表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/297

第8話 待ちに待った5周年 その4

「へぇ~、このカードは……ふむ……」


「ソニアちゃん、★2の飛行ユニット引いたんだけど、いる?」


「当然至極! 見せてほしいであります!」


 仲間たちと一緒に、にぎやかなパック開封。決闘(デュエル)とは違ったカードゲームの楽しさを満喫しながら、リンは1箱目を開けきった。

 良さげなカードは何枚か入手できたし、そもそも持っているカードが少ないリンには十分な戦力強化だ。


 しかし、やはり欲しいのはデッキの(かなめ)となるレア。

 ユウは運良く1ボックスで引いたが、★3など滅多に出るものではない。


「よ~し、この箱に期待だね!」


 これから開ける箱は、イベントの上位報酬としてもらった★3以上確定ボックス。

 ★4など狙って出るものではないので、実質、レアが必ず1枚手に入ると考えればよいだろう。

 先ほどサクヤが賞品の箱を開け、実際に強力なユニット【ナラシンハ】を引き当てている。


 当のサクヤは、すでに2箱目の開封に着手していた。

 彼女はレア確定ボックスを2つ持っていたため、当然――


「よっしゃ、★3来たでー! せやけど、ほほう……これはなんとも」


 再び引いたカードを見せてくれたサクヤだが、その効果を見た一同は息をのむ。

 明らかに強さが分かる★3リンクカード。

 新シリーズ『リミテッド・ユニオン』の特徴である【タイプ】の操作を取り入れつつ、目に見える形で強化する1枚。


Cards―――――――――――――

【 航宙型新式機関(ネオ・ギャラクシアン)バーニア 】

 クラス:レア★★★ リンクカード

 効果:【タイプ:機械】のみ装備可能。このカードを装備したユニットに【タイプ:飛行】を追加する。

 該当のユニットはバトル以外のダメージを受けなくなり、さらに他のリンクカードを1枚追加で装備できる。

――――――――――――――――――


 なんと、宇宙船の動力エンジンと噴射口である。

 宇宙航行すら可能になる装備品であり、当然ながら機械タイプにしか扱えない。


 そして、カードを目にした全員の視線が一点に集中した。

 機械ユニットを扱う者といえば、やはり彼女を置いて他にはいないだろう。


「なるほどね……サクヤ、後であなたにトレードを申し込みたいんだけど、いいかしら?」


「ん~、コイツはけっこうお高いで? 最終兵器をブッぱなすような、やんちゃな子もおるしなぁ」


「私もそれなりにカードを持っているから、ご希望に添えるとは思うわ」


「ほほ~! ほんなら、後で相談っちゅうことで」


 やっぱり、そうなるかと。居合わせた全員が納得してうなずく。

 クラウディアのことだ、このカードを誰よりも上手に使うに違いない。

 サクヤとしても、より自分向けのカードと交換できるならプラスになるはずだ。


「(ああ~……きっついなぁ)」


 当然ながら、頭を抱えたのはリンである。

 先の『ファイターズ・サバイバル』では実現しなかったとはいえ、正面からぶつかりあったら苦しいクラウディア。

 そもそも彼女のデッキは防御力が高くて【全世界終末戦争エンド・オブ・ザ・ワールド】が効きにくいのに、これで完全に防がれてしまう。


「さすが世界の冠たるお姉さま!

 わたしが空軍を目指している間に、大気圏を越えて宇宙へ行こうとしているであります!

 1歩先どころか、これでは1万光年も先! 火星に行くなら、じゃがいもを持っていくのです!」


 なぜ火星にじゃがいもなのかは不明だが、姉を敬愛するソニアは大はしゃぎ。

 あの巨大ロボット【ダイダロス】が宇宙船になって飛ぶ姿は、ちょっと気になる。

 しかし、さすがにリンは手放しで笑っていられなかった。


「(これでサクヤ先輩、クラウディア、兄貴まで一気に強くなっちゃうのか~。

 ほんと、3位になったくらいじゃ、うかうかしてられないね。

 あたしにも、いいカード来ないかな……)」


 必ずレアが引けるボックスとはいえ、こうも周りが成果を上げていくと焦ってしまう。

 次々とパックを開封していくが、出てくるのはコモンやアンコモンばかり。2箱も開けているため、だんだん同じカードが被るようになる。


 ――が、通常なら何も引けずに終わってしまうボックスも、今回ばかりは特別仕様。


「ん…………んん~~~~???」


「お、どうした?」


「いや……★3を引いたんだけど」


「確定枠が来たんですね。おめでとうございます!」


「ああ……うん、たしかにレア……レアだけど、ちょっと待ってね」


 リンが手に入れたのは、★3のリンクカード。

 レアリティ相応に、他にはない非常にユニークな効果が書かれている。


Cards―――――――――――――

【 エクシード・ユニオン 】

 クラス:レア★★★ リンクカード

 効果:このカードを装備させるとき、使用者のデッキの中から★1ユニット1枚を選択して媒体にする。

 媒体となるユニットの【基礎ステータス】を強化効果として付与。これには【敏捷】も含める。

 さらにタイプとユニット効果を矛盾しない限り付与し、可能であればスタックバーストも発動できる。

――――――――――――――――――


 かなり珍しく、★1のユニットを装備してしまうという不思議な1枚。

 装備品としての強化効果は、★1のステータスを上乗せする程度なので高くはない。

 注目するべき点は【タイプ】とユニット効果を、他のユニットに移すことができるという点だ。


「お、おお~……これは……」


「テクニカルですけど、ものすごく可能性を秘めたカードですね」


「いや、めちゃくちゃ強いで?」


「そうね、たしかに強いわ。使いこなせたらだけど」


 【全世界終末戦争エンド・オブ・ザ・ワールド】を引いたときの大騒ぎに比べたら、メンバーたちの反応は静かなもの。このカードは万人が強さを実感できるものではない。

 通常のリンクカードと違い、これ1枚では何の役にも立たないからだ。


 しかし、使いこなすことができれば可能性は無限大。

 プレイヤーがどれだけ★1ユニットを熟知し、その力を引き出せるのかに()かっている。


「んんんん~~~~~~……」


 リンは自分が所有する★1ユニットが装備品になった場合、どんな利点があるのかを考えてみた。

 たしかに、しっかりとカードを選んでデッキを組めば強い。

 しかし、弱点もある。

 効果を得るためにリンクカードの枠を使用してしまうので、それ以上は装備品を持たせて強化することができないのだ。


「(あれ? 待てよ……これを使った上で他のリンクカードも装備できるユニット、うちにいたよね!?)」


 そのとき、リンはひとつの答えにたどり着く。

 大会ではあまり活躍させてあげられず、悔しい思いをすることになった1枚のカード。

 リンクカードを無限に装備できる彼女なら、何も問題なく使いこなしてくれるはずだ。


「きた……きたきたきたああああああああああああっ!!」


 そして、天啓が舞い降りた。

 リンを戦いへと導いてくれた女神と、これまで可愛がってきた★1ユニットの共存。

 それを可能にする魔法のような1枚が今、手の中に来てくれたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こいつはやべえ一枚ですよ…。 ワイバーンで超成長もだけど他のカードでも星1の低ステータスだからこそ許されてる効果あるからなぁ。タイニーコボルトと合体でバトルを完成するのとかも面白そう。 …
[良い点] タイプ:竜の合体カードが来たらワイバーンちゃんは強くなるだろうなぁと思ってたけど、アルテミスと合体するのかw 最終能力値4万超えとか強い。 [一言] リンクカードを回収する効果を使用した場…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ