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第22話 一番すごいリンクカードって何ですか?

 結果的に、今回のイベントでリンが稼いだポイントは撃破報酬47万2100と、さらに追加で30万。

 合計で約77万ポイントにも達し、中学生とは思えない額の収入を得ていた。


 ルームの工事や新しいコスチューム、あるいはボックスを買いまくって手持ちのカードを増やすも良し。

 まさしく何でも買えてしまう大金なのだが、それ以上に悩ましい問題が目の前にある。


「やっぱり、2枚目の【エクシード・ユニオン】……いや、でもなぁ……」


 コテージの中にひとりだけ残り、いくつものウィンドウを開きながらリンクカードについて調べるリン。

 装備品であれば何でも交換できる夢のチケットだが、やはり【エクシード・ユニオン】という選択肢は捨てきれない。

 1枚しかなかったカードが2枚になることで起用が安定する上に、【アルテミス】に2種類の★1ユニットを装備することも可能だ。


 他の候補も考えてみたが、まず思い浮かんだのはステラが愛用している【魔導書『ネクロノミコン』】。

 プレイヤーのライフポイントを犠牲にして、最大2000も攻撃力を伸ばせる諸刃の剣。

 それ以外にもアリサが使う【黒炎の呪縛(ダークネス・グラッジ)】も考えてみたが、悪魔タイプ限定の装備なので、今のリンには扱いが難しい。


 さらに前の大会で貴公子カインが使っていた槍。


Cards―――――――――――――

【 聖槍『ロンゴミニアド』 】

 クラス:レア★★★ リンクカード

 効果:このカードを装備したユニットとバトルした相手は、対戦終了まで全てのステータス強化効果を失う。

――――――――――――――――――


 アーサー王が自身の息子を貫いたとされる聖槍で、これを付けておくだけでも非常に厄介なユニットになる。

 せっかく高めたステータス強化を()がされ、ガードしても発動するという凶悪な効果。対戦終了まで持続する点も強い。


 そして、槍といえばもう1本。


Cards―――――――――――――

【 一騎当千の槍 】

 クラス:レア★★★ リンクカード

 効果:使用者のフィールドに他のユニットがいないとき、このカードを装備したユニットのステータスは2倍になる。

 他のユニットがいるとき、このカードの効果はステータス半減に変更される。

――――――――――――――――――


 オルブライトが使用していた、まさに一騎当千の槍。

 1体しかユニットを出せないが、今回のイベントのように単騎で戦う場合はもってこい。

 これを付けた状態で放つ【アルテミス】の【全世界終末戦争エンド・オブ・ザ・ワールド】は2万ダメージに達し、★4野生モンスターですら一方的に焼き滅ぼす。


 ――が、そんな火力で誰と戦うんだとツッコミを入れたくなるほど過剰な数値。

 つまりは”やりすぎ”であり、砲台としてステータスを増強したいなら【ヴァリアブル・ウェポン】を重ねるだけも良い。


「はぁ~……ほんとに迷うなぁ。★3のリンクカードなんて、どれも凶悪だし。

 これとか、完全に世界を滅ぼすヤツだよ」


 そう言いながらウィンドウに映したのは、交換可能なカードの1枚。

 北欧神話において特に有名で、ラグナロクという最終戦争で猛威をふるった伝説の武器。


Cards―――――――――――――

【 破滅の炎『レーヴァテイン』 】

 クラス:レア★★★ リンクカード

 効果:このカードを装備したユニットが、相手プレイヤーのユニットをバトルで破棄したときに効果発動。

 破棄されたユニットと同じ【タイプ】のユニットカードを、対戦終了まで全ての手札とデッキから除外する。

――――――――――――――――――


 書いてある文章(テキスト)を疑いたくなるほど凶悪。

 効果が発動してしまうと、お互いのデッキから特定のタイプに属するユニットカードが除外される。

 つまりは、ひとつの種族が滅ぶのだ。


 これを機械ユニットばかりでデッキを組んでいるクラウディアに対して使用すれば、どれほどの被害になるのかは明白。

 同じタイプのユニットで固めた、いわゆる『染め』のデッキを滅ぼすカードなので、決まってしまえば勝ったも同然といえる。

 逆に様々なタイプを扱うサクヤが相手だと、自分のデッキが壊滅しかねない。


 ちなみに『相手プレイヤーのユニットをバトルで破棄したとき』しか効果を発揮しないため、このカードでミッドガルドの野生モンスターを絶滅させることはできないようだ。


「なんだか、神話とかに出てくるものが多いけど……これはよく知ってる!」


 次にリンが見たのは、東洋でも特に有名な武器。

 西遊記で孫悟空が持っている赤い棒といえば、これだ。


Cards―――――――――――――

【 如意金箍棒(にょいきんこぼう) 】

 クラス:レア★★★ リンクカード

 効果:このカードを装備したユニットがバトルしたとき、あらゆる効果やカードの発動よりも先にダメージ判定を行う。

――――――――――――――――――


 有無を言わさず、とにかく先手必勝で殴りかかる悟空を再現した1枚。

 十分な攻撃力で上から殴れば、相手に何もさせないまま倒すことができる。

 バトルしたときに発動する効果よりも、先にダメージが発生して相手を破棄してしまうため、【ポイズンヒドロ】などに刺さるカードだ。


 と、そこまで見たところで、カランコロンと鐘のような音が鳴り響く。

 それはコテージに来訪したギルド外の者が鳴らす、入室申請のチャイムであった。


「あれ? 誰か来たのかな……『フレアが入室を求めています』って。

 わああっ、フレアさん!?」


 リンは慌てて玄関に駆け寄り、入り口のドアを開く。

 そこにいたのは燃えるような赤い髪の女性と、彼女が率いるギルド【ロック・ザ・バーガンディー】のメンバーたち。


「やあ、リン。優勝おめでとう」


「「「「「おめでとう~~~~~!!」」」」」


 リンが外に出てくるなり、いかつい男だらけのメンバーから割れんばかりの拍手が送られる。

 通りがかった他のプレイヤーたちは何事かと驚いたが、その拍手が優勝者に向けられたものだと知ると、後に続いて祝福した。

 結果としてコテージの外に出た途端、リンは居合わせた者たちから拍手喝采を浴びることになる。


「わっ、わっ、どうも! ありがとうございます!

 フレアさんたち……わざわざ、お祝いに来てくれたんですか?」


「まあね、ほんの1試合とはいえ共闘したわけだし。

 あたしにとっても、あのときが一番楽しかったからさ」


「ウチの(あね)さんがお世話になったそうなので、つまらないモンですがお礼です」


 言いながら、ずらりと並んだ男たちがハムや果物などの食料アイテムを差し出す。

 絵面は暑苦しいが、それは紛れもなく【ロック・ザ・バーガンディー】からの友好を示すものだった。


「えええ~~っ!? そんな……いいんですかぁ?

 クラウディアとかいてくれたら良かったのに、今はみんな出払ってて……」


「そっか、そりゃ間が悪かったな。ソニ坊にも会えないのは残念だ。

 ところで、例の交換カードは何にするんだい?」


「いや~、それがめちゃくちゃ悩んでまして……

 真面目に選んでるのを邪魔しちゃ悪いってことで、みんな気を利かせて出かけたんです」


「ははははっ、そうかそうか。そりゃ悩むよなぁ、あんなもん渡されたら。

 アタシらも長居して邪魔しちゃ悪い。とにかく優勝おめでとうって言いたかったのさ」


「いえ、そんな……すごくうれしいですよ!

 砂漠で一緒に戦った2日目は、他の日の倍くらい稼げましたし。

 優勝できたのも、フレアさんが仲間になってくれたおかげです」


「ま、アタシも稼がせてもらったからね。

 今後も何かあったら、よろしくってことで」


 そんな感じで少し談笑した後、フレアは男たちを引き連れて去っていった。

 贈り物を受け取ったリンは、それをギルドの冷蔵庫にしまい込むと、上機嫌でテーブルに戻っていく。


「わはぁ~! いいなあ、こういうつながり!

 みんなが戻ってきたら、フレアさんのこと言っておかなきゃ」


 ギルド間の親しげな交流というのは、ネットゲームに(うと)いリンにとって初めての感覚。

 特に【エルダーズ】を取り巻く事件は、あまり良い印象ではなかったため、気さくに友好を結んでくれたフレアたちが輝いて見える。

 山でお世話になったソニアの件も含めて、彼女たちには何らかの形でお礼を返したいところだ。


 ――と、再びカランコロンと鳴る鐘の音。

 フレアたちが去ってから、まだ10分も経っていない。


「あれ、またお客さん? 『セレスティナが入室を求めています』?

 知らない人だけど、なんだか知ってるような……」


 首をかしげながらリンが玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは1人のメイド。

 腰まである美しいロングヘアに165cmほどの身長、清楚なエプロンドレス。

 見た目の年齢はリンたちとあまり変わらず、高校生くらいに見える。


「(わぁ~、なんかきれいなメイドさんが来たんですけど!)」


「初めまして、セレスティナと申します。【鉄血の翼】のリンさまですね」


「あ、はい……どうも……」


「このたびは優勝おめでとうございます。

 さすがにあれだけ差をつけられると、もはや納得の1位です」


「差をつけるって……あああ~~っ、分かった!

 もしかして、2位のセレスティナさん?」


「はい、2位のセレスティナです」


 ニコリと微笑む可憐なメイド。

 彼女こそが夜の森でクラウディアと相まみえた強敵、ヴァンパイアのカードを持つ『マスター』であった。

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