受領した。
続く『はじめてのミッドガルド 4』の目標は単純明快、何でもいいから★2の野生モンスターを倒すこと。
簡単そうに思えるが、実はこれが意外と難しい。
ミッドガルドでの冒険に慣れ始めた初心者にとって、★2は危険な相手なのだ。
「あれ……? ウサちゃんって、こんなに強かったっけ?」
初めて出会ったときには、要塞化させた【アルテミス】で上から叩き潰した角ウサギだが、こうして★1コモンで編成を組んでみると強さが分かる。
レアリティ補正によりステータスは2倍。攻防一体型の効果が非常に厄介で、野生個体の場合は最大HPを上書きするという解釈で処理される。
さらにプレイヤー自身が攻撃を受けようものなら、スタックバーストが乗ってダメージ増加。
この森まで来た初心者は、数少ない★2ユニットや捕獲した★1でデッキを組んでいる場合がほとんどだ。
手持ちのカードを振り絞って、ようやく1体倒せる相手であり、戦力的にステップアップするための登竜門といえる。
「先手は取れてるけど、2体はまずいなぁ。
温存してる余裕はなさそうだし、まずは【アルルーナ】ちゃんをスタックバースト!」
「ぷぅうううい!」
【アルルーナ】から伸びたトゲだらけのツタが、片方のウサギに絡みついて拘束する。
自身の防御力に等しい弱体効果を与えるため、【アルミラージ】の攻撃ステータスは1600まで落ちた。こうなると攻撃力で受けても意味はない。
「プロジェクトカード、【タッグ・バトル】!
【アルルーナ】ちゃんで攻撃宣言!」
Cards―――――――――――――
【 タッグ・バトル 】
クラス:コモン★ プロジェクトカード
効果:自プレイヤーが所有する★1のユニットを2体選んで発動。
次に行う攻撃宣言のとき、2体の攻撃力が合計される。
実際にバトルを行った扱いになり、効果などを発動できるのは攻撃宣言したユニットのみ。
――――――――――――――――――
「ぷぃいいいっ!」
「わぉおおおおん!」
★1に限定されるが、連携攻撃を可能にするプロジェクト。
【アルルーナ】はツタで拘束したウサギを持ち上げて叩きつけ、さらに【タイニーコボルド】が斧を振り下ろす。
見事なツープラトンが決まり、モンスターは粒子化して消えていった。
「ナイス、ナイス! いいよ、2人とも!
このまま一気に押し切っちゃおう」
その後も何枚かの手札を使ったが、もはやウサギ1匹に苦戦することはない。
手堅く勝利を収めたリンは、NPCたちが待つ場所へと戻っていく。
「おお~、すごいな! ★2に勝てるようなら一人前だ!
……と言いたいところだが、こんなものは序の口さ」
「次のクエストでは、★2モンスターの捕獲に挑戦してもらうわよ」
「あ~……やっぱり、そうなるかぁ」
ブロックとミスティの言葉に、リンは納得しながらも少し困る。
倒せるようになったら、次は捕獲するのがセオリーだ。★2モンスターが仲間になれば、初心者にとっては頼もしい戦力になる。
別に捕まえること自体に問題はないのだが、先ほどの戦闘でかなりカードを消耗してしまった。
実際に初心者たちは何日もかけて挑み、ようやく手に入れた★2モンスターの強さと喜びを実感するのだが、もっと効率的な方法はないものかと模索する。
「とりあえず、今回のクエストはここまでだ。
ちょっと面白いアイテムを渡しておくぜ」
「使うときには周りに人がいないか注意してね」
Notice――――――――――――
【 報酬が配布されました! 】
・カード5枚入りパック 2袋
・クエストポイント 200pt
・脱兎のポーション 3個
・ゲキリン軟膏 3個
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そうしてリンに与えられたのは、またしても見たことがないアイテム。
Tipsで確認してみると、たしかに面白い効果を有している。
Tips――――――――――――――
【 脱兎のポーション 】
プレイヤーのみ使用可能。使用すると3分間、移動速度が1.25倍になる。
ユニットに騎乗している場合は使用不可。
【 ゲキリン軟膏 】
ゲキリン草から作られた軟膏。独特な香りでモンスターたちを刺激する。
使用すると10分間、温厚なモンスターだろうと怒り狂ってプレイヤーに襲いかかる。
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「えっ……何これ?
ポーションは逃げるときに使うんだろうけど、軟膏のほうは危ないだけだよね?」
リンはすぐに理解できなかったが、MMORPGでは課金してでも手に入れたい有用なアイテム。
上級者になるほど狩りには御用達。いわゆるエンカウント率を上げるための手段であり、効率的にモンスターと出会ってバトルで稼ぐときに使う。
近くに人がいる場合は迷惑になるので使わないが、ギルドの面々もソロ探索のときに愛用している。
「モンスターが襲ってくるアイテム……か。
強いユニットを連れてるときには良さそうだけど、この子たちだとキツイかな~」
「わ~う?」
この森に棲む★2の群れに囲まれたら、さすがに勝ち目はないだろう。
愛くるしい顔で見上げてくるコボルドの頭を撫でながら、どうしたものかと考えること数分。
未使用の手札をチェックしたリンは、ふと大胆な作戦を思いついた。
「そっか、これを使えばいいんだ!」




