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第21話 最終結果発表 その2

「えっと……二つ名とか称号がいくつもある場合って、どうなるの?」


「勲章をたくさん付けてる軍人みたいなものよ。気に入ったものを選ぶといいわ。

 これまで二つ名で呼ばれてきた『大物殺し(ジャイアント・キラー)』を返上したいなら、自分から『終末剣(エンド・ブリンガー)』を名乗って上書きすることも可能よ」


「いや……あの……どっちも同じくらい物騒じゃない?」


 字面だけを見れば『大物を殺す人』から『たくさん殺す人』に変わっただけである。

 KILLとEND、どっちのほうがマシかという問題でしかない。


 しかし、やや興奮気味のメンバーたちは、リンとは違った見解のようだ。


「運営が特別に称号を作ってくれることなんて滅多にないんですよ。

 普通はすでに設定されている称号を、そのまま受け取るだけですから」


「唯一無二のオリジナル称号なんて、うちでももろうてへんよ。下手したら一生もんの価値やで」


「『終末剣(エンド・ブリンガー)のリン』! なんとも素晴らしい響きであります!

 まるでお姉さまのお顔のように、この上なく完成された黄金比!」


 今回の称号は魔剣を巧みに扱い、可能な限り効率的にプロジェクトカードを乱射――もとい、発動させ続けたリンに贈られたもの。

 後にも先にも同じ称号を冠するプレイヤーは彼女のみ。『終末剣(イコール)リン』として明確に個人を指す言葉になる。


「まだ自分が半人前だと思うなら、『大物殺し(ジャイアント・キラー)』でもいいんだぞ。

 いつか大物になって返上するっていうのも、それはそれで王道だしな」


「う~ん……そう言われると迷うなぁ。

 まだチュートリアルもやってない初心者だし、立派な称号をもらっても浮いちゃう気がして……」


「お前のような初心者がいてたまるか!」


「とりあえず、流れに任せるというのも手ですよ。

 結局、リンに対してその言葉を使うのは周りの人ですから」


「なるほど~。たしかに、それもそうだね」


 ステラの言葉にうなずき、リンはこの件を保留にした。

 『大物殺し(ジャイアント・キラー)』という二つ名は、リンが相手よりも格下だから成立している。

 このまま戦績を残し続けて自分自身が大物になれば、二つ名のほうは自然と消えて、代わりに称号が定着するだろう。


「あたし、これからも頑張るよ。

 称号に名前負けしない、立派な『終末剣(エンド・ブリンガー)』になるために!」


 と、リンが物騒な決意を固めている間にも、モニターの中では結果発表の放送が続いている。

 一同の視線は、再び画面へと戻っていった。


「新しい称号をもらったことで、リン選手もさぞかしビックリしてると思うけど、報酬はまだ残っているのだ。

 これについては開催前から決まっていたので、予定どおりのモノを渡すのだ~」


「みなさん、新しいブランクカードについてはご存知でしょうか?

 先月の5周年アップデート以降、こっそりとミッドガルドに追加されたもので、狙ったモンスターを必ず捕まえられる貴重品です」


「カードやモンスターの種類が増えてきて、特定のカードを入手するのが難しくなってきているのだ。

 新型のブランクカードも、それを緩和するための措置なんだけど……

 今回の報酬は日本ワールドでは初めてになるアイテム! 好きなリンクカード1枚と交換できる引換チケットをプレゼントしちゃうのだ~!」


 その瞬間、ワールド全域に衝撃が走った。

 コンタローが言うように、カードの種類が増えたことで1枚あたりの入手率は低くなってきている。

 これまで実装されたカードが全て入っている『統合(インテグレイト)パック』は、便利な代わりに特定のカードを当てにくい。


 そういった問題を緩和し、プレイヤー同士のつながりを活性化させるために、月に一度の交換交流会があるのだが――

 優勝者のリンに与えられるのは、多くの者が待ち望んでいたアイテム。

 欲しい1枚を直接手に入れてしまう、夢のような引き換えチケットが実装されたのだ。


「うおおおおお~~~、マジかよ!?」


「運営がそういった措置を計画していることは、まことしやかに語られていたけれど……

 なるほど、イベントの上位報酬として解禁したのね」


「えっと……何でも交換できるチケットってことは、★3でもいいんだよね?」


「リンクカードに★4はないから、実質★3を選ぶことになるな~。よりどりみどりや」


「じゃあ、2枚目の【エクシード・ユニオン】と交換してもいいの!?

 それができるなら、もう迷わずに選ぶんだけど――」


「ちょ、ちょっと、待ってください! 『何でも』ですよ、よく考えましょう!」


「私も同感よ。【エクシード・ユニオン】は今後トレードなどで手に入るかもしれないけれど、絶対お目にかかれないようなカード……

 それこそ、【全世界終末戦争エンド・オブ・ザ・ワールド】に匹敵するくらい希少なカードを、チケットで交換できるかもしれないわ」


「え? なにそれ……ヤバくない?」


「くそヤバいのです」


「くそはダメよ、ソニア」


「はっ、お姉さま!」


 事の重大さを理解し始めたリンは、徐々に鼓動が高まっていくのを感じた。

 リンクカード限定とはいえ、実装されている全てのカードが対象なら、入手手段などないに等しい幻の1枚すら思いのまま。

 まさしく、夢のチケットが与えられたのである。


「『デュエル・ウォーズ』の報酬について運営側で検討したとき、やはり武器を授与するのが、それっぽくて良いだろうという結論になったのだ。

 もちろん、今後のイベントでも交換チケットを上位報酬にしていく予定だから、みんな頑張って参加してほしいのだ」


「ちなみに、イベントやクエスト報酬のカードは交換できません。

 パックから出てくるカードのみ対象になりますので、よく考えて交換してくださいね~!」


「いや~、上位3名の受賞者全員が10代の女の子になったのは、ほんとに意外だったけど……」


「先月に引き続いて、若いプレイヤーのみなさんが駆け上がってきてますよね。

 3日間という限られた期間でしたが、改めてお疲れさまでした。

 それでは、以上で結果発表とイベントの閉会式を終わりにさせていただきます」


「みんな、お疲れさま! 受賞した人たちも、本当におめでとう!

 今後もラヴィアンローズをよろしくなのだ~!」


 かくして放送は終了し、リンのコンソールには通知と共に30万ポイントと金の優勝トロフィー。

 そして、非常に貴重な交換チケットが運営から送られる。


 パックから出る全てのリンクカードが対象なため、交換候補は膨大。

 イベントが終わってもなお、リンは頭を考えながら運命の決断をすることになった。

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